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先日、「投資が身近に感じられるような記事を考えてくれ」と言われてブレスト会議に出席しました。しかし会議が終わった今でも、投資が何なのかよくわかっていません。
辞書で調べてみると
【投資】
利益を得る目的で、事業・不動産・証券などに資金を投下すること。転じて、その将来を見込んで金銭や力をつぎ込むこと。
「利益を得る目的」でお金を使うこと=「投資」といえそうです。
でも、いきなり不動産や株に大金使うのは怖い……ということで今回は
友達2人を呼んで「おたがいに投資をしあう会」を開催してみることにしました。
(左:山宮さん、右:郡司さん)
ルールは簡単で
- 1万円を友達にあげる
- もらった1万円で何か習ってくる
- 相手の利益になるような「いい土産話(リターントーク)」を持ち帰ってくる
これだけです。「投資をする側」と「投資される側」両方の気持ちを体験してみます。 株などに役立つかはさっぱりわかりません。
さっそくやりたいことを決める
友達に投資してもらうべく、まずはお互いのやりたいことを発表することになりました。
私「どうしても一回でいいからドラム習ってみたい」
山宮「大丈夫?めっちゃ難しいんじゃないの。1日で大丈夫なの」
私「謎にできる自信がある」
郡司「僕じつは演技というか、お芝居やってみたかったんですよ」
山宮「えっ、いいじゃん」
私「1週間で友達が『演技できるようになって帰ってくる』と思うとやばい」
山宮「あのーーー僕はあの、実はですね……女装してみたくて」
郡司「え! そうなの!? まつ毛あげたり!?」
山宮「そう、いやなんか本当に女性の気持ちわからなすぎて、体験してみたらわかるのではないかと」
私「まじかよむちゃくちゃいいやつじゃん」
というわけで我々はお互いに1万円を渡し合い
ドラム・演技・女装をヒトの金で習うことになりました。
2週間後にもう一度集まり、成果を報告しあいます。
実際は3万円がただ回転しただけなのですが、自分の財布から出したので「投資した」という気持ちになれています。大丈夫です。
ヒトの金でやりたいことをする①:ドラム編
ここからは習い事の様子をダイジェストでご紹介していきます。まずは私のドラム編です。
1万円もらってすぐ、マンツーマンのドラム教室に申し込みました。
待ち合わせは街の練習スタジオ。重いドアを開けると……
ど…ドラムだ……!(バクバクバクバク)
「自分はいまからドラムを叩くんだ」という気持ちをみなさんは味わったことがありますか。すごい高揚感です。
すぐドラムを叩けるかと思いきや…まずはメトロノームに合わせてリズムをキープする練習からスタートします。優しい先生がゼロからでも教えてくれるそう。神……。
一定のリズムに合わせて、正しいフォームでタカタカタカタカしていきます。私は自分の左手がこんなにゴミだとは思いませんでした。
練習が終わったらいよいよ座ります。「ワァ……スゴイ…」という声が出ます。
「アジカンの『君という花』という曲のイントロを叩きたいです」と言ったらすぐ教えてくれることになりました。特徴的なのでいけると思ったんです。
開始すぐにそれは間違いだったことに気がつきました。手と足(足もある!!!)に全神経を集中させるので、自ずと顔が無になります。顔に信号がいかないと、人はこんなからっぽになる。
手ができても足ができない。足ができても手がついてこない。右手ができても左手が…と「これ一生抜けない負のループなんじゃないか」というショートタイム挫折と戦うことになりました。
そうして一定のリズムをひたすら練習すること30分……。
イントロだけできるようになって死ぬほど湧きました。
自撮りしていた動画をあとで見たら想像の倍喜んでいました。最高。ドラムって最高。
ヒトの金でやりたいことをする②:演技編
次は郡司さんの演技編です。中野のレッスンスタジオにきました。
「映像演技レッスン」は、8名のグループで行います。「いまはADですが、女優になりたくて……」「関西で演劇をやってて今月東京に」という自己紹介が続き
「あっれガチじゃん…?」と固まってしまいました。もうめちゃくちゃ緊張しているようです。
まずは緊張をほぐすべく、手を叩きながら受講者の名前をランダムで呼ぶアイスブレイクです。右が講師の高山直美先生。
初対面だらけで張り詰めていた空気が一気に和み、全員が名前を覚えられました。プロすごい!
打ち解けたところで台本を覚え、実際にカメラの前で演技をする練習をします。
シチュエーションは「両思いだけど、思いを伝えられないもどかしい男女」でした。撮影同行をしているこっちが緊張してしまいます。できるの!?!?
発言するタイミング、仕草などを事前に打ち合わせながら決めていき
なんと全員が見てる中、カメラの前で初披露することになりました。
しかも先生が真剣に見て指導してくれるやつです。もうすごい空気。
友の顔を見たら緊張で意識が飛んでいました。うぅ頑張れ…そしてやってきた順番。
「あの人の事、好きなんですか…?」
こんな友人の顔はじめてみました。おい。上手に恋をした顔をするな。
最後は撮った映像を見て、感想を言い合います。
横で見ているだけで「演技する人って本当にすごいんだな」と実感しましたが、本人はどうだったのでしょうか。
ヒトの金でやりたいことをする③:女装編
最後は山宮さんの女装編。秋葉原の女装、コスプレ変身サロン「Milky」さんにきました。
さっそく無数のかわいい服を前に「好きなものを選んでください」と言われます。
「うわぁ……もう謎の罪悪感がある」と言いながら選ぶ山宮さん。服を選んだら
店員さんがブラもセットで着替えるように言います。「胸のボリュームは大事なので」とのこと。
「なんかすいません……」を繰り返していました。ブラをつけるのは初めてだそうです。着替え室に入ってからしばらくすると……
「悪くはない人」が出てきました。なんだろう、変ではない。
次はヘアメイクです。目を二重にするべくテープを貼られ
あらゆるところに影を、光を、線を足されていきます。「これ、女性は毎日やってるんですか?」「嘘でしょ?」と衝撃が続きパニックになっている。
カツラをつけ、ヘアアレンジを済まして
背景板の前で撮影会をすることに。
「スカートってやばい」と言いながら座り、できた写真が……
これです。いろんなアラが消えて女性になりました。「めちゃくちゃ嬉しい……」と喜ぶ山宮さん。足がきれいです。
街を一緒に歩いて見ました。
山宮「女性として歩く街は違って見える」
彼に何が起こっているんでしょうか。
自然に階段を登るときはこんな仕草まで。1日での成長がすさまじい。「これは学びしかなかった。いい話できる」とリターントークに自信があるようです。
はい! これで全員の「やりたいこと」が完了しました。
みやげ話でお礼をしよう「リターントーク」会
全員あらたな領域を体験し終え、また集まりました。
ここからはリターントークです。1万円をもらったお礼に、自分が習った知識や「すごい」と思ったことを共有していきます。
私「まずはドラムですごかったのは」
私「最初はドラムセットを叩かずに、メトロノームのテンポに合わせて、リズムキープの練習からするんですよ。タカタカタカタカって」
山宮「吹奏楽部とかがやってるの見たことあるけど、あれなんで?って思ってたやつだ」
郡司「はよ叩けばいいのに」
私「バンドで演奏するときにメトロノームって使えないじゃん。なので、ドラムの人ががっちりテンポをキープしなきゃいけないんですよ。だから、ドラムの人がテンポを体に染み込ませることはめちゃくちゃ必須の能力なんだって」
山宮「あーーーーーーーーなるほど! うわ、確かに全然テンポ守って叩けないな」
郡司「え? バンドのドラム全員、リズムを一定にキープできるってこと?ドラマーってやばくない?」
私「そうなの!!!ドラマーやばいって本当に思った!!」
私「さらにそのテンポをキープしつつ、左足でハイハットを開閉しながら、右足はバスドラムドンドンして、あらゆる場所をかっこよく縦横無尽にいい音で叩かねばならない」
郡司「むっず!!ドラマーやば!!!!」
山宮「俺もアジカンのあの曲ぐらいできるだろってちょっと思っちゃってた自分殴りたい」
私「でもこの知識ですら、ドラムやってる人に聞いたら『鬼基礎』らしいんだよ。本当に知らなかった……」
「ドラムのイメージが変わった。すごすぎる。天才しかできない」「めっちゃ自分もやってみたくなった」と感動しっぱなしの二人。友達が体験してきたことにより、自分ごととして聞けるようです。この調子で次にいってみましょう。
郡司「僕は演技ならってきた。動画があります」
画面から「好きな人いるんですか?」と真剣に話す友達の様子が流れてくる。
山宮「これはすごい。しかもうまくて面白い」
私「なんかできてるんだよなこれな」
郡司「演技してみて思ったんですけど、まず手の位置とか、頭の位置とか『普通』がわからなくなるんですよ、意識すると。あとセリフを読もうとしたり、言うタイミングを頭で考えるとすぐバレるので、本当に自分が言ってる、と思わせるのめっちゃむずかしい」
山宮「確かに! セリフ読むだけだと思ってたけど、実際は読むだけじゃないんだもんな」
郡司「そう。しかも自分じゃない、架空の人として喋らなきゃいけない」
山宮「もうわけがわからなくなってきた」
郡司「この翌日スパイダーマン見たら、役者がセリフどころかパンチとかアクションしながら体全体でその人になりきってて……。これは本当に訓練がいるし、役者って改めてめっちゃくちゃすごいということがわかった」
私「え? 舞台とかだとそれをリアルタイムでやるんでしょ? おばけじゃない?」
山宮「役者っておばけだったんだ。っていうかすごい努力と慣れがいるんだろうね」
ドラマを見て「演技うまいな」と思うことはあれど「普通にたたずむことすら難しい」まで考えることはなかった。「映画やドラマを見るのが余計楽しくなった」という。さて、ラストは山宮さんです。
山宮「最後に僕は…女装をしてきました」
郡司「きた。これを聞くためにきたぞ今日は」
山宮「これです」
郡司「ええええええめっちゃ女性じゃん!!!!すごい!!」
郡司「え?自撮りもうすごいクオリティしてるじゃん」
山宮「初めて盛る楽しさ覚えたよね。盛れた〜と思った」
山宮「まずかわいい目を作るのが大変なんですよ。テープ貼って、影いれて、え? そんなところに線引くの? ってところに線いれて。めんどいなって思ったけど、難しいぶん、うまくいったときはめちゃくちゃ嬉しいことがわかった」
山宮「これが女性の言う『今日盛れてる!』と思う状態かーって」
山宮「あと服もコスメもいっぱい種類があって、自分にあう化粧品とか、似合うリップの色とか探すのは楽しいので羨ましかった。今日ツメを青にしよーとか。あれはテンションあがる」
郡司「あ! 自分に合う色とか化粧品を探す必要があるのか。だからあんなに売ってるのね」
私「たしかに私にとっては日常だけど、やらないとわからないもんなのか……」
山宮「あと街歩いたときに『かわいさ』の基準で人に見られるのが初めてで、周りと比べたらまじでかわいくないから、自信がなくなっていくのを感じた」
郡司「女性が大事な日だからバッチリ化粧する、みたいなのはそういう内面の話もあるのか」
山宮「そう!しっくりこなかった日は歩くのもつらい、という気持ちがまじでわかった。褒められるとうれしいこともよくわかった」
私「そこまで知らないことを知らなかった。確かにヒゲ剃る気持ちとかわかんないもんねー」
1万円投資して人の話を聞いて
これで全員のリターントークが終わりました。1万円を投資され、やりたいことをやり、他人にも1万円を払って話を聞く。どうだったでしょうか。
山宮「これめっちゃよくないですか。友達が体験してきただけで、いきなり自分のことのように聞けるし学んだ気になった」
郡司「わかる!今日聞いたやつ全部やってみたい」
郡司「あとさ『友達から金もらった分うまく伝えなきゃいけない』というプレッシャーがあるから、頭フル回転させるし、普段より吸収できた気がする」
私「1万円あげた人の話を聞くから、払った分元を取ろうとして、前のめりで聞く姿勢になった。不思議」
と、傍からみると「自分の1万円で習い事をした」と変わらないのですが「他人に投資する」という形をするだけで全員おトクな気分になり、まなびも増えることがわかりました。
今回わかったのは、利益を得る目的でお金を使うと「その対象が突然自分ごとのように見える」という魔法がかかるようです。
そう考えると「投資が趣味です」という人の気持ちもわかるような気がする! 投資した企業が儲かったり、土地の値段があがると自分のことのように嬉しいのだと思えました。
やってみたら「投資」についてのハードルが下がりましたので、「株とかFXとかいきなりはこわいよぅ」と言う人はぜひ友達と1万円投資ごっこからやってみてください。
取材協力:
ドラム:マンツーマン初心者ドラムレッスン
演技:エンターテイメントスクール「N’s」
女装:女装・コスプレ変身サロン「Milky」
・当記事は投資啓蒙を目的に作成したものであり、大和投資信託では個別の投資相談は承っておりません。
・当記事に掲載の情報は、すべて執筆者および取材対象者の個人的見解であり、大和投資信託の見解を示すものではありません。
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デイリーポータルZなどで記事を執筆しているライターです。CHOCOLATEという会社でプランナーとしても勤務しています。ブログ「<a href="http://udemerry.hatenadiary.jp/">今日の休憩</a>」