英国のEU 離脱

  • マーケットレター
  • 2019年02月
~現実的には離脱日の延期で、離脱撤回のシナリオも~
ポイント
  • EU離脱日が約1カ月後に迫る
  • 離脱協定の下での離脱かハード・ブレグジットか
  • 現実的には離脱日の延期で、離脱撤回のシナリオも

EU離脱日が約1カ月後に迫る

2016年6月23日に実施された国民投票で英国のEU(欧州連合)からの離脱が支持されたことを受け、英国はEU基本条約第50条に基づき、2017年3月29日にEU離脱を通告しました。それから丸2年となる2019年3月29日のEU離脱日が約1カ月後に迫ってきました。

離脱を通告して以降、英国政府とEUとの間で協議されていた離脱協定の草案が2018年11月に合意を見ました。これを英国議会が承認し、EU加盟国が批准すれば、離脱協定の下、英国は首尾よくEUを離脱する運びとなります。
ところが、英国議会は2019年1月15日に実施した採決で、草案を大差で否決しました。EU残留派の反対はもとより、EU離脱派からも反対が生じました。草案では、2020年末までを移行期間と定め、それまでに懸案であるアイルランドと英国領北アイルランドとの国境管理の問題を回避しつつ、英国とEUとの間で新たな通商協定を締結することができなければ、「安全策」として、英国全土をEUの関税同盟に残すこと、また、北アイルランドに限って食料品などの規制をEUのルールに合わせることになっています。しかし、この安全策は離脱後も英国の通商政策の自由を奪うだけでなく、英国の一体性を阻害しかねません。アイルランド島の国境管理の復活は宗派対立によるかつての民族紛争の記憶を呼び起こしかねず、極めてセンシティブな政治問題です。EU加盟国であるアイルランドとの物理的な国境がないままで英国とEUとの物流をどう管理するかは難題であり、それ故、安全策が無期限に適用される懸念から、離脱派の一部が強硬に反対しました。

そこで、英国議会は2019年(以下同じ)1月29日にEU離脱に関する修正案を可決しました。上記の安全策に関する条項を別の条項に修正するために、英政府がEUと再交渉するとの内容です。メイ首相は当初2月13日までにEU離脱協定案の見直しを求めるべく、EUとの再交渉に臨みましたが、EUは従来通りのスタンスで、1年半かけてまとめた離脱協定案の再交渉は明確に拒否しました。

EUとの交渉がはかばかしくないなか、英国議会は2月14日に、離脱協定案の修正に係るEUとの協議を延長するとの政府の動議を否決しました。もっとも、この動議に法的拘束力はないことや、メイ首相が動議の採決に先立って、2月26日までに離脱協定案が修正できなければ改めて離脱協議に係る方針を示し、2月27日に議会に採決を諮ることを明らかにしており、引き続きメイ首相によるEUへの働きかけが続いていますが、EUは再交渉に応じる姿勢を示しておらず、具体的な進展は乏しいと見込まれます。

離脱協定の下での離脱かハード・ブレグジットか

3月29日の離脱日が定められているなか、現時点で考えられるシナリオは以下の二つです。一つは、離脱協定の下での円滑な離脱です。この場合、2020年末までの移行期間も設けられるため、直ちに経済が変調を来すことはないと見込まれます。しかし、上述の様に、EUは再交渉に応じる姿勢を示しておらず、離脱協定案が英国議会で承認される可能性は低いと考えられます。そうであれば、合意なき離脱、いわゆるハード・ブレグジットの途しかありません。
ハード・ブレグジットの場合、GDP(国内総生産)は8%減少し、インフレ率は最大で6.5%に達し、住宅価格は30%下落するとの試算を、BOE(イングランド銀行)は2018年11月に示しています。2008年の金融危機時をも上回って経済が縮小するとの試算に議論の余地はありますが、ハード・ブレグジットの場合、少なくとも短期的には経済への甚大な影響を免れないでしょう。

現実的には離脱日の延期で、離脱撤回のシナリオも

現実的には、英国議会が3月29日の離脱日を延期する法案を可決し、メイ首相は離脱日の延期をEUに申請することになると思われます。離脱日の延期にはEU加盟国の全会一致の賛成が必要ですが、EUとしてもハード・ブレグジットによる経済の混乱を回避すべく、離脱日の延期に賛成すると思われます。3月21、22日にEU首脳会議が予定されており、その場で決定されるのではないでしょうか。

離脱日がどの程度延期されるかは不明ですが、延期されたからと言って、アイルランドとの国境問題が解決する保証はありません。結局は、問題先送りにしかならないと考えられます。しかし、その間に、EU離脱に係る国民投票の再実施の機運が浮上するかも知れません。世論調査では、現時点で国民投票を実施すればEU残留がEU離脱を上回る結果となっています。また、英国とEUとの間で最終合意がなされていない間は英国の一存で離脱申請を撤回できるとの見解を、欧州司法裁判所は正式に表明しています。英国内の政治情勢次第ですが、離脱日が延期された場合は、離脱協定の下での円滑な離脱、ハード・ブレグジットに加えて、離脱撤回のシナリオも考えられます。

以上

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