J-REIT市場の投資環境

  • マーケットレター
  • 2020年08月
7月の都心オフィス空室率は上昇

7月の都心オフィス市況

2020年7月時点の東京都心5区のオフィス・ビル平均空室率(三鬼商事調べ)は2.77%と2020年6月に比べて0.80ポイント上昇しました。上昇は5カ月連続で、2018年3月以来の空室率水準となりました。大規模新築ビルが満室で竣工しましたが、既存ビルでは新築ビルへの移転に伴う二次空室の募集開始の動きが相次ぎ、空室率が上昇しました。

上記の二次空室に加え、コロナ禍で業績が悪化した企業のオフィスの解約があった一方、増床計画の一時中止やオフィス内見が緊急事態宣言中に実施できず、営業活動が停止したことで成約に向けたテナントの動きが遅れ、成約が減少したことが空室率の上昇に寄与したと考えられます。短期的には同様の傾向が継続しそうで、年末にかけて3-4%台への上昇を見込む専門家が増えてきました。

平均賃料は23,014円/坪と前月比で0.59%上昇し、前年同月比の上昇率は6.23%でした。2014年1月から79カ月連続の上昇となり、この期間の上昇率は42.00%、賃料水準はリーマン・ショック前の高値を抜き、月次統計を開始した2002年1月以降の高値となりました。前年同月比での上昇率は3カ月連続で鈍化したものの、上昇基調は維持されています。

上記統計は6日の取引時間中に発表されました。6日の東証REIT指数は前日比▲1.1%下落、オフィス型銘柄の値動きは統計発表後下げ幅を拡大しており、市場の想定より大きな空室率の上昇だったことが示唆されます。ただし、オフィス型の日本ビルファンドで前日比▲3.3%、ジャパンリアルエステイトで同▲2.0%とそこまで大きな下落幅ではありません。オフィス市況の今後の悪化について、市場はある程度織り込んでいると考えられます。

都心5区のオフィス賃料・空室率の推移(月次)(2007年9月から2020年7月)

東証REIT指数の緩やかな上昇を見込む

2020年のオフィス供給量は過去20年の中で2003年に次ぐ高水準が予想されており、二次空室の発生やそれに伴う空室率の上昇はよほどテナント需要が強くない限り、自然な現象です。先行きをみると、2021年、2022年にオフィス供給量は低水準となる見込みで、2020年の大量供給により二次空室が発生しても埋め戻しに時間をかけられるのは安心材料の一つです。

今後オフィス市況を考えるうえで、重要となるのは景気動向、企業業績、オフィスワーカーを中心とした雇用情勢です。緊急事態宣言が解除され、経済活動の正常化への期待はありますが、足元では新型コロナウイルスの感染第二波といえる水準まで新規感染者数が再拡大するなど懸念材料も多くあり、先行きへの不透明感があります。また、在宅勤務の導入による企業のオフィスに求める役割の変化が進む可能性があります。そのなかでの二次空室のリーシングの進捗が今後注目されます。

J-REITの保有する資産の約4割がオフィスで、今後のオフィス見通しは東証REIT指数にとって重要な要因です。今後もオフィス関連のネガティブな報道が続き、指数の上値が抑えられる可能性もあります。

一方で、東証REIT指数は、オフィス市況の悪化を含む分配金の減少を相応に織り込んだ水準とも考えられます。東証REIT指数の実績分配金利回りをみると、6日時点で4.39%でした。仮に分配金水準が10%低下すると仮定しても、3.95%です。

短期的には、J-REIT市場固有の要因よりも世界的なコロナ禍の動向を含む投資家のリスク選好姿勢の変化が指数の推移に大きな影響を与える展開が続くと考えています。中期的には世界的に緩和的な金融環境の長期化が想定されるなかで、相対的に高い配当利回りが期待できるJ-REIT市場は投資対象として魅力的と考えており、緩やかな上昇を見込んでいます。

東証REIT指数の推移(2007年1月初から2020年8月6日)と東証REIT指数の分配金利回りの推移(2007年1月初から2020年8月6日)
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