景気後退局面でディフェンシブ性を発揮するリート

  • マーケットレター
  • 2019年03月
リートは過去の厳しい市場環境において下値抑制の役割を果たす
トム・ボージャリアン CFA 米国リート・ヘッド兼シニア・ポートフォリオ・マネージャー
トム・ボージャリアン
CFA 米国リート・ヘッド
兼シニア・ポートフォリオ・マネージャー

要旨

  • 米国リートは、1991年以降の景気後退期においては、S&P500種指数を年率で7%程度上回るパフォーマンスを収め、不況期では大いなる下値抑制の役割を果たしたことで、不透明感が⾼まる環境におけるリートのディフェンシブな賃貸収⼊および⾼い配当利回りの潜在的価値をより際⽴たせています(図表1)。
  • 健全な需要と供給のファンダメンタルズ、かつてないほど強固な財務体質、株式との低い相関(2019年1月末現在、0.52。図表3)、広範な株式市場に対して相対的に割安な水準にあるバリュエーションなど、リートを取り巻く環境は2019年も引き続き良好であると予想しています。
  • 投資家による実物不動産に対する需要が旺盛ななか、非上場不動産ファンドの運⽤者はリートが保有しているような不動産物件を取得するため、3,000億米ドルもの記録的な待機資⾦を抱えており、これがリートのバリュエーションの下支えとなる可能性があります。
図表1︓景気後退期と不況期に底堅いリート
期間ごとに集計した月次リターンの年率換算値の平均。景気回復期から景気後退期まではカンファレンス・ボード景気⼀致指数(CBCI)の主要トレンドに基づき、コーヘン&スティアーズが判断しています。景気回復期—CBCIが加速(336カ月のうち104カ月︓3/91–12/94、11/01–12/04、6/09–1/11)、好況期—CBCIが横ばい(336カ月のうち180カ月︓1/95–4/00、1/05–9/06、2/11–12/18)、景気後退期—CBCIが減速(336カ月のうち24カ月︓5/00–2/01、10/06–11/07)。不況期はNBERが報告した時期(336カ月のうち28カ月︓1/91–2/91、3/01–10/01、12/07–5/09)。分析は1991年以降に焦点を当てています。この期間は、リート構造の進化、市場規模および流動性の拡大が⾒られたことから「近代リート時代」とみなされ、現在の米国リートの投資ユニバースおよび特性を代表すると考えています。

市場をリードする資産クラスの変化

不動産投資信託(リート)は過去数年間にわたり総じて苦戦してきました。⼒強い経済成⻑が不動産に良好なファンダメンタルズをもたらしたものの、リート価格にあまり反映されてきませんでした。しかし、2018年末にかけて、世界経済減速の⾒通しや流動性の低下がグローバルな⾦融市場に打撃を与える可能性が意識され始めたことを背景に、この傾向は変化し始めました。

2018年の10-12月期において、米国リートは広範な株式市場より底堅く推移し、S&P500種指数が13.5%下落した⼀⽅、米国リートは6.7%の下落にとどまりました。欧州とアジアの不動産投資信託も同様な底堅さが⾒られ、また、2019年1月に市場が反発するなかで資⾦が流⼊したことから、リートは引き続き株式市場を大きく上回るパフォーマンスを収めました。

近年、リートが相対的に堅調に推移する局⾯はその他にも⾒られたものの、今回は、米国の景気サイクルが好況期から景気後退期に移⾏するなかで、市場をリードする資産クラスに変化が現れ始めたところだと考えています。

景気後退期に移⾏するなかで、ディフェンシブな特性、健全なファンダメンタルズ、非上場不動産ファンドの実物不動産への⾼い需要が、リートに魅⼒的な絶対および相対リターンをもたらす可能性があると考えています。

考慮すべきポイント

  1. リートは過去において、景気後退期では広範な株式市場を上回るパフォーマンスを収めてきました(図表1)。しかし、広範な株式市場を投資対象とするファンドの運⽤者の大半はいまだ、構造的に不動産投資信託をアンダーウェートとしているため、今後は大量の資⾦が循環し、不動産投資信託にシフトする可能性があります。
  2. リートが保有する不動産のファンダメンタルズが引き続き健全で、財務体質がかつてないほど強固であるにもかかわらず、過去6年間にわたり、株式市場の株価収益率が上昇している⼀⽅、リートの価格FFO倍率は、⾦利上昇が重しとなり、低下してきました。
  3. 非上場市場における大量かつ持続的な実物不動産への投資需要が資⾦の滞留を引き起こした結果、非上場不動産ファンドにおいては、リートが既に保有しているような不動産物件の取得を目的とした3,000億米ドルに及ぶ水準まで積み上がった待機資⾦が、リートのバリュエーションを下支えする可能性があります。

リートが景気後退期において底堅い理由

近代リート時代が幕を開けた1991年以来、米国リートは、景気後退期において、S&P500種指数を年率で平均7%以上、不況期や景気回復初期には、さらに大幅に上回るパフォーマンスを収めています。リートは景気サイクルの変化による影響を免れないものの、景気後退期の環境下において株式市場を上回るパフォーマンスを収めることができる理由は幾つかあると考えています。

まず、リートは予測可能な不動産賃貸料をベースとする収⼊を得る傾向があります。
厳しい景気環境下では、個⼈はスマートフォンの買い替えや新⾞の購⼊を常に⼿控えることができます。しかし、10年の賃貸契約でオフィスを借りている場合、経済状態に関わりなく、賃貸料を所有者に支払う契約上の義務があります。その結果、リートは過去において、株式市場の多くのセクターより安定した収益成⻑を⽣み出しています(図表2)。

図表2︓安定した収益成⻑

ただし、収益成⻑は不動産の物件タイプによって著しく異なる場合があります。例えば、ホテルは基本的な賃貸期間が1日であり、ビジネスや娯楽の支出に依存するため、景気に大きく左右されます。⼀⽅、通信塔は通常、賃貸期間が25〜30年で、10年間の解約不能期間に実質5年毎の契約更新であるため、⻑期的に安定したキャッシュフローを創出することができます。

セクターの景気循環性の影響

2018年10-12月期の米国リートのセクター別パフォーマンス
ホテル-20.5%(景気循環型/賃貸期間1日)
通信塔+3.6%(⻑期的/5年単位で契約更新)
2018年12月31日現在。
出所:NAREIT

次に、リートは過去において魅⼒的な配当を⽀払っており、低成⻑の環境下では投資家に有利なリターンを提供できる可能性があります。2018年末現在、不動産はエネルギーと並び、S&P500種指数のなかで最も利回りの⾼いセクターでした(1)。リートが⾼い配当利回りを実現できるのは、経常的な収益を⽣み出す不動産物件を運営、取得、開発することに特化し、キャッシュフロー重視の事業モデルを有するためです。また、配当は他の多くの企業では任意ですが、米内国歳⼊庁(IRS)は、米国リートが課税所得の90%以上を株主に還元するように義務づけています。

最後に、経済成⻑の鈍化は⾦利上昇圧⼒を緩和する可能性があります。米国のインフレ率は上昇してきたものの、経済成⻑がピークをつけ、世界経済がより厳しい環境になることは、債券利回りが現在の水準から大幅に上昇する可能性が低いことを意味します。加えて、米連邦準備制度理事会(FRB)の論調は既にハト派姿勢を強めており、まもなく追加利上げを停⽌する可能性があります。
(1)2018年12月31日現在。出所︓スタンダード&プアーズ、NAREIT

リートをめぐる有利な環境

健全なファンダメンタルズ

ディフェンシブな特性だけでは投資家のポートフォリオを保護するために十分ではありません。コーヘン&スティアーズでは、2019年の米国経済成⻑は緩やかとなるものの、依然として健全な水準だという予想に基づき、より保守的にキャップ・レート(物件価値を算出するための評価⼿法)を想定し、物件の価値およびキャッシュフローの予想を調整しています。
この保守的な予想を織り込んでも、総じて良好な商業⽤不動産市場を背景に、米国リートは引き続き魅⼒的な絶対かつ相対リターンを提供できる可能性があると考えています。不動産に対する需要と供給はおおむね均衡を保ち、物件所有者はある程度の価格決定⼒を維持し、リートの収益と配当は1桁台半ばの健全な成⻑を実現すると予想しています。
リート全体のファンダメンタルズよりも、需要と供給の状況は大きく異なる場合があるため、個別のセクターや企業を⾒ることが重要です。コーヘン&スティアーズの選別的な投資機会に関する⾒通しは以下のとおりです。

通信塔 データセンター
集合住宅 ヘルスケア

強固な財務体質

信⽤スプレッドはやや拡大する可能性があるものの、リート市場への影響は限定的だと考えています。多くのリートが過去10年間にわたり債務を削減し、債務の満期を延⻑してきたことから、リートの財務体質はかつてないほど強固になっていると⾒ています。

低い相関

リートは、他の資産クラスとの低い相関に示されるように、過去において分散効果をもたらしてきました。株式との相関は、⾦融危機を受けて急上昇した後、2019年1月末時点で0.52と過去の⻑期平均の水準まで低下しています(図表3)。リートの分散効果は、不透明感が⾼まる局⾯を迎えつつあるなかで、特に重要になると考えています。

株式と⽐較して魅⼒的なバリュエーション

広範な株式市場の株価収益率が、2018年の下落を考慮しても上昇した⼀⽅、リートの価格FFO倍率は、強固なファンダメンタルズにもかかわらず低下しています(図表4)。リートの価格FFO倍率が過去において平均して株式市場の株価収益率を上回っていたことを考慮すると、現在の低い価格FFO倍率は潜在的価値を示していると考えています。

図表3︓株式との相関は⾦融危機前の⽔準
図表4︓株式に対して割安なリートのバリュエーション

不動産を取り巻く健全な環境、魅⼒的なバリュエーションや低い相関を背景に、リートは、景気後退期に生じるボラティリティからポートフォリオを守る強⼒な手段になると⾒ています。

非上場市場における投資需要が下⽀え

非上場市場において、不動産投資に対する旺盛な需要があるなかで、実物不動産の運⽤者は、投資を実⾏可能なペースを上回る投資資⾦を集めています。こうした状況を背景に、非上場不動産ファンドにおいて、リートが保有しているような不動産物件の取得を目的とした待機資⾦は3,000億米ドルと記録的な規模に達しています(図表5)。この資⾦は以下のような複数の経路で上場リート市場に影響を与え、リートのバリュエーションの下支えとなる可能性があると考えています。

  • 商業⽤不動産価格に上昇圧⼒を加える
  • リートからプレミアム価格で資産を取得する
  • プレミアムを加えたバリュエーションでリート自体を買収する
図表5︓不動産を対象とする待機資⾦

主なポイント

  • 米国リートの2018年10月以降の良好な相対パフォーマンスは、不透明感が⾼まる環境において、ディフェンシブな賃貸収⼊および⾼い配当利回りが得られることの潜在的な利点を示唆しています。
  • ボラティリティが⾼まる局⾯は、多くの場合、投資家はポートフォリオの資産構成を⾒直し、それが十分に分散されるように確保する機会となっています。
  • リートは魅⼒的な相対バリュエーション、株式との低い相関および非上場市場における実物不動産に対する旺盛な需要によって下支えされ、今日の市場において分散を図るための魅⼒的な⽅法を提供すると考えています。

※当資料は、コーヘン&スティアーズ・キャピタル・マネジメント・インクのコメントを参考にして大和投資信託が作成したものです。

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