J-REIT市場~2020年の⾒通し~

  • マーケットレター
  • 2019年12月
ファンダメンタルズは依然として良好、緩やかな上昇を想定
ポイント
  • J-REIT市場は2019年に⼤幅上昇、2020年は緩やかな上昇を想定
  • 都⼼オフィス空室率は過去最低⽔準、マンション賃料は上昇傾向が続く
  • J-REITに投資するETFへの資⾦流⼊続く
  • J-REITの分配⾦利回りと⻑期⾦利の利回り差は、拡⼤しにくい環境を想定

ファンダメンタルズは依然として良好、2020年は緩やかな上昇を想定

2019年のJ-REIT市場は堅調なファンダメンタルズや国内外の⻑期⾦利が低下傾向にあったことなどを背景に⼤幅に上昇しました。
2020年も、①オフィスや住宅などの良好なファンダメンタルズを反映した分配⾦成⻑期待、②⻑期⾦利の低位推移、③相対的に⾼い利回りが期待できるJ-REITへの継続した投資需要、などを下⽀えとして、緩やかに上昇する相場展開を想定しています。

2019年の東証REIT指数と⻑期⾦利( 2018年12⽉末〜2019年12⽉19⽇)

都⼼オフィス空室率は過去最低⽔準、賃料は上昇傾向が続く

2019年11⽉時点の東京都⼼5区のオフィス・ビル平均空室率(三⻤商事調べ)は、1.56%と10⽉に⽐べて0.07ポイント低下し、三⻤商事公表の⽉次データとして残る2002年1⽉以来の過去最低値を更新しました。11⽉に開業した新築の⼤型ビル「渋⾕スクランブルスクエア東棟」(渋⾕区)が満室で竣⼯したことや、テナントの退去が少なかったことから低下しました。
平均賃料は、22,066円/坪と前⽉⽐で0.25%上昇し、前年同⽉⽐の上昇率は6.38%でした。2014年1⽉から71ヶ⽉連続の上昇となり、この期間の上昇率は36.15%となりました。
引き続きオフィス需要は強く、オフィス市況は堅調に推移していることがわかります。
また、2020年のオフィス⼤量供給により需給の悪化を懸念する⾒⽅がありましたが、⼀部報道によると、2020年の新規供給オフィスについては8割以上でテナントの⼊居が決まっているという状況であり、需給悪化に対する懸念はおおむね解消したと考えています。

都⼼5区のオフィス賃料・空室率の推移(⽉次)( 2007年9⽉〜2019年11⽉)

都⼼の賃貸住宅市場は好調、緩やかな賃料上昇が続く

マンション賃料インデックス(アットホーム株式会社、株式会社三井住友トラスト基礎研究所)によると、東京23区のマンション賃料は、2011年頃から緩やかな上昇を続けています。
賃料上昇の背景として、地価や建築費の上昇などから、賃貸住宅の新規供給が抑えられていることや、東京都への⼈⼝流⼊傾向が続き世帯数が増加していることなどがあります。この傾向は今後も続くとみられ、都⼼の賃貸住宅の賃料環境は堅調に推移することが予想されます。
特に、住宅REITの保有物件に多いシングルタイプや、コンパクトタイプについては、1世帯あたりの⼈数が減少していることから需要が強く、賃料上昇の恩恵を受けやすいといえます。住宅REITの保有物件の稼働率は⾼⽔準で推移しています。賃料が上昇することで、賃料収⼊の拡⼤を通じた分配⾦⽔準の向上が期待されます。

マンション賃料インデックス(エリア︓東京23区)( 2009年Q1〜2019年Q2)

ホテル市況は今後のイベントに期待

ホテル関連のJ-REIT銘柄は、2019年は相次いだ⾃然災害や、新規ホテル供給の増加による需給環境悪化、⽇韓関係の悪化に伴う韓国⼈訪⽇客の減少などを背景にホテル需要が伸び悩み、関⻄地域を中⼼に客室単価が下落したことから業績悪化懸念が広がりました。その結果、投資⼝価格は軟調な推移となりました。
今後は、2020年に開催される東京五輪に伴うホテル需要の回復や、新規供給が落ち着くことによる客室単価の上昇に期待したいと考えています。

11⽉は外国⼈投資家が買い越しに転じる

2019年11⽉のJ-REITの投資部⾨別売買動向は、外国⼈投資家が196億円、⽣保・損保が117億円、ETFへの資⾦流⼊が⼤部分を占めると考えられる証券会社の⾃⼰売買部⾨が81億円の買い越しとなりました。⼀⽅、個⼈投資家が186億円、銀⾏が99億円、投資信託が67億円の売り越しとなりました。
外国⼈投資家は、2019年10⽉は売り越しに転じましたが、11⽉は再び買い越しに転じました。J-REIT市場の調整局⾯で投資意欲が再び⾼まったと考えられます。⼀⽅、買い越し基調が続いている⽣保・損保は引き続き買い越しとなり、国内投資家もJ-REIT市場を買い⽀えていることがうかがえます。

J-REITの主要投資部⾨別売買動向( 2018年12⽉〜2019年11⽉)

ETFへ継続して資⾦流⼊

投資部⾨別売買動向で、ETFへの資⾦流⼊が⼤部分を占めると考えられる証券会社の⾃⼰売買部⾨が今年は⼤きく買い越しています。2019年のJ-REITに投資するETFへの推計資⾦流⼊額の累計を⾒てみると、年間を通して資⾦流⼊が継続しており、J-REITに対する投資家の需要は強いことがうかがえます。

東証REIT指数とETFへの資⾦流⼊( 2019年1⽉4⽇〜2019年12⽉19⽇)

資産価値からみたバリュエーションは過去平均とほぼ同⽔準

堅調なファンダメンタルズの⼀⽅で、バリュエーション⾯では割⾼感はないと考えます。
市場全体のNAV倍率(物件の価値を時価で評価した1⼝あたり純資産と投資⼝価格の倍率)は、1倍を超えているものの、過去平均とほぼ同⽔準で推移しており、依然として割⾼な⽔準ではないといえます。

J-REITのNAV倍率の推移(⽉次)( 2002年2⽉〜2019年11⽉)

J-REITの分配⾦利回りと⻑期⾦利の利回り差は、拡⼤しにくい環境

2019年の東証REIT指数の分配⾦利回りと国債利回りとの差を⾒ると、2019年9⽉までは東証REIT指数の上昇が続き、分配⾦利回りは低下する⼀⽅、⻑期⾦利も低下したため利回り差は⾼い⽔準を維持していました。
10⽉以降は⻑期⾦利が上昇した⼀⽅で、東証REIT指数の上昇が続き、分配⾦利回りは低下したため、利回り差は縮⼩傾向にありました。しかし、11⽉以降は⻑期⾦利・東証REIT指数ともに⽅向感のない展開となっており、利回り差も不安定な推移となっています。
国内外の⻑期⾦利は、インフレ期待が弱いことから当⾯低⽔準で推移することが想定されます。引き続き、利回りを求める投資家の需要は強いとみられ、利回り差が拡⼤しにくい環境だと考えています。

東証REIT指数と国債との利回り差( 2018年12⽉末〜2019年12⽉19⽇)

2020年のJ-REIT市場は緩やかな上昇を想定

前述のように、都⼼オフィスや都⼼マンションなどの良好なファンダメンタルズを背景に、J-REIT各社の分配⾦の伸びが期待できます。バリュエーション⾯でも割⾼感はなく、低⾦利環境の中で相対的に⾼い利回りが安定的に期待できるJ-REITに対する、投資家の強い需要がうかがえます。
これらを下⽀え要因として、2020年のJ-REIT市場は、分配⾦成⻑を反映して緩やかに上昇する相場展開を想定しております。

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