トルコ・リラは一時最安値を更新

  • マーケットレター
  • 2018年04月
~目先は金融引き締め、長期的には経常赤字体質の改善が求められる~

トルコ・リラは、3月以降急速に下落し、足元では一時対米ドルでの最安値を更新

トルコ・リラは、3月以降急速に下落し、足元では一時対米ドルでの最安値を更新しました。この背景には、市場のリスク回避姿勢の高まりや、市場関係者からの信頼が厚いシムシェキ副首相が辞任するとの観測、シリア情勢の緊迫化などが挙げられます。

トルコの経常赤字は他の主要な新興国と比較しても大きく、赤字の埋め合わせを海外からの証券投資資金の流入に依存しています。そのため、トルコ・リラは市場のリスク・センチメントの影響を受けやすく、市場のリスク回避姿勢が高まる場合には、海外からの資金流入が細り、通貨安圧力が高まる傾向にあります。3月以降、米中の貿易摩擦の強まりに対する懸念などを背景に市場のリスク回避姿勢が高まる中、経常赤字による対外バランスのぜい弱性が意識されて、トルコ・リラは下落しました。

副首相の辞任観測やシリア情勢の緊迫化がトルコ・リラ安の材料に

4月に入ると、現地メディアが、シムシェキ副首相が辞任する意向と報じたことで、トルコ・リラ安圧力がさらに高まりました。市場や経済に精通するシムシェキ副首相は、エルドアン大統領が独裁色を強める中にあっても、政府に対する市場参加者の信頼を維持する要の役割を果たしてきました。もしシムシェキ副首相が辞任して、エルドアン大統領に忠実な人物が副首相に就任する場合、政府が市場や経済の不均衡を省みずに高成長を追求することで、インフレの加速とトルコ・リラ安をまねき、結果としてトルコ経済が悪化することが懸念されます。今回の報道により、こうしたリスクが懸念されて、トルコ・リラはさらに下落しました。

さらに足元では、シリア情勢の緊迫化もトルコ・リラ安圧力となっています。シリアのアサド政権が化学兵器を使用した疑惑に対して、米国のトランプ大統領がシリアに対して軍事行動を起こす意向を示唆したことで、中東の地政学リスクへの懸念が高まり、トルコ・リラは続落しました。

目先はトルコ中央銀行が金融引き締めに動くかどうかに注目

今後のトルコ・リラをみる上で、4月25日(現地、以下同様)に予定されている金融政策委員会でトルコ中央銀行が金融引き締めに動くかどうかに注目しています。ユルドゥルム首相は11日に「中央銀行は金融政策について責任を負っている。トルコ・リラを防衛し、経済を支援する必要がある場合には必要な措置をとるであろう。」と述べています。このように、トルコ政府もトルコ・リラ安の進行について警戒を強めており、通貨安を食い止めるためには金融政策の一段の引き締めもやむを得ないと考えているとみられます。もしトルコ中央銀行が金融引き締めに動けば、トルコ・リラが持ち直す契機になる可能性があります。

長期的には経常赤字体質の改善が求められる

長期的な視点では、トルコ・リラの安定のためにはトルコの経常赤字体質の改善が求められますが、大幅な経常赤字となっているいびつな対外バランスを好転させるためには、引き締め的な財政・金融政策が必要とされます。しかし、2019年11月に予定されている総選挙での勝利を確かなものにしたいエルドアン大統領は拡張的な財政政策を実施し、緩和的な金融政策を求める傾向にあります。そのため、経常赤字の改善は現時点ではあまり期待できず、トルコ・リラが市場のリスク・センチメントの影響を受ける不安定な状況が続きやすいとみています。

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