ETFの仕組み
ETFとは金融商品取引所(以下、取引所)に上場している投資信託のことで、「Exchange Traded Funds」の頭文字から「ETF」と呼ばれています。ETFには、価格が日経平均株価やTOPIXといった特定の指数への連動を目指して運用される指数連動型のETFと、連動対象指数が存在しないアクティブ運用型のETFがあり、一般の投資信託(以下、投資信託)と同様、1つのETFで複数の銘柄に分散投資できるところが大きな特徴です。また、ETF自体が取引所に上場しているため、株式と同様にリアルタイムで売買することができます。
ETFには株式と同様、「発行市場」と「流通市場」という2つの市場が存在します。「発行市場」では、ETFの運営を行う管理会社(運用会社)と指定参加者と呼ばれる金融機関(特定の証券会社)との間でETFの受益権が新たに設定または解約(交換)されることで、ETFの発行済受益権口数が増減します。この「発行市場」で設定されたETF受益権が流通し、一般の投資家が取引所を介してETF受益権の売買を行う市場が「流通市場」です。このように2つの市場において、受益権がやりとりされている点は投資信託にはない特徴と言えるでしょう。
ETFのメリット
メリット1:手軽に分散投資できる
一般的に、ETFには複数の銘柄が組み入れられ運用されているため、1つのETFを持つだけで多くの銘柄に簡単に分散投資を行うことができます。この点は投資信託との共通点であり、投資信託も1つの商品で複数の銘柄に投資ができます。一方、株式では、1つの銘柄にしか投資することができません。相場は上昇しているのに、自身が保有している銘柄だけ下落しているとガッカリしてしまいます。その点、分散投資をしていれば、銘柄固有のリスクを抑えることができ、また、なにより銘柄選択に悩むことがありません。なお、日経平均株価やTOPIX、S&P500やNASDAQ100など、市場全体の値動きを表す指数に連動するタイプのETFも数多くあり、複数の銘柄へ手軽に分散投資を行うことができます。
メリット2:豊富な投資先
ETFには、個人では投資しづらい資産に投資できるものも多くあります。たとえば、国内市場に上場しているETFを通じて、中国やインドの株式、欧州やオーストラリアの債券、米国の不動産、金や原油などにも投資することができます。このように簡単には投資することができない地域や資産にも、ETFなら比較的少ない金額で手軽にアクセスすることができます。
また、ETF自体の値動きが組入対象資産の値動きの2倍変動するレバレッジ型や逆の方向に変動するインバース型など、短期間での収益を追求するタイプのETFや相場の下落局面で収益を狙うタイプのETFも存在し、投資目的や相場観に応じた選択がおこなえるなどETFの多様化が進んでいます。
メリット3:リアルタイムに売買でき、指値注文もできる
ETFは取引所に上場しているため、株式とほぼ同じルールで売買でき、取引時間中は、海外資産を組み入れたものであっても日本時間でリアルタイムに取引をおこなうことができます。また、株式と同様、相場を見ながら成行注文や指値注文を出すことができるため、希望の価格帯で売買することができ、万一の相場急変時にも即座に対応することも可能です。また、株式と同様、信用取引も行えます。一方、投資信託では注文日の当日のマーケットの終値を基に算出される基準価額で売買されるため、注文時点ではどのくらいの価格で売買できるか判らないことになります。海外資産が組み入れられた投資信託の場合、注文日当日の海外マーケットの急変により、思った通りの価格で売買できなかったというケースも起こり得ます。
メリット4:値動きがわかりやすい
ETFは、日経平均株価やダウ平均株価など代表的な指数に連動するように運用されるタイプのものが多く、これらは指数の値動きを見るだけでETFの値動きを把握することができます。日経平均株価などであれば、ニュースなどで情報が得られるので、タイミングよく投資することができ、投資初心者にもおすすめです。
メリット5:透明性が高い
ETFは上場規定に則り、ETFに組み入れられている銘柄やその数量が毎日開示されるため、運用に関する透明性が極めて高いと言えます。これらはETFの運用会社のホームページや日本取引所グループのホームページで閲覧することができます。 また、ETFの特徴の一つに、ETFに組み入れられた銘柄から得られる利子や配当などの収益(インカムゲイン)は、信託報酬などの費用を控除した「全額」が分配金としてETFの保有者に支払われることが定められています。一方、ETFに組み入れられた銘柄の売却益(キャピタルゲイン)は分配金となることはありません。
メリット6:保有コストが低い
投資信託と同様に、ETFを保有する際にも「信託報酬」が日々かかります。ただし、ETFの信託報酬は投資信託と比べて一般的に低くなっています。ETFの信託報酬が低く抑えられている理由には、信託報酬を受け取る会社が、投資信託の場合は「運用会社・販売会社・受託銀行」であるのに対し、ETFの場合は「運用会社・受託銀行」のみで、販売会社に支払うコストがかからないことがあげられます。
メリット7:どの証券会社でも買える
投資信託は、証券会社や銀行などの金融機関によって取り扱う商品が異なるため、口座をもっている金融機関では買えない商品も出てきます。一方、ETFは取引所に上場しているため、株式と同様に証券会社であれば基本的にはどの商品でも買うことができます。
ETFのデメリット
デメリット1:分配金の再投資コースが選択できない
投資信託は、受け取った分配金を自動的に再投資することができますが、ETFの分配金は自動的に再投資される仕組みがありません。そのため受け取った分配金を再投資する場合はあらためて自分で買付する必要があります。
デメリット2:自動積立投資をできないケースがある
投資をしたいけれど購入タイミングがわからないから、少額からでも定期的に積立投資を行っているといった方が利用しているのが、各金融機関で提供している自動積立のサービスです。しかし、投資信託の自動積立サービスは多くありますが、ETFでは取扱っている証券会社はまだ少ないのが現状です。
デメリット3:金額指定で購入することはできない
ETFでは、投資信託のように1万円だけ買うといった金額を指定して購入することは原則できません。ETFは株式と同様、購入するために最低限必要な金額があり銘柄毎に異なります。ETFの最低投資金額は、銘柄ごとに決められている売買単位(1口や100口など)と銘柄の価格を掛け合わせたものとなり、数千円から数万円と銘柄によって異なります。
以上、メリットとデメリットをお伝えしましたが、その他の留意すべき事項として、ETFを売買する際に、株式と同様に売買手数料がかかることがあげられます。投資信託を購入する際も購入時手数料がかかる場合があります。昨今は、NISA口座でのETF取引について売買手数料を無料としている証券会社や、投資信託の購入時手数料がかからないノーロードファンドを取り扱う金融機関もあります。
ETF・株式・投資信託のちがい
最後に、これまでお伝えしてきたETFと投資信託、株式のちがいをまとめます。
ETF | 投資信託 | 株式 | |
---|---|---|---|
上場しているか | している | していない | している |
購入できる場所 | すべての証券会社 | 証券会社や銀行等 商品ごとに購入できる金融機関が異なる |
すべての証券会社 |
取引価格 | 市場価格 リアルタイムに変動 |
基準価額 1日1回算出される |
市場価格 リアルタイムに変動 |
指値注文 | できる | できない | できる |
保有コスト (信託報酬) | 一般的に投資信託より低め | 一般的にETFより高め | なし |
1本で分散投資できるか | できる | できる | できない |
金額指定での購入 | できない | できる | できない |
自動積立 | サービスを提供する証券会社が少ない | 多くの金融機関で対応している | サービスを提供する証券会社が少ない |
まとめ
ETFは、保有コストが低く、少額で手軽に分散投資ができることや、自分の好きなタイミングや価格で売買できるところに大きな魅力がある投資商品です。ただ、手間をかけずに積立投資したい人や分配金を再投資したい人は、投資信託が向いているのかもしれません。また、自身で銘柄選択をしたい人には株式が向いているでしょう。ETFや投資信託、株式それぞれの特長や商品性の違いを知って、投資目的や自身のスタイルに合った投資商品を選ぶことが何よりも大切だと考えます。