5G経済の基盤となるインフラストラクチャー・リート

  • マーケットレター
  • 2019年08月

5G時代の幕開け

今後10年間にわたり、第五世代(5G)のネットワーク技術を装備した無線通信の拡がりが、ほぼ全ての経済セクターに大きな影響を与え、多大な通信インフラ投資が必要になると予想されます。
特に通信塔およびデータセンターの保有・運営会社は、経済を次のデジタル時代に移⾏させる重要な役割を担うこととなり、5G関連のインフラ投資拡大による恩恵を享受すると考えています。

5Gの概要および5Gが経済を変容させる理由

これまでも第4世代移動通信システム(4G)が導入されたことで、スマートフォンが高速でウェブにアクセスできるようになり、無線データ通信量が急速に増加しました(図1)。

図1:無線データ消費量は2年毎に倍増

無線通信業者は、ネットワークにかかる負荷を軽減するために、またさらに消費者の需要を満たすための設備更新を継続的に⾏っています。これらの無線通信事業者は、引き続き4Gの対象範囲を拡大することに加え、将来を⾒据え、5G通信網の整備を通じて、さらなるデータ通信速度の向上や関連設備の強化を図ってきています。一部の都市では今年から5Gの先⾏導入が始まっています。

5G技術はこれまでと⽐べて通信速度を大きく引き上げ、実質的にタイムラグをなくし、同時に電⼒消費を劇的に軽減します。有線の光ファイバー接続と同等のスピードを提供します。5G対応のスマートフォンは、2G世代のいわゆるガラパゴス携帯(フィ—チャーフォン)の270倍、現⾏モデルの約3倍のデータ通信を実現すると予想されています(図2)。

図2:5Gスマートフォンはフィーチャーフォンの270倍のデータを利用

5G通信網の配備のためには、従来型の大型の通信塔への投資ばかりでなく、⼈⼝密度の高い地域での通信容量を提供するために設置される、スモールセルと呼ばれる小型の基地局への投資を拡大する必要があると考えられています。これらの小型の基地局は大型の通信塔や、信号機や街路灯、屋上など既存の構造物に設置することが可能であり、かつ光ファイバー地下ケーブルなどを通じてデータセンターに接続されます。

これらの通信網が一旦配備されると、一部は既に実現しつつありますが、全く新しい商業用途への道が開かれるでしょう。

5Gの利用例

経済競争が5Gの緊急性を高める

無線データ通信を通じたコネクティビティ(IOTで重要になるモノとモノとの接続能⼒)の拡大は、これまでの経済成⻑に貢献しており、その重要性は5Gへの移⾏に伴いさらに高まるものと予想されます。たとえば世界有数の監査法⼈でコンサルタント会社のデロイトは、5G技術の早期導入と開発を先⾏して⾏った国は、10年以上にわたり世界をリードするGDP成⻑率を享受する可能性があると予測しました(1)。特に中国は、この可能性を認識し、早期に⽀配的な地位を確⽴するため、積極的に動いてきました。

2015年から2018年の間、中国は米国を240億米ドルも上回る資⾦を5G対応インフラに投資し、35万カ所に個別の通信塔施設を建設しました。これは同期間に米国で建設された施設の10倍以上に上ります。中国は現⾏の5年計画の下、5G関連だけで総額4,000億米ドルの投資を実⾏しつつあり、それは国内のインフラ需要を満たすためのみならず、標準必須特許の開発も目的としており、5Gが世界中に普及していくなかで、市場のリーダーとなる可能性があります。

相対的に投資が不⾜している米国では、このギャップを埋めるために投資を加速させる必要が高まっています。コンサルタント大手であるアクセンチュアは、今後、米国の無線通信会社は5G通信網の構築に約2,750億米ドルを投資し、それにより300万⼈の新規雇用が創出され、5,000億米ドルの追加経済効果がもたらされると推計しています(2)。

(1)「5G:10年間にわたりリードする可能性」、デロイト、2018年。
(2)「5Gは地方都市がスマート・シティになることをいかに⽀援できるか」、アクセンチュア、2017年1月。

5Gインフラ・リートへの投資

4G後期におけるデータ利用の急増、および5Gへの差し迫った需要を背景に、今後10年間にわたり通信インフラの能⼒拡大のために多大な投資が必要となると考えられます。これにより通信塔業界は直接的に恩恵を受ける⽴場にあり、米国の関連上場会社は市場において⽀配的地位を占めています。加えて、有線・無線の両方によるデータ通信量の急増は、データセンターに対する持続的な需要の原動⼒になると予想されます。

不動産投資信託(リート)の形態をとり、データセンターおよび通信塔を保有・運営する上場会社は、上場インフラ株および不動産株の両方の投資ユニバースに含まれます。それらの過去10年間にわたるセクター構成⽐率では、伝統的な不動産セクターとは大きく異なる新しい不動産タイプの占める割合が上昇しています。最初のデータセンター・リートであるDigital Realty Trustは2004年に上場しており、American Towerは2012年にリートに転換した最初の通信塔運営会社です。今日、通信塔リートおよびデータセンター・リートは、約1.1兆米ドルに上る時価総額を有する米国リート市場のほぼ4分の1を占めています(図3)。

また、世界全体でみると、通信インフラ(通信塔運営会社のみ)は上場インフラ株市場の約8%を占めています(3)。

(3) 出所:コーヘン&スティアーズ、FTSE。

米国リート:FTSE Nareit オール・エクイティ・リート指数は、総資産の50%以上が実物不動産を担保とするモーゲージ以外の適格不動産資産で構成され、かつ最低規模及び流動性の基準を満たす全ての税制適格リートを含みます。
グローバル・インフラ株:FTSE グローバル・コア・インフラストラクチャー50/50指数は、世界中のインフラ株及びインフラ関連株の時価総額加重指数です。構成銘柄の組入⽐率は、以下の3つの広範な産業セクターに応じて半年毎に調整されます。公益事業:50%、輸送:30%、パイプライン、衛星、通信塔を含むその他のセクター:20%。

【関連業種のご紹介】 通信塔:5Gの中核

5Gの中核通信塔は無線通信接続のための基盤インフラです。通信塔運営会社は通常、鉄塔・柱を保有し、多くの場合、下部に一区画の土地を有し、地下に未使用の光ファイバー・ケーブルを備えています。無線通信事業者は通信塔のスペースを賃貸し、送信装置やアンテナなどの機器を設置します。また通信塔運営会社は、これらの従来型の通信塔(マクロタワーとして知られます)に加え、到達範囲の狭く高周波の5Gシグナルに対応したスモールセル基地局を保有する場合もあります。

参入障壁

通信塔事業への新規参入に対しては、主に2つの障壁があります。①物件価値の保護を目的とする「景観法」に基づき、地方自治体は従来から、新規の通信塔に反対する傾向があります。そのため、無線通信事業者は多くの場合、土地利用規制をめぐる対⽴を回避するため、既存の通信塔(通信塔運営会社)に新規の機器を設置してゆくことになります。②通信塔の顧客は定着する傾向があり、既存の通信塔運営会社が操業している市場において、新規市場参入者が狙える⾒込み顧客はあまり多くありません。

キャッシュフロー特性

通信塔の賃貸借契約は通常、当初10年であり、その後は5-7年ごとに解約が可能です。テナントは契約終了時に98-99%の割合で更新するため、資産保有者に⽐較的安定したキャッシュフローをもたらします。また、賃貸借契約は一般的に物価に連動して賃料を毎年調整するエスカレーション条項を定めています。これらの要因により、通信塔運営会社は概して安定した収益を獲得しています。

成⻑の原動⼒

データ利用が増加しているため、既存ネットワーク・インフラは常に向上を求められ、通信塔業界の成⻑につながります。ブロードバンド移動通信の対象範囲を、これまで未提供だった地域に拡大することや、既存ネットワークに送信機器を追加することによる高密度化、高周波の5G信号の伝送を可能にすることなどが、通信塔の成⻑要因となります。通信塔運営会社にとって、賃料引き上げや、コロケーション(共同設置)、既存リース契約の変更の3つが収益成⻑要因となります。

無線通信事業者統合の影響

通信塔運営会社のリート価格はこれまで、無線通信事業者同士の統合計画に関する報道に敏感に反応してきました。例えば、SprintとT-Mobileの合併案についての報道は、合併に伴う余剰通信塔の賃貸借契約解約が予想されたため、通信塔運営会社のバリュエーションへの懸念を高めました。しかしながら、より⻑期的に⾒れば、5G通信網構築の緊急性に加え、合併提案を受けた相手方が全国的に対象範囲を拡大すると予想されることから、5Gへの投資が促進され、むしろ通信塔運営会社のファンダメンタルズがより強固となる可能性があると考えられます。

「企業例」
● American Tower:2012年にリートに転換、時価総額はSimon Property Groupを抜いて世界最大のリートになる。
● Crown Castle International:2014年にリートに転換、全米に約4万基の通信塔および6万マイルの光ファイバー網を保有。米国最大のスモールセル通信網運営会社。
● SBA Communications:全米50州、カナダ国内および中南米に通信塔資産を保有、2016年にリートとして登録。

「主要顧客」
● 無線通信事業者(Verizon、AT&T、Sprint、T-Mobile)
● 政府機関(警察、救急医療サービス)
● ブロードバンド・データ・プロバイダー/ケーブルテレビ会社

【関連業種のご紹介】データセンター:仮想化社会を支える物件の所有者

データセンターは、データ保管やクラウド接続に不可⽋のネットワーク機器や、サーバーを設置するために設計された何列ものラックを備えており、厳重に保護された倉庫施設です。これらの施設は、バックアップ発電機、産業用空調設備や取引先およびサービス・プロバイダーに繋がる光ファイバー接続など、最先端技術の装備を提供します。

参入障壁

データセンターの外部構造は単純で容易に建設できるものの、冷房設備、発電機や配線接続などコストのかかる複雑な内部のインフラには多額の初期投資費用を伴うことや、運営に専門知識を要することが高い参入障壁となっています。

キャッシュフロー特性

データセンターの賃貸借契約は通常、床⾯積に加えて電⼒消費量を基準としており、多くの場合、毎年賃料を引き上げます。賃貸借契約はテナントの規模に応じて5-10年といった⻑期にわたる傾向があり、複雑さと移転コストのためテナントの定着率は高水準となっています。新規の開発施設は建設完了前に顧客と契約が結ばれることが多く、データセンターのキャッシュフロー成⻑の主因となっています。

成⻑の原動⼒

データセンターの成⻑は、主に企業がクラウド・ベースのプラットフォームとしての利用や、他の取引先に接続するインフラとしてのニーズに⽀えられています。テナントは多くの場合、コロケーション(共同設置)を通じて、有機的なネットワークを形成しており、それを利用するテナントの増加によって、データセンターの価値が向上する構造的な特徴があります。5Gが普及するにつれて、テナントはより広い地域(エンドユーザーや光ファイバー・インフラに近接する地域)にデータ保管を分散しようとするため、その結果として生じるネットワーク効果の価値はますます高まる可能性があると考えています。

「企業例」
● CyrusOne:2012年に設⽴、世界中に45のデータセンターを保有。
● Digital Realty:米国および欧州に200以上のデータセンターを保有。
● Equinix:コロケーション・サービスの世界的リーダー、五大陸にわたる24カ国に200以上のデータセンターを保有。

「主要顧客」
● クラウド・サービス関連(Amazon、IBM、Microsoft、Oracle)
● インターネット関連(eBay、Facebook、Google、Netflix)
● ⾦融サービス関連(JPMorgan Chase、Morgan Stanley)
● 通信関連(AT&T、CenturyLink、NTTコミュニケーションズ)

投資家の皆様へ

通信インフラ関連企業は、5G構築への潜在的かつ多大な投資需要を背景に、投資家に魅⼒的な⻑期投資機会を提供すると考えられます。通信塔やデータセンターといったセクターは今や上場市場の一定の割合を占めるまでに成⻑し、情報経済に関連する投資可能な実物資産として注目される投資対象となっています。

不動産関連への投資においては、情報技術、物流または⼈⼝動態といった⻑期テーマの影響が強まっており、リート市場は、景気サイクルに影響されにくい資産クラスとなっていく可能性があると考えています。そのため、特に景気の不透明感が高まる環境の下では、リートはポートフォリオに分散効果をもたらす可能性が高まるとみています。

同様に、インフラ関連投資のなかでは、通信塔およびデータセンターは、景気サイクルや⾦利などのマクロ経済要因に対して相対的に影響度が低く、相対的に魅⼒的なキャッシュフローの成⻑特性を提供しています。そのため、これらのセクターは、インフラ関連投資の戦略において特に魅⼒的かつ重要な要素になると考えています。

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