J-REIT市場の現状と⾒通し

  • マーケットレター
  • 2020年04月
3月の投資部門別売買動向とオフィス市況の状況確認

⾦融機関の売りでJ-REIT市場は下落が加速

新型コロナウイルスの感染拡⼤による世界景気の減速懸念により、投資家のリスク回避姿勢が強まり、東証REIT指数(配当込み)は3月に▲20.7%と⼤幅に下落しました。特に3月中旬の急落は⾦融機関による3月末の決算対策、減損回避などの目的でロスカット(強制損切り)の売りが膨らんだことが下落幅を⼤きくしたとみられます。下旬には各国の⾦融・財政政策の発表や割安な水準に注目した買いなどにより反発しました。国⼟交通省によるテナントの賃料⽀払いに対して柔軟な措置の要請や緊急事態宣⾔に伴う外出⾃粛の⻑期化による業績への悪影響などが懸念される⼀⽅で経済対策の財政⽀出への期待もあり、4月に⼊ってからも不安定な推移が続いています。
2020年3月のJ-REITの投資部門別売買動向では、銀⾏が462億円、ETFへの資⾦流出⼊が⼤部分を占めると考えられる証券会社の⾃己売買部門が343億円、投資信託が269億円の売り越しでした。銀⾏部門には後述の日本銀⾏による合計315億円の買い⼊れが含まれることを考えると極めて⼤きな売り主体でした。⼀⽅、個人投資家が478億円、海外投資家が343億円の買い越しでした。

上記の通り、⾦融機関が保有していた個別銘柄やETF、私募投資信託の売却を⼤きく進めた⼀⽅で、⼤幅な下落により投資意欲を⾼めた海外投資家や個人投資家の買い越しが3月にあったことがデータとして確認できました。特に個人投資家はこの統計では把握できない新規公開や公募増資でJ-REIT銘柄を取得し、その後売却を⾏うため、構造的な売り越しの主体です。買い越しに転じたのは2017年7月(5千万円)以来で個人投資家が機動的に投資を⾏っていました。

3月のJ-REIT市場の下落率はリーマン・ショック時の下落以来の規模ですが、現在のJ-REIT市場のバランスシートは極めて健全で、負債の調達は⻑期固定が中⼼と当時とは状況が⼤きく異なります。中⻑期的な投資対象としての割安のあるJ-REIT市場は魅⼒的と考えます。

東証REIT指数の推移 J-REITの主要投資部門別売買動向 2007年1月初から2020年4月10日
(出所)ブルームバーグ
J-REITの主要投資部門別売買動向 2019年4⽉から2020年3⽉
(出所)東京証券取引所

J-REIT市場は割安な水準

利回り、資産価値の両面において、割安な水準にあるJ-REIT市場の魅⼒は⾼まっています。利回り側では、東証REIT指数の分配⾦利回りは4月10日時点で4.99%、10年国債利回りとの差は4.97%まで拡⼤しました。資産価値側では、市場全体のNAV倍率(物件の価値を時価で評価した1口あたり純資産と投資口価格の倍率)は1倍を下回り、4月10日時点で0.91倍まで低下しました。「解散価値」を下回り、理論的には保有不動産を全て売却すれば投資家はリートの市場価格を上回る資⾦を⼿にできる状態です。この状態をうけ、⾃己投資口の取得を決定する投資法人が出てきており、M&Aによる再編などの動きも期待されます。こうした動きは過去2017年〜2018年頃に起こりました。その時には市場全体ではNAV倍率は1倍を上回っていたのですが、銘柄によってはNAV倍率が1倍を下回っていました。その中で広まった⾃己投資口取得やM&Aは、その後投資口価格、ひいてはREIT指数全体が回復する⼤きな原動⼒となりました。今回もこのような動きが広く波及すればNAV倍率1倍への回帰が期待されます。

短期的には世界経済の不透明感や緊急事態宣⾔による業績への悪影響などを背景に、J-REIT市場は不安定な推移が続くとみられます。⼀⽅で景気悪化に対応するため、各国で⾦融・財政政策が発表されています。例えば、日本銀⾏は3月16日に追加の⾦融緩和策の⼀つとして「J-REITの積極的な買い⼊れ」を発表しました。当面は年間約1,800億円(従来900億円)に相当する残⾼増加ペースを上限とする積極的な買い⼊れが実施されます。3月13日までは1日当たりの買い⼊れ額は12億円でしたが、16日に15億円、17日に20億円、19日に40億円と拡⼤し、その後3月中は40億円の買い⼊れが続き、3月の月間合計買い⼊れ額は315億円でした。4月以降は20億円の買い⼊れと減額されているものの、日本銀⾏による買い⼊れがJREIT市場の需給環境の下⽀えとなることが期待されます。

新型コロナウイルス感染拡⼤の経済への影響を緩和するために、世界的に緩和的な⾦融環境の⻑期化が想定されるなかで、再び⾦融機関は運⽤難に苦しむことになると考えられます。その中で相対的に⾼い配当利回りが安定的に期待できるJ-REIT市場は投資対象として再びその魅⼒が⾒直されるものと考えます。その際には⾦融機関からの資⾦流⼊も期待でき、中期的に緩やかな上昇を想定しています。

J-REITのNAV倍率の推移のグラフ(月次)2002年2月から2020年4月(2020年4月分は2020年3月時点のNAVと4月10日の投資口価格を元に⼤和アセット簡易推計)
(出所)不動産証券化協会、ブルームバーグより⼤和アセット作成
東証REIT指数の分配⾦利回りの推移のグラフ 2008年1月初から2020年04月10日
(出所)ブルームバーグより⼤和アセット作成

オフィスは堅調

2020年3月時点の東京都⼼5区のオフィス・ビル平均空室率(三⻤商事調べ)は1.50%と2020年2月に⽐べて0.01ポイント上昇しましたが、過去最低水準での推移が続いています。3月は新築ビル3棟が満室で竣工しましたが、既存ビルで⼤型空室の募集開始の動きなどがあり、空室率がわずかに上昇しました。

平均賃料は、22,594円/坪と前月⽐で0.2%上昇し、前年同月⽐の上昇率は6.9%でした。2014年1月から75カ月連続の上昇となり、この期間の上昇率は39.4%となりました。新型コロナウイルス感染拡⼤の影響が顕在化していない3月までのオフィス需要は強く、オフィス市況は好調に推移していました。

今後について、オフィスの⼤量供給と新型コロナウイルスの影響の⼆つを確認します。2020年のオフィス⼤量供給により需給の悪化を懸念する⾒⽅がありましたが、新規⼤型ビルの⼊居企業はほぼ決まっている状態でオフィス市況が崩れる要因にはならないと考えています。⼀⽅で年後半に想定される新規⼤型ビルに移ったテナントが従来使っていたオフィスの空室(⼆次空室)には注意しています。

新型コロナウイルスの感染拡⼤による緊急事態宣⾔、外出⾃粛が経済に与える影響は不透明なところが多いのが現状です。現時点ではリストラ等による企業の雇⽤者数の減少が都⼼でのオフィスワーカーの減少につながらない限り、企業がオフィス面積を⼤きく減らす動きにはつながりにくいとみています。足元でのテレワークの普及も短期的な影響は限定的でしょう。過去順調だった賃料増額は景気不透明感や企業業績の悪化などからペースが鈍化するとみられますが、稼働率は⾼い水準が続くと想定しています。

都心5区のオフィス賃料・空室率の推移(月次)のグラフ 2007年9月から2020年3月
(出所)三⻤商事
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