インド中型株の市場見通し

  • マーケットレター
  • 2018年09月

2018年年初から大型株が堅調に推移するなか中小型株は上値の重い展開

2018年のインド株式市場は、規模別の株式指数により跛行(はこう)色が強い展開となりました。インドの主要株式指数であるS&P/BSE SENSEXインド指数(以下、インドSENSEX指数)は、2月から3月にかけて米国発の世界的な株価下落に加えて、2018年度政府予算案において一年超保有の株式に対するキャピタルゲイン税の新規導入が発表されたこと、米中貿易摩擦の激化に対する警戒感の高まりなどを背景として軟調な展開となりました。しかし、4月以降は鉱工業生産指数やGDP(国内総生産)成長率などから幅広い景気回復が確認されたことや、モンスーンの降雨量と農作物の作付けが順調な中で政府は農作物の最低購入価格を引き上げると発表し、農村部経済の押し上げ効果が見込まれることから、企業業績の拡大期待が膨らみ史上最高値を更新して上昇しました。

一方、中小型株は、上述の相場変動要因の影響を同様に受けるとともに、①市場のボラティリティ上昇に伴うリスク回避の動き、②インド国内籍投資信託(以下、国内投信)の規模別投資対象表示への統一基準の導入、③コーポレート・ガバナンスへの懸念、などから上値の重い展開となりました。

まず①については、地政学リスクの高まりや米国の政策金利の引き上げに伴う新興国からの資金の引き揚げ懸念など不透明感が高まる中、投資家はリスク回避の手段として中小型株よりも相対的にリスクが低い大型株を選好したと考えられます。②に関しては、インド金融当局が、受益者への説明を明確にするため、国内投信が示している「大型株」や「中型株」などの規模別投資対象が全ての国内投信で統一されるように通達を発表しました。通達の中には流動性等も鑑み「大型株」ファンドは大型株を80%以上組み入れることが求められる一方、「中型株」「小型株」ファンドは対象規模銘柄の組み入れは65%以上と定められています。これを受けて、国内投信においてファンドの合併や名称変更、資産配分の見直し等の対応が行なわれました。この対応は、2018年6月末までにほぼ完了したとみられています。①および②を受けて、中小型株から大型株への資金移動の動きがみられ、流動性が相対的に低い中小型株からの資金流出により中小型株の株価が押し下げられたと考えられます。

また、③について、企業に対するコーポレート・ガバナンスの強化が求められる中で、今年(2018年)1月から5月の間に中小の上場企業約30社で会計監査人が退任したと現地メディアで報じられたことから、中小型株の情報開示に対する不信感が高まりました。これらの要因が複合的に重なり、中小型株はインドSENSEX指数と異なる値動きとなりました。

モディ首相就任後、中型株は大型株を上回る上昇

モディ氏が首相に就任した2014年以降、中型株の株価指数であるNSE中型指数は、大型株の株価指数であるインドSENSEX指数よりも大きく上昇しました。その背景として以下の要因があると考えられます。①モディ首相が主導する経済構造改革が内需主導で高い経済成長をもたらすとの期待を受け、中型株がその恩恵を大きく受けると期待された。②株式市場の上昇期待を受けて2014年度から国内の株式投信への資金流入も大幅に増加したが、国外の機関投資家と比較して国内の株式投信は中型株などへ積極的に投資すると考えられており、この資金流入も中型株の上昇に寄与した。これらを受けて、モディ首相就任後、中型株は相対的に堅調に推移しました。

中型株の今後の予想利益成長率は高い

2016年度および2017年度は、インド政府による高額紙幣廃止策の実施とGST(物品・サービス税)の導入による一時的な経済活動の落ち込みの影響から企業業績は全般に伸び悩む中、特に中型株に対して業績への悪影響が強まりました。しかし、GSTの導入は企業の税務関連の負担を大幅に軽減する政策であり、導入に伴う一時的な混乱が解消するにつれて企業の事業活動はより円滑に進んでいくと考えられます。

モディ首相が主導したこれらの政策により、納税などを回避して非公式経済の中で事業活動をしている非上場の中小企業は、上場企業と同一ルールの下で公平な競争を強いられます。上場している中小企業は、これまでの不公平な競争の影響が軽減されると考えられることに加えて、内需系企業が多いことから国内経済の効率化が業績拡大に結びつきやすいこともあり、モディ首相の政策が今後は中型株の企業業績の押し上げ要因として作用すると考えられます。したがって、中型株の2018年度および2019年度の一株当たりの予想利益の上昇率は大型株と比較して高い成長率が見込まれています。

モディ首相の経済構造改革への取り組みが進展し、インド経済のファンダメンタルズが一段と改善するとの期待が膨らむことにより、中型株は大型株を上回る上昇が予想されます。さらに、国民の間で月次で自動的にファンドへ投資するファンド累積投資の利用拡大が進んでいる(2018年7月、前年同月比で約53%増加)ため、国内の株式投信への資金流入は今後も継続して伸びることが見込まれています。

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