米国株式市場が急落

  • マーケットレター
  • 2018年03月
~米国・中国間の貿易摩擦の深刻化を懸念~

米国株式市場が急落

米国株式市場は2018年3月22日(現地、以下同様)に大幅下落となりました。S&P500指数が▲2.52%、NYダウが▲2.93%となりました。米国トランプ大統領が、中国による知的財産権侵害を理由に中国製品約500億米ドルに対して高い関税を課す制裁措置を正式に発表したことから、経済規模で世界1、2位の米国・中国間の貿易摩擦が深刻化することへの懸念が急速に高まったことが嫌気されました。

米中貿易摩擦、懸念が高まるも最悪シナリオは回避

今回の米国の発表に先立ち、2017年8月、USTR(米国通商代表部)はトランプ大統領の指示の下、米国通商法301条に基づき、主に中国による知的財産権侵害の実態調査を始めると発表していました。最近は、調査結果に伴う制裁措置を検討しているとの報道が多く、市場の注目材料となっていました。

3月22日にトランプ大統領が署名した覚書に関して、現段階で明らかになっている内容としては、以下のような点があります。

(1) 航空宇宙やIT(情報技術)、機械などの産業を含めた、中国政府の不公正な産業支援策を受ける約1300品目、500億米ドル近い規模の中国製品に対して25%の追加関税を課すこと
(2) 中国企業の米国投資に関して制限を設けること
(3) WTO(世界貿易機関)に対し中国の知的財産権侵害について提訴すること

事前の欧米各種メディアの報道では、中国企業の米国投資への制限は予想されていたものの、関税引き上げの対象に関しては、300億米ドル程度との見方もあったため、事前予想よりも課税の範囲が大幅に広がったことに対し、市場では警戒感が高まった模様です。

ただし、今回の覚書の署名によって、即日、制裁措置が発動されるわけではありません。15日以内に関税対象品目リストを公表し、関係方面と協議した上で最終的なリストを確定し、適切であれば関税を課す流れとなっています。また、中国企業による米国への投資制限も、60日間の調査期間が設けられています。

つまり、中国と交渉する期間を残しているともいえ、中国が即時に大規模な報復措置に動き出すリスクが緩和されているとも考えられます。一部の事前観測では、トランプ大統領が強力な大統領権限を行使し、直ちに課税に踏み出すとの見方もありましたが、結果的には、そのような最悪シナリオは回避されたといえます。

また、1300品目で500億米ドルという関税対象に関しても、最大の場合と考えられ、実際の対象範囲は狭くなる可能性もありそうです。そういった点を考慮すると、今回の発表も、最初に高めの球を投げて相手の譲歩を引き出すというトランプ流の交渉術の一環とみることができるかもしれません。

米国株式市場は、徐々に落ち着きを取り戻すと想定

米国の制裁措置の発表を受けて、中国が何らかの対抗措置を取る可能性があります。今後は対抗措置の有無やその内容、それに対する米国の対応などを注意深く見守る必要があります。もっとも、上述のように、米国の制裁措置に関しても、即日の発動はされずに、対象品目リストの作成期間が設けられるなど交渉の余地が残されていること、貿易摩擦の深刻化は、それぞれ自国の景気・企業業績にも悪影響が大きくなる可能性が高いことなどを考え合わせれば、市場が最も懸念する「貿易戦争」といった最悪のシナリオにまで発展する可能性は低いと思われます。よって、今回の貿易摩擦深刻化の懸念は、具体的な内容や対応が発表されるとともに、徐々に沈静化に向かうと考えられます。そうなれば、景気・企業業績のファンダメンタルズは堅調な状況が続いていること、テクニカル指標・バリュエーション指標などでは割高感が後退していることなどに投資家の関心が集まり、米国株式市場は落ち着きを取り戻すと想定します。

以上

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