投資の世界ではよく聞く言葉、「レバレッジ」。
FXや株の信用取引において使われる仕組みの一つなのですが、何だか怖いイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。
しかし今回、そんなレバレッジのイメージを覆すスーパーサラリーマンを発見!
そのお方とは…
最強の“メディア野郎”、田端信太郎さんです!
田端さんは過去、レバレッジについてこんな発言をされています。
住宅ローン、つまり借金は自分のチカラをレバレッジする道具。良い借金もあれば悪い借金もある。人類は火や石器というレバレッジを使うことで、猿から進化した。借金を全否定する人は、火事が怖いからと火を使わないのと一緒。もちろんバカが無分別に火遊びすればどうなるかは火を見るより明らかだが。
— 田端信太郎 @田端大学塾長である! (@tabbata) 2017年1月28日
火や石器がレバレッジ…? それによって人類が進化した…?
どうやら田端さんにとって、レバレッジとは投資の世界に限った話ではなく、もっと私たちの普段の暮らしに密接したもののようです。
レバレッジってそもそも何? 人生に必要なものなの? 誰でも活用できるものなの?
そんな疑問に答えてもらうべくインタビューを敢行し、“レバレッジの極意”がたっぷり詰まった内容を全3回にわたってお届けします。
第1回では、そもそもレバレッジとはいったい何なのか?“レバレッジの本質”に迫ります!
<レバレッジ2.0 田端信太郎が語るレバレッジの極意> 連載記事一覧
①「レバレッジは価値中立のツール」田端信太郎が教える“レバレッジの本質”
あなたもすでにレバレッジを活用している!
今日は田端さんに「レバレッジ」についてお聞きします。よろしくお願いします!
いいですよ。ただ、僕はレバレッジを広い意味で捉えていて、投資の話にはならないと思うけど、大丈夫ですか?
はい! まさにその、田端さんなりのレバレッジ観を知りたいです! レバレッジって、FXとか株の信用取引などで使われるものという知識しかなくて。正直、怖いというイメージもあるのですが…。
レバレッジという言葉自体、ほとんどの人にとっては「怖い」よりも「よくわからない」というレベルなんじゃないかな。レバレッジは“テコ”だと考えればいいんですよ。
テコ…? 重いものを持ち上げるときに使う、あのテコですか?
そう。僕の定義ではレバレッジとは、より少ない労力で、より多くの果実を得られるようにすることなんですよ。同じことをするのに、より時間がかからなかったり、より少ないリソースでできるようにしたりする道具。要は効率を上げるものなんです。
なるほど…。確かにそう考えると投資に限った話じゃないですね。
例えば、自分の足で歩くより、車に乗った方がより早く遠くにいけますよね。車なんか典型的なレバレッジ。あるいは飛行機なんかもそうですよね。同じ時間でよりアウトプットが期待できるもの。車と自転車と徒歩で移動距離を比べたら、その差は明らかじゃないですか。
ということは、僕もすでにレバレッジを使っていたということですか…?
テクノロジー全般はレバレッジですよ。スマホも僕からしたらレバレッジだし。最近話題のキャッシュレス決済もそう。使っています?
…恥ずかしながら、まだ使ったことはないです。
使わないのは単純に、よくわからないし怖いからじゃないですか。それで、「財布の中からお金が減らないと使った気にならないから」とか言って、現金を使い続けているんじゃないですか?
うっ…便利そうなんですけど、やっぱり現金が手元にないと不安というのはありますね。その割に、自分の周りが割引キャンペーンで盛り上がっていると、何だか抜け駆けされたようで、腹が立つんですけど(笑)。
そこなんですよ! 抜け駆けすること、ラクすることは悪いという考えね。実は最近、妻が旅行中に、幼稚園に通う子どものお弁当を作ったんですけど…。
田端さんも料理をするんですね。意外…!
今は、自然解凍の冷凍食品というものがあるんですよ。レトルトのごはんをレンジでチンして、冷凍食品を詰めたら終わり。だから、いまどきのお弁当って、3分でできるんですよ。比喩じゃなくて、本当に3分で。
それをTwitterでつぶやいたら、「心がこもってない」とか、「子どもがかわいそうだ」とか言われたんですけど。
ああ、そういう意見はあるでしょうね。
別にうちの子どもは何も文句を言わずにおいしいって、全部残さず食べてくれているわけですよ。それなのに、「抜け駆けする奴はけしからん」って。
今までのやり方を変えたくない人は、抜け駆けされた気分になるんでしょうね。
隣組みたいに監視して、けしからんとか言わずに、自分でもやってみたらいいじゃんって思うんですよ。ラクするツールがいっぱいあるんだから、別に使えばいいのにという感じなんですけどね。
人類はレバレッジで進化してきた!?
現代における車やスマホ、冷凍食品がレバレッジだということなら、田端さんが以前ツイートしていた「火」が原始のレバレッジであるという話もうなずけます。
人間とサルの違いは、そういう道具を使うところですよ。だけど、例えば石で木の実を割る行為は、もちろん手でやるよりは効率がいいという意味ではレバレッジなんだけれども、レバレッジのかかり方でいうとだいぶ低い。それが、人類が農業をやるようになって、トラクターを持ち出すようになると、レバレッジのかかり方が高くなっていく。
人類の進化のウラにレバレッジありというわけですね。
いくらでもありますよ。写真もレバレッジです。だって、普通に絵で描くよりもはるかに正確なものを早く撮れるわけじゃないですか。でも、江戸時代の頃は、写真を撮られたら魂が抜かれるかもって思われていましたよね。
今から考えると笑い話ですね。
キャッシュレス決済だって同じようなものなんですよ。現金がないと不安だって、みんないいますが。
そもそも現金、紙幣だってレバレッジですから。昔は、金という現物があって、それと交換できることの証紙として紙があった。それが、ある時代から金との交換関係がなく、ただの紙の紙幣が流通するようになったでしょ。よく考えると、これはとんでもないことですよ。
そこに疑問を持ちながらお金を使っている人なんて今はいませんよね。
みんなが使うようになって、ある一線を越えたら利用するのが当たり前になると思うんですよね。「わからない」と「怖い」という感情は、ほぼ一緒ですから。レバレッジを、ほとんどの人はよくわかっていない。知ろうともしないから怖い。怖いから知ろうとしない。
確かに、僕のキャッシュレス決済へのスタンスがまさにそうですね…。
誰もがアーリーアダプター(※)になれるわけじゃない。それはもうしょうがないです。リスクを恐れるのは生命としての本能だから。でも、リスクがあるから悪いわけではないですよね。例えば金融取引でレバレッジを使った結果、大損する人もいるわけですけど、だからといって、レバレッジが悪いということにはならない。レバレッジは価値中立で、それ自体がけしからんわけじゃないんです。
リスクがあっても、恐れずにトライできるかどうか。大昔に初めて火を使った人を尊敬しますね。めちゃくちゃ怖かったはずなのに…。そうやって行動を起こした人によって、人類は火という便利なツールを手に入れて、今じゃ誰もが当たり前のように使っているわけですもんね。
そう。結局、怖いとか怖くないとかは、相対的に慣れ親しんでいるかどうかという、程度の問題でしかないんですよ。要はリスクとリターンの話です。便利さと危険のバランスの中で、便利さを十分に味わっているんだから、リスクがあるからといって、いきなり全否定とはならないんですよね。
いまさらレバレッジを使わない時代に後戻りはできないと。
レバレッジが怖いならリスクと向き合え!
レバレッジに含まれるリスクや、新しいものに対する抵抗感などがあって、レバレッジ=怖い、よくないものというイメージがあることがわかってきました。
繰り返しになるけど、レバレッジ自体は価値中立のツール。借金だって、調達金利と資金使途次第なんだから、借金自体が悪だと思うのはナンセンスですよ。
そうはいっても怖気づく人もいると思うんですが…。 どうしてもリスクが気になる人はレバレッジを諦めるしかないんでしょうか。
「マックス」で、どうなるかってことだと思うんですよね。
マックス…?
最大限のリスクが起こったとして、どうなるんだろうと考える。
最悪のケースを想定すると、ますます怖がる人もいるのでは…?
でも、その最悪のパターンは、やりようで回避できる。それこそ投資だったら、いきなり全財産をかける人ってありえないじゃないですか。だからまずは小さく始めてみる。当たり前のことだと思うんですよ。
リスクの怖さをちゃんと知った方が、無茶な賭けをしないで済むということですね。
いきなりレバレッジをかけ過ぎるのも危険ですから。死なない程度にけがをするバランス感覚を見つけるべきですね。
そのバランス感覚はやはり実践で身につけていくものなんでしょうか。
実践と勉強、両方だと思いますよ。実践によって初めてわかることもありますし、勉強しないとわからないことあるし。
実践と勉強によって、レバレッジをかけていい場面、そうではない場面というのがわかるようになるんですね。
例えば、車通勤するのに、F1マシンを公道で走らせるのはさすがにやりすぎでしょ。
制限速度も法律も逸脱しそうです。
あるいはチーズをカットするのにチェーンソー持ち出す奴がいるかと。チェーンソーは木を倒すときには有効なレバレッジだけど、チーズをカットするときに持ってきたらおかしいでしょ。要はレバレッジをかけるにしても、“トゥーマッチ”な使い方をしないということが大事。
そこを見極める必要があるというわけですね。田端さんは、投資においてもレバレッジを活用しているんですよね。トータルの勝率はどんなもんでしょう?
個人投資家としては成功している方だと思うけど、6勝4敗ぐらいだと思いますね。
個人投資家は、トータルで勝つだけでも難しいですよね。
かなり勉強しているんですよ。公道にF1マシンを持ち出すとか、チーズにチェーンソーの例えはバカバカしさがわかると思うんですけど、実際に不利なレバレッジかどうかというのは、投資の分野は勉強しないとわからない。
投資以外で、田端さんが最も活用しているレバレッジはなんでしょう?
それは…やっぱりTwitterですかね。
確かに田端さんは著書やSNSで、Twitterの利用価値を繰り返し説いていますよね。
ちょっと空き時間に呟いて、それを20万人のフォロワーが見てくれて、自分の名前の価値を広めてくれる。経済的にメリットになっている部分があるんですよ。
田端さんはTwitterをかなり早い段階から始めていますよね。新しいものにすぐ取り組めるところに、田端さんがレバレッジに強い理由がある気がします。
もともとリスクテイカーなところはあるんでしょうね。奇妙なものや面白いものを探しに行くのが好きなんですよ。その方が、自分が仕事をしたり、一個人として生活をしたりしていく上で、QOL(クオリティーオブライフ)が上がると思うんですよね。
−−レバレッジとは「価値中立のツール」であり、実は私たちもすでにレバレッジを使っていた! あれもレバレッジ、これもレバレッジ、みんなレバレッジ。人類が今の社会を築き上げたのもレバレッジのおかげだったのです…。
でも、田端さんのようにレバレッジを上手に活用するには、一体どうすればいい のでしょう…?レバレッジの力を上手く使えば、仕事も生活も質を向上できると宣言した田端さん。次回は全ビジネスパーソン必見、ビジネスシーンで使える“レバレッジ活用術”に迫ります!
次回 「当たり前のことをやれ」田端信太郎が語る“レバレッジ活用術”はド直球のド正論だった
・当記事に掲載の情報は、すべて執筆者および取材対象者の個人的見解であり、大和投資信託の見解を示すものではありません。
この記事の連載を読む
レバレッジ2.0 田端信太郎が語るレバレッジの極意
株式会社ケイ・ライターズクラブ所属。編集者兼ライターとしてビジネス関連の媒体制作に多数携わる。老後資産に必要な2000万円を貯めるべく、フィーリング重視の個人投資を始めたばかり。塩漬けになりつつある株の様子をチェックするのが日課。失った時間は戻らなくとも、失ったお金は取り戻せると信じている。