J-REIT市場の現状と⾒通し

  • マーケットレター
  • 2020年03月
新型コロナウイルスのJ-REIT保有物件に与える影響を考える

新型コロナウイルスの感染拡⼤懸念でJ-REITも⼤幅に下落

新型コロナウイルスの感染拡⼤による世界景気の減速懸念により、投資家のリスク回避姿勢が強まり、東証REIT指数(配当込み)は2⽉に▲8.5%、3⽉に▲20.9%(※3⽉13⽇時点)と⼤幅に下落しました。国内株式に⽐べて年初来堅調な推移が続いていたJ-REIT市場は⾜元で下落幅が⼤きくなっています。

短期的には世界的な新型コロナウイルス問題の収束時期が明確には⾒通せないため、J-REIT市場を含む⾦融市場の不安定な推移が続くとみられます。⼀⽅、3⽉15⽇(現地)に⽶連邦準備理事会が緊急の⽶連邦公開市場委員会を開催し1.0%の⼤幅利下げを決定するなど、各国の⾦融・財政政策が世界経済を下⽀えることが期待されます。中⻑期的にはJ-REIT市場は⾜元の下落により割安感が⾼まっていると考えます。

J-REIT市場の割安感が⾼まる

まず利回りからみたバリュエーションを確認します。指数下落により、東証REIT指数の分配⾦利回りと国債利回りとの差は3⽉13⽇時点で4.77%まで拡⼤しました。J-REIT市場の利回り⾯での魅⼒が⼤きく⾼まっています。

次に資産価値からみたバリュエーションを確認します。2ページ⽬のグラフの通り、市場全体のNAV倍率(物件の価値を時価で評価した1⼝あたり純資産と投資⼝価格の倍率)は、過去平均を下回ったうえに1倍を下回り、3⽉13⽇時点で0.90倍まで低下しました。「解散価値割れ」にあたり、理論的には保有不動産を売却すれば投資家はリートの市場価格を上回る資⾦を⼿にできる状態です。この状態が継続するようであれば、今後は⾃⼰投資⼝の取得などの動きも期待されます。

世界的な新型コロナウイルス感染者数の増加ペースの鈍化が⾒えれば、割安感の⾼まったJ-REIT市場の反発が期待できると考えています。

東証REIT指数の推移( 2016年01⽉初〜2020年03⽉13⽇)
東証REIT指数の分配⾦利回りの推移( 2016年1⽉初〜2020年03⽉13⽇)
J-REITのNAV倍率の推移(⽉次)( 2002年02⽉〜2020年03⽉)

ホテルは厳しい状態が継続

J-REITの保有するホテルについては、⾜元、先⾏きとも厳しい状態です。

訪⽇外国⼈の増加を期待し、東京や⼤阪、京都を中⼼に⼤量のホテルが供給され、需給が緩んだ状態にありました。2019年夏以降、⽇韓関係の悪化により韓国客が⼤きく減少したことも要因の⼀つです。

今後について、新型コロナウイルスの影響と東京五輪の延期・中⽌の影響の考え⽅の⼆つを確認します。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡⼤により、訪⽇外国⼈が当⾯低⽔準となるのは避けられません。加えて⽇本は⽔際対策として中国や韓国などに14⽇以内に滞在した外国⼈の⼊国を原則拒否する措置をとることも悪影響を与えるでしょう。⽇本⼈の宿泊者数もレジャー・出張ともに⾃粛ムードが⾼まるなかでは減少が想定されます。当⾯は厳しい状態が継続するとみています。

ホテル専業の⼤⼿銘柄であるジャパン・ホテル・リートの2019年12⽉期の実績を振り返ると営業収⼊に占める変動賃料は112億円で39.5%でした。純利益は153億円だったことから、仮に1年間現在のような環境が続き変動賃料が全く発⽣しなかった場合でも、⼤幅な分配⾦減少は起こりますが、利益を計上し、分配⾦の⽀払いは可能です。

では、J-REIT市場全体の分配⾦をどれだけ毀損しうるかという点ですが、変動賃料⽐率の多い⼤⼿三社(ジャパン・ホテル・リート、インヴィンシブル、星野リゾート・リート)の昨年の変動賃料が合計で250億円程度で、J-REIT市場全体の分配⾦額が6,000億円弱ですので、全体の分配⾦を4%程度毀損しうることになります。少なくない⾦額ではありますが、昨今のJ-REIT市場の⼤幅下落を説明するほどの⾦額とはいえません。

⼀部で報道されている東京五輪の延期・中⽌について、その可能性を議論することは材料が乏しくできませんが、考え⽅を確認します。仮に中⽌された場合、2020年夏に期待されていた五輪による特需がなくなることになります。⼀⽅、延期であれば、特需が発⽣する時期が変わるだけです。

厳しい状態が今後も続くと想定されるホテルですが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡⼤が収束すれば、これまで旅⾏を控えていた分の反動需要もあり、⼀定のリバウンドが期待できると考えています。

オフィスは堅調

J-REITの保有するオフィスについては、⾜元は好調、先⾏きは堅調とみています。

2020年2⽉時点の東京都⼼5区のオフィス・ビル平均空室率(三⻤商事調べ)は、1.49%と2020年1⽉に⽐べて0.04ポイント低下し、三⻤商事公表の⽉次データとして残る2002年1⽉以来の過去最低値を更新しました。⼤型成約はなかったものの、解約の影響も⼩さく、空室率は低下しました。

平均賃料は、22,548円/坪と前⽉⽐で0.45%上昇し、前年同⽉⽐の上昇率は6.86%でした。2014年1⽉から74カ⽉連続の上昇となり、この期間の上昇率は39.13%となりました。

引き続きオフィス需要は強く、オフィス市況は好調に推移していることが分かります。

今後について、オフィスの⼤量供給と新型コロナウイルスの影響の⼆つを確認します。2020年のオフィス⼤量供給により需給の悪化を懸念する⾒⽅がありましたが、⼤型ビルの⼊居企業はほぼ決まっている状態でオフィス市況が崩れる要因にはならないと考えています。

新型コロナウイルスの影響はリストラ等による企業の雇⽤者数の減少が都⼼でのオフィスワーカーの減少につながらない限り、企業がオフィス⾯積を⼤きく減らす動きにはつながりにくいとみています。⾜元でのテレワークの普及も短期的な影響は限定的でしょう。これまで順調だった賃料増額について景気不透明感や企業業績の悪化などからペースが鈍化する可能性はありますが⾼い稼働率を背景に今後も堅調とみています。

都⼼5区のオフィス賃料・空室率の推移(⽉次)( 2007年9⽉〜2020年2⽉)

商業施設は概ね固定賃料のため底堅い

J-REITの保有する商業施設については、⾜元は堅調、先⾏きは新型コロナウイルスの影響を注視しつつも概ね固定賃料のため底堅いとみています。

⽶ファストファッション⼤⼿フォーエバー21の⽇本市場からの完全撤退など⼀部のテナント退去が市場の懸念を⾼めていましたが、⾜元の業績は堅調です。多くの契約が⻑期固定契約となっており、賃料の安定性が⾼いことがその要因としてあげられます。

今後について、新型コロナウイルスの影響を注視しています。外出⾃粛はテナントの売上に悪影響を与えており、その影響を⾒極める必要があるためです。現時点では前述の⻑期固定契約から安定した賃料収⼊が期待できることや政府による消費刺激策により底堅いとみています。

物流施設は堅調

J-REITの保有する物流施設については、⾜元は堅調、先⾏きも堅調とみています。

インターネット通販の拡⼤による需要の拡⼤を背景に⾜元は堅調な推移が続いています。2019年は物流施設の⼤量供給があったものの、旺盛な需要により空室率は低下しました。

今後についても堅調な推移が続くとみています。2020年の物流施設の供給は前年より減少する⾒込みで、需給は引き締まった状態が継続する⾒込みです。加えて多くの契約が⻑期固定契約となっており、賃料の安定性が⾼いことも安⼼材料です。

住宅は堅調

J-REITの保有する住宅については、⾜元は好調、先⾏きは堅調とみています。

都⼼部への⼈⼝流⼊に⽐べて賃貸住宅の供給は少ない状態が続いており、都⼼部の賃貸住宅の稼働率が⾼⽌まり、賃料も上昇、好調な状態です。

今後についても着⼯件数等のデータからは新規供給の⼤きな増加は予想されず、堅調な推移が続くと考えています。物流施設と並び、ファンダメンタルズでの不安材料が少ないセクターです。強いて懸念材料をあげると、新型コロナウイルスの感染拡⼤の影響で3⽉末の転勤等が抑制され、⼊居者の退去率が低下した場合、賃料増額のペースが低下する可能性がありますが、⾼稼働の継続を⽰唆するものであり、悪い話ではありません。

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