ブラジル金融政策

  • マーケットレター
  • 2018年06月
~政策金利は据え置き。今後の利上げ余地を残す~

ブラジル中央銀行は政策金利を据え置くも、今後の利上げ余地を残す

ブラジル中央銀行は6月20日(現地)、政策金利を全会一致で据え置きました。市場では、大半が政策金利の据え置きを予想していました。

中央銀行は前回の金融政策委員会の声明文でも、今後の金融政策運営について、政策金利の据え置きが適切であるとの見方を示していました。

声明文では、5月下旬に発生したトラック運転手のストライキによって生じた交通機関のまひが、インフレ率に一時的な上昇圧力をもたらすとしながらも、基調としてはインフレ率が低い水準にとどまっていると述べました。また、国内経済については、ストライキの影響で経済活動の進展を評価することが難しくなったとしつつ、より緩やかなペースで景気回復が継続すると述べました。対外環境については、グローバル金融市場の見通しが一段と厳しくなっているという見方を維持しました。さらに、最近のブラジル・レアルの下落については、インフレ率に上昇圧力をもたらしうるとしました。

今回の金融政策委員会では、足元のインフレ率が中央銀行のインフレ目標の範囲(3%~6%)の下限を下回って推移していることに加え、今後の物価や経済の状況を見極めるため、政策金利を据え置いたとみられます。

今後の金融政策については、声明文での具体的な言及はありませんでした。中央銀行は利上げなど今後の政策発動余地を残したと考えられます。

当社では、今後のインフレ見通しが上昇していけば、中央銀行は年内に政策金利を引き上げると見込んでいます。

景気は回復基調だが、国内外のリスク要因には注意が必要

当社では、ブラジル経済は景気回復期にあり、インフレ率は景気回復のペースに合わせて中央銀行の目標範囲内に収束していくとみています。

ただし現在、上記の見通しに対するリスク要因が国内外で高まっており、足元のブラジル・レアルは不安定な推移を続けています。

国内のリスク要因としては、10月に控える大統領選挙があります。有力候補がおらず、各候補の政策姿勢も不透明な中で、現政権が進めていた財政再建路線が今後も継続されるのかなど、将来の政策の方向性が見通しにくくなっています。

国外のリスク要因としては、新興国からの資金流出懸念があります。米国で利上げが緩やかに進む中で、新興国の対米金利差は縮小しています。米国の経済指標が市場予想から上振れするなど、利上げペースの加速が一段と市場で意識されれば、新興国からの資金流出懸念が高まる可能性があります。

これらのリスク要因の高まりは、ブラジル・レアルの下落を通じて、ブラジルのインフレ見通しを押し上げる可能性があります。中央銀行はこれまで、インフレ率が高まらない中で政策金利を低い水準にすることにより、ブラジルの景気回復を下支えしてきましたが、ブラジル・レアル安によって中央銀行が意図しない利上げに追い込まれた場合は、景気回復ペースを鈍化させる懸念があり、注意が必要です。

不透明感が和らげば景気回復と高いキャリー収入がブラジル・レアルの下支え要因に

ブラジル・レアルは、グローバル金融市場や大統領選挙の見通しが不透明な間は不安定な推移が続くと考えられます。中央銀行は、ブラジル・レアルの下落圧力を緩和するため、通貨スワップを用いて再三の為替介入を行っています。短期的には、中央銀行の通貨防衛姿勢がブラジル・レアルの支援材料になることが考えられます。また、長期的には、国内外の不透明感が和らいでいけば、ブラジルの景気回復や相対的に高いキャリー(利息)収入がブラジル・レアルの下支え要因になることが期待されます。

以上

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