ブラジル株式市場の見通し

  • マーケットレター
  • 2018年06月
~内憂外患も、不透明要因が和らげば反発を見込む~

国内外の不透明要因から不安定な状況が続くブラジル株式市場

2017年以降のブラジル株式市場は、景気回復や構造改革への期待などから、大きく上昇する展開となってきましたが、5月下旬より下落に転じています。また、米国金利の上昇を背景とした新興国からの資金流出懸念が高まったことが主な要因として、ブラジル・レアルも軟調に推移しています。

当社では足元の株価や通貨の下落の主要因について、3つの「不透明感」が原因にあると考えています。①米国の利上げペースに対する先行き不透明感、②10月に予定されている大統領選挙をめぐる不透明感、③トラック運転手による大規模なストライキが及ぼす景気への不透明感、です。

特に5月下旬は、ストライキに対する政府と国営石油会社ペトロブラスへの対応が失望されたことも加わり、ブラジル株式市場は大きく調整しました。ブラジルの代表的な株価指数であるボベスパ指数におけるペトロブラスの構成比率は高く、同社株の下落に連れられて株式市場全体が調整する格好となりました。

米国の利上げペース加速はブラジル・レアルの重しに

米国金利の上昇により新興国の対米金利差が縮小したことで、新興国からの資金流出懸念が高まったことが主な要因となり、ブラジル・レアルも軟調に推移しています。

ブラジル中央銀行は5月16日(現地、以下同様。)に、市場が利下げを予想する中、政策金利の据え置きを決定しました。今回の政策金利の据え置きは、急速な通貨安によって将来的なインフレ率の上昇リスクが高まった点が政策判断において重視されたものとみられます。

今後、米国の経済指標の予想比上振れなどから、米国の利上げペースの加速が一段と市場で意識され、さらなる米国の金利上昇とブラジル・レアル安につながるリスクには注意が必要です。ただし、ブラジルの経済・財政面での健全性は増しており、また政策発動余地も残されていることから、過去と比べて外的ショックに対する耐性は強まっていると考えています。

大統領選挙をめぐる不透明感は手控えムードを誘う

大統領選挙については、5月には候補者の中で一定の人気を誇っていたバルボザ元連邦最高裁判所判事が不出馬の意向を示すなど動きがあったものの、引き続き予測が難しい状況となっています。

最新の世論調査では、収監されたルラ元大統領の支持率がトップとなっており、その他の候補者の中では、極右のボウソナロ氏の支持率が高い一方で、最も金融市場寄りの候補者として投資家から評価されているアルクミン氏の支持率が低迷していることが明らかになっています。

最終的な立候補者の決定は7月下旬から8月上旬になることが見込まれ、目先はこうした大統領選挙をめぐる不透明感が投資家の手控えムードを誘うとみられます。

トラック運転手によるストライキは景気に短期的な悪影響を及ぼす恐れも

2017年7月に、国営石油会社ペトロブラスは、国際市況に応じて燃料価格を日々決定する制度を導入しました。その後、米国金利の上昇によってブラジル・レアルが大幅安となったことや、原油価格が大きく上昇したことを受けて燃料価格は高騰しました。また、政府による燃料税の引き上げも行われました。

こうした燃料価格高騰に対抗して、トラック運転手が5月21日にストライキを開始し、道路封鎖やガソリン流通の停止などが発生しました。物流網が全国的にまひしたことで、ブラジルの主要輸出品である農畜産品への被害が発生するなどの混乱が生じました。

状況打開を図るべく、政府は軽油価格の引き下げを決定しました。同方針がペトロブラスの収益圧迫懸念につながったことに加え、同社のコーポレートガバナンス(企業統治)に対する懸念も高まり、同社の株価は大幅に下落しました。また、同社最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれたこともネガティブ視されました。

最終的には、燃料価格の見直し頻度を最低30日にするなどの対応策が示されたこともあり、ストライキはひとまず収束しました。また、6月4日に同社の新CEOには最高財務責任者(CFO)であったモンテイロ氏が据えられる方針となったことで、株式市場はポジティブな反応を示しています。加えて、ブラジル政府は燃料価格の新決定方針を協議していましたが、現行から急進的には変更しないとの報道があったことも好材料です。ただし、同ストライキが2018年のブラジル経済の成長率にネガティブな影響を与えることは懸念され、注意が必要です。

不透明要因が和らげば、株式市場は上昇に転じると見込む

ブラジル株式市場は5月下旬より下落基調ですが、投資家心理が落ち着くにつれて株式市場が反発に転じる可能性は高いとみています。

現在のブラジル経済は過去2年のマイナス成長から脱し、景気サイクルにおいてまだ回復初期の段階です。インフレ率は低位で安定していることから金融引き締め策に転じる可能性は低いと見込まれ、緩和的な金融環境が景気回復を支えるとみています。大統領選挙の行方やストライキによる短期的な景気への影響は懸念されますが、ブラジル経済はいまだ力強い回復の途上にあると考えています。企業業績も堅調さを維持しており、不透明感が和らぎ回復に向かう景気や企業業績に再度注目が集まれば、株式市場は上昇基調に転じると見込んでいます。

以上

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