米国優先リート市場の現状と見通し

  • マーケットレター
  • 2018年10月

堅調な経済指標を背景とした長期金利の上昇が相場の下落要因

2018年の米国優先リート市場は、年初からの米国長期金利の上昇を背景に軟調な相場展開でのスタートとなりました。中国が米国国債の購入の減額や停止を検討しているとの報道や市場予想を上回る経済指標を受けた利上げ期待の高まりなどが金利上昇の背景と考えられます。6月以降は、長期金利が安定したことや市場予想を上回る商業施設リートの業績動向などが支援材料となり、反発する展開となりました。しかし、9月に入ると景況感指数や賃金の伸びが市場予想を上回る内容となったことで再び長期金利が上昇基調となり、米国優先リート市場や債券市場は全般的に軟調な相場展開となっています。

今後の米国長期金利は緩やかな上昇を想定

米国の長期金利は、2018年に入り堅調な経済指標などを受けて上昇傾向にあります。米国長期金利は、労働市場の需給ひっ迫や堅調な米国の経済成長、FRB(米国連邦準備制度理事会)による米国債の再投資縮小などが、長期金利の上昇圧力となる可能性があると考えます。しかし一方で、インフレ率は引き続き2%程度の水準で推移するなか、FRBによる利上げペースは緩やかであること、米中を中心とする貿易摩擦問題、英国のEU(欧州連合)離脱をめぐる懸念やイタリアの財政に対する不安が安全資産とされる米国債への需要を高め、米国長期金利の上昇に歯止めをかける可能性もあるとみています。米国長期金利のボラティリティは短期的には高まる場面も想定されますが、上記を理由に、コーヘン&スティアーズ社では現時点において、2018年末における米国長期金利は3.25%程度、2019年末は3.50%程度と、緩やかな上昇を予想しています。

中長期的には景気拡大に伴う賃料上昇や稼働率の上昇などが支援材料

足元の米国優先リート市場は、米国長期金利の動向に左右されながら不安定な動きとなっています。ただし、米国長期金利の上昇は堅調な米国経済を背景とした動きとみており、底堅い経済成長や良好な雇用環境のもとで、米国の不動産に対する需要はおおむね新規物件供給を上回っている状況です。良好なファンダメンタルズを背景に米国リートが保有する物件の賃料や稼働率の上昇は、今後の米国リートの業績にとってプラス材料になるとみています。また、良好なファンダメンタルズにもかかわらず、米国長期金利の短期的な急上昇によって下落した米国優先リートは、バリュエーション面での魅力度が高まっています。米国優先リートの相対的に高い配当利回り(2018年9月末時点で6.7%)や対国債利回りとのスプレッド(利回り格差)などが支援材料になると考えます。加えて、2018年に入り、米国リート各社による優先リートの新規発行が減少しており、需給の改善といったテクニカル要因もプラス材料になるとみています。

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