⽶国リート市場︓2020年上半期の振り返りと今後の⾒通し

  • マーケットレター
  • 2020年09月

※当資料は、コーヘン&スティアーズ・キャピタル・マネジメント・インク(以下、コーヘン&スティアーズ社)のコメントを基に大和アセットマネジメントが作成したものです。

2020年上半期の振り返りと今後の⾒通し

米国リート市場は、3月の底値から大きく反発していますが、年初来のトータル・リターンは依然としてマイナスとなっています(図1)。一方で、米国株式市場の年初来のトータル・リターンはプラス圏まで大きく回復しています。2000年から2019年までの過去20年の⻑期パフォーマンスにおいて、株式市場よりも良好なパフォーマンスを発揮してきた米国リートは、このような困難な状況の下で、むしろ魅⼒的な投資機会を創出していると考えます。

その背景となる3つのポイントは、以下のとおりです。

  1. ⽶国リートのファンダメンタルズはおおむね健全
  2. セクター間のパフォーマンスの乖離が投資機会を創出
  3. 相対的に魅⼒的なバリュエーションが下⽀え要因
(図1)⽶国リートおよび⽶国株式のパフォーマンス(トータル・リターン、⽶ドルベース)( 2019年12月31日から2020年7月31日)
(出所)ブルームバーグ、コーヘン&スティアーズ

1.⽶国リートのファンダメンタルズはおおむね健全

ショッピングモールなど一部のセクターは、景気後退による打撃を大きく受けるものの、その他大半のセクターでは底堅い需要が観測されており、4-6月期における賃料回収率は90%を上回る水準となっています。また、米国リートの平均負債⽐率は歴史的に低水準にあり、財務体質は総じて健全です。さらに、低⾦利環境を背景に、⻑期にわたる低コストの資⾦調達が可能となることで、リートの⼿元流動性は改善し、足元の景気後退局面への耐性を強化しています。

2.セクター間のパフォーマンスの乖離が投資機会を創出

年初来、米国リートが下落するなか、データセンターや、通信塔および産業施設セクターは、米国リート市場全体を大きくアウトパフォームしてきました。これらの3つのセクターは、アマゾン、ネットフリックスやベライゾンといった情報通信関連企業に対してインフラを提供しています。足元の在宅勤務の増加や、在宅時間の⻑期化によるインターネット・ショッピングの利用拡大を背景に、5Gや情報セキュリティ強化への需要が急速に高まっています。現在起きているこれらの現象が、データセンター、通信塔および産業施設の需要を牽引しており、将来にわたって底堅い需要が継続すると考えられます。

新型コロナウイルスの感染拡大による高齢者住宅に対する懸念の高まりを受けて、ヘルスケアリートは1-3月期において大幅に下落し、年初来でも米国リート市場全体をややアンダーパフォームしています。医療サービスや高齢者向けの介護サービスといった構造的な需要の増加による恩恵を受けるにもかかわらず、年初来出遅れているヘルスケアセクターは、魅⼒的な投資機会を⽣み出していると考えています。新型コロナウイルス感染拡大の環境下でも、高齢者住宅や介護施設は想定よりも物件稼働率が健全な水準を維持しており、新規⼊居者数が回復基調にあるなど、ヘルスケア関連の物件において需要の底堅さが確認されています。

一方で、商業施設セクターは引き続き厳しい環境に直面しています。例えばショッピングモールセクターの年初来のパフォーマンスは、米ドルベースで50%以上下落しています。eコマースの浸透によるマイナスの影響に加え、足元の経済ショックを受けてテナントとして⼊居する小売企業の倒産増加が重しとなっています。

米国リート市場において、多くの不動産タイプは新型コロナウイルスの感染拡大によるマイナスの影響は限定的であり、いくつかのセクターでは物件に対する需要増加が⾒られています。賃貸借契約が幅広いセクターで継続されていることを背景に、米国リートの収益性は米国株式と⽐べ総じて底堅いとみています。

(図2)⽶国リートのセクター別リターン(トータル・リターン、⽶ドルベース)( 2019年12月31日から2020年7月31日)
(出所)NAREIT、コーヘン&スティアーズ

3.相対的に魅⼒的なバリュエーションが下⽀え要因

近代化を迎えた1990年代以降、リートは景気後退後の局面において総じて魅⼒的な投資リターンを提供してきました。景気サイクルの回復期では通常、⼒強い収益成⻑が⾒られる一方、⾦利は低水準で推移する傾向があり、このような状況は過去においてリートにとって追い風となってきました。
今後の回復が期待されている一方で、米国リートは現在、株式市場に対して大幅に割安な水準で取引されています(図3)。また、米国リートの価格は、保有する不動産の純資産価値に対しても過去平均を下回る水準で推移しています(図4)。
米国リートは、おおむね底堅いファンダメンタルズを有していることや、今後市場全体を牽引する魅⼒的なセクターが多く存在すること、また、現在総じて割安な水準で取引されていることから、今後数年にわたって魅⼒的な投資リターンを提供できる可能性が高いとみています。

(図3)株価収益率⽶国リートvs.⽶国株式( 2002年12月から2020年7月)
(出所)UBS、コーヘン&スティアーズ
(図4)⽶国リートのNAV(純資産価値)に対するプレミアム/ディスカウント( 1990年1月から2020年7月)
(出所)UBS、コーヘン&スティアーズ
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