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長期投資に応用。レバレッジ型ETFの仕組みと賢い活用法

東証上場ETFの中には「レバレッジ型」と呼ばれる商品があります。これらは通常のETFとは異なり、短期的に大きなリターンを期待できる半面、思いがけないリスクを負う可能性もあります。一方で、長期投資においてはこうした特性が強みに変わる可能性もあります。この記事では、レバレッジ型ETFの特性や注意点、賢く使いこなすためのヒントなどについて解説します。

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この記事の目次

レバレッジ型とは?

ETFは通常、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、米国のS&P500指数といった特定の指数の値動きへの連動を目指すように運用されています。この指数のことを原指数(原指標)と呼びます。一方、レバレッジ型のETFは、原指数の日々の変動率に一定の倍数を乗じて算出される「レバレッジ型指数」への連動を目指すように設計されています。

そもそもレバレッジには「てこの原理」という意味があり、投資の世界では、少額の資金で大きな成果を狙うことを指します。相場の上昇局面に基準とする指数以上に利益が出るように設計された投資信託などを「ブル型」といいますが、レバレッジ型はそれと同義語といっていいでしょう。

2024年11月末現在、東証に上場しているレバレッジ型指数への連動を目指すETFは11本あります。

レバレッジ型指数の特性と注意点

代表的なレバレッジ型指数に、日経平均株価の前日比変動率(%)の約2倍となるように計算された「日経平均レバレッジ・インデックス」があります。日経平均株価が前日比で10%上昇した日に、日経平均レバレッジ・インデックスは20%上昇する仕組みです。

短期的に資産を増やしたい場合は、日経平均株価への連動を目指すETFより、約2倍上昇する日経平均レバレッジ・インデックスへの連動を目指すETFに投資したほうがよさそうです。日経平均株価の上昇を見込む場合には有効な選択肢といえるでしょう。ただし、思惑が外れて株価が下落すると、レバレッジ型指数の下落幅は原指数の約2倍となってしまいます。

注意すべき点として、2営業日以上離れた日との比較においては、レバレッジ型指数の値動きが必ずしも原指数の約2倍にならないことが挙げられます。原指数が上昇・下落を相互に繰り返す場合は特に注意が必要です。例えば日経平均株価が下落後、基準とする日の価格に戻ったとしても、日経平均レバレッジ・インデックスはマイナスのままということもあり得ます。

それでは原指数の値動きごとに解説していきましょう。

原指数が一方的に上昇・下落する場合

まずは下図をご覧ください。

上昇・下落局面での原指数とレバレッジ型指数の値動きのイメージ

イメージ イメージ

これは株価指数などの原指数と、値動きが原指数の約2倍となるレバレッジ型指数の2日間の値動きを表したものです。上昇局面では、基準日の翌日に原指数が20%上昇すると、レバレッジ型指数は40%上昇します。さらに2日目には原指数が25%上昇し、2日間で100⇒150になりました。その間、レバレッジ型指数は25%の2倍の50%上昇しますから、100⇒210になります。

2日間の変動率を比べてみると、原指数は100⇒150ですから+50%です。一方、レバレッジ型指数は100⇒210ですから、+110%です。

一方の下落局面では、基準日の翌日に原指数が20%下落すると、レバレッジ型指数は40%下落します。2日目には原指数がさらに25%下落し、2日間で資産は100⇒60になりました。一方、1日目に40%下落したレバレッジ型指数は、2日目に50%下落します。100⇒60⇒30と、急速に下落していくことがわかります。

レバレッジ指数への連動を目指すETFを保有する場合、上昇相場が何日も継続すれば、前述の図にあるように資産は雪だるま式に増えていくでしょう。一方、レバレッジ型指数は、相場の下落局面においては原指数よりも大きく下落していきます。2営業日以上離れた日と比較した場合、想定される変動率(原指標の約2倍)とは異なる下落率となってしまう点は知っておきましょう。

原指数が上昇・下落を繰り返す場合

現実の相場は、上昇・下落のどちらか一方にのみ動くことはむしろ稀であり、通常は日々、上下動を繰り返すものでしょう。

ここで注意すべきことは、レバレッジ型指数は原指数以上に、一度下落した分をその後の上昇によって取り戻すのが難しいことです。それを表しているのが下図です。

原指数が上昇・下落を繰り返す場合の値動きのイメージ

イメージ イメージ

原指数は上昇・下落を繰り返しながら、3日目には基準日の100を少し上回っているのに対して、レバレッジ型指数は約94と、基準日の100を回復しません。レバレッジ指数は2日目に-40%と大きく下落してしまったことで、その後の上昇でも基準日と同じ水準までに回復できませんでした。こうした現象を逓減(ていげん)・減価といいます。

相場によっては逓減・減価が多く発生し、たとえ原指数が1カ月後に10%上昇したとしても、レバレッジ型指数は2倍の20%どころか、ほとんど上昇していない可能性も十分にあります。レバレッジ型指数には、こうした特性があるということを覚えておきましょう。

国内株式・米国株式に投資する主なレバレッジ型ETF

レバレッジ型ETFは、国内株式では日経平均株価やTOPIX、米国株式ではS&P500やNASDAQ100などを対象とするETFが東証に上場しています。

国内株式に投資する主なレバレッジ型ETF

米国株式に投資する主なレバレッジ型ETF

レバレッジ型で資産形成は可能か?

短期的に大きく価格が動きやすいレバレッジ型のETFは、資産形成の手段として有効なのでしょうか? 一括投資と積立投資のそれぞれの場合で、米国ハイテク株の代表的な指数であるNASDAQ100指数をもとに考察します。

レバレッジ型の資産形成の可能性①~一括投資の場合

下図はNASDAQ100指数(配当込み)と、日々の値動きがNASDAQ100指数の約2倍の値動きになることを目指すレバレッジ型指数(同)のそれぞれの指数への連動を目指す金融商品があると仮定して、2009年12月末に100ドルで一括投資し、2024年9月末まで保有し続けた場合の運用成績のシミュレーションです。

一括投資による運用成績のシミュレーション(単位:ドル)

イメージ イメージ

※2009年12月末~2024年9月末。トータルリターン、米ドルベース。為替の影響は勘案していません。
*NDXL Index
出所:ブルームバーグのデータより大和アセットマネジメント作成

NASDAQ100指数は15年弱の間で12.6倍に上昇し、年率リターン18.6%という力強い成長となりましたが、これを大きく上回ったのがレバレッジ型指数で、同期間でなんと47.7倍、年率リターン29.8%となりました。

ただし、これは特定の時期を切り取ったシミュレーションの1つに過ぎません。仮にコロナショック直前の2020年1月末から2023年1月末の約3年間を取り出すと、レバレッジ型指数は暴落時の逓減・減価の効果もあり、NASDAQ100を下回りました。

とはいえ、投資期間を長く取るほど、過去の例ではNASDAQ100の成長により、レバレッジ型指数も逓減・減価を乗り越える上昇を見せました。今後も米国株式市場が成長していくと考えるのであれば、レバレッジ型指数への連動を目指すETFを長期保有することは、資産形成の有力な手段になりそうです。

レバレッジ型の資産形成の可能性②~積立投資の場合

下図は、配当込みのNASDAQ100指数とレバレッジ型指数のそれぞれの指数への連動を目指す金融商品があると仮定して、同じ期間、毎月末に1ドルずつ積立投資した場合のシミュレーションです。レバレッジ型指数のリターンは投資元本の12.8倍となり、原指数であるNASDAQ100の4.8倍を大きく上回っていることがわかります。こちらも一括投資と同様に、レバレッジ型指数の方が大きな投資成果を得ることができました。

積立投資による運用成績のシミュレーション(単位:ドル)

イメージ イメージ

※2009年12月末~2024年9月末。各月末に1ドルずつ投資した場合のシミュレーション。トータルリターン、米ドルベース、為替の影響は勘案していません。
*NDXL Index
出所:ブルームバーグのデータより大和アセットマネジメント作成

定期・定額の積立投資は、値下がりした時に多く買い、値上がりした時に少なく買うことで、平均単価を抑える効果が期待できます。この効果は「ドルコスト平均法」と呼ばれます。

レバレッジ型ETFの場合、同じ原指数への連動を目指すレバレッジなしのETFと比べて、原指数の下落時の値下がりが大きいため、ドルコスト平均法の効果でより多くのETFを購入することができます。値上がり時には、それが大きなリターンとなって返ってくるというわけです。

たとえ手元にまとまったお金がなくても、レバレッジ型ETFの積立投資を長く続ければ、資産が大きく育っていくことが期待できそうです。

原指数と逆の値動きをする「インバース型」

日々の値動きが原指数の約2倍となるレバレッジ型とは対照的に、原指数と逆(約-1倍)、あるいは約-2倍の値動きになるようにつくられた金融商品は「インバース型」と呼ばれます。

レバレッジ型を含む通常のETFは、株式市場などのマーケットの上昇局面で値上がりしますが、インバース型ETFはマーケットの上昇時に値下がりし、下落時に値上がりするという性質があります。相場の下落局面における短期的なリターンの獲得や、通常の株式や投資信託、ETFなどの下落をカバーするためのヘッジ手段として活用するのが望ましいでしょう。

まとめ

世界の株式市場はこれまで、上下動を繰り返しながらも右肩上がりで成長してきました。だからこそ、短期的な値動きに一喜一憂することなく、長期の構えで取り組みたいものです。

日々の値動きが原指数の約2倍となるように設計されたレバレッジ型のETFは、レバレッジ型ではないETFと比べて値動きが激しくなりやすいため、短中期での投資では注意が必要ですが、長期保有や積立投資を実践すれば、過去の例を見ると原指数の上昇とともにリターンが増えていく可能性が高く、資産形成の有力な手段となるでしょう。

ただし、上記グラフは過去の実績であり、相場環境と投資期間によっては必ず十分な利益を期待できるとは限りません。また、上記グラフでは原指数、レバレッジ型指数ともに一括投資のリターンが積立投資を上回りましたが、原指数が高値の時に一括投資を行い、そこから下落していく局面では、特にレバレッジ型において一括投資のパフォーマンスが大きく損なわれることも考えられます。投資するタイミングによってリターンが左右されにくくするためには、タイミングを分散する積立投資が有効です。

運用中に原指数が大きく下落する局面にも注意する必要があります。直近では2020年3月のコロナショックのような急激な暴落に見舞われると、場合によってはレバレッジ型が元本を大きく割り込む可能性もあります。実際の資産運用においては、お金が必要なタイミングが近づいたら、早めに売却して利益・損失を確定させるなどの工夫も必要となるかもしれません。

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