トルコ・リラ急落の影響

  • マーケットレター
  • 2018年08月
~先進国、新興国とも当面の影響は限定的~

程度は限定的ながらも、トルコ向け債権の多い欧州発の「質への逃避」が生じやすい

トルコと米国との対立激化を契機に、トルコ・リラが急落しています。世界の金融市場への当面の影響としては、先進国、新興国それぞれが考えられますが、その程度はいずれも限定的と思われます。

先進国については、トルコ向け債権が多い、あるいはトルコ向け債権の比率が高い欧州の国々、具体的にはスペイン、イタリア、フランスの銀行の不良債権の増加が懸念されます。ただし、トルコ向け債権の比率は最大のスペインでも5%以下にすぎません。また、かつてのギリシャの債務問題とは異なり、トルコはユーロ圏のメンバーではなく、トルコの危機がユーロ離脱の思惑を通じて、ユーロ圏の危機に直結するわけではありません。

ただし、イタリアではポピュリスト政党による放漫財政への懸念も強いだけに、金融・財政不安が相まって、イタリア国債が敬遠され、「質への逃避」からドイツ国債が選好される流れが一段と強まる可能性は否定できません。経験的には、欧州でドイツ国債が選好されるような局面では、米国債も選好される傾向が強く、米国の債券利回りにも低下圧力が働きやすいと考えられます。

為替は総じて米ドル高で推移すると考えられますが、程度は限定的にせよ、世界的に金融市場が不安定化する中では、リスク回避の円高が同時進行する可能性に留意しておくべきでしょう。

トルコは個別の特殊事例で新興国全体には波及せず

新興国については、トルコと同様に経常赤字が多額でインフレ率の高い国の通貨が、連想から売られやすくなる可能性は否めませんが、実際に両指標がどちらもトルコ並に悪化している主要新興国は他にアルゼンチンくらいしかありません。政治的要因から中央銀行の独立性も疑われているトルコは個別の特殊事例と考えてよさそうです。

新興国全体の資金流出入への影響度が圧倒的に大きいのはやはり米国の金利動向です。米国の利上げは引き続き緩やかなペースにとどまりそうなことから、新興国全体からの資金流出が現実問題として直ちに懸念される事態にはならないと考えられます。

以上

当資料のお取扱いにおけるご注意
  • 当資料は、ファンドの状況や関連する情報等をお知らせするために大和アセットマネジメントにより作成されたものであり、勧誘を目的としたものではありません。
  • 当資料は、各種の信頼できると考えられる情報源から作成していますが、その正確性・完全性が保証されているものではありません。
  • 当資料の中で記載されている内容、数値、図表、意見等は当資料作成時点のものであり、将来の成果を示唆・保証するものではなく、また今後予告なく変更されることがあります。また、記載する指数・統計資料等の知的所有権、その他の一切の権利はその発行者および許諾者に帰属します。
  • 当資料中における運用実績等は、過去の実績および結果を示したものであり、将来の成果を示唆・保証するものではありません。
  • 当資料の中で個別企業名が記載されている場合、それらはあくまでも参考のために掲載したものであり、各企業の推奨を目的とするものではありません。また、ファンドに今後組み入れることを、示唆・保証するものではありません。