最近のトルコの為替・金利動向と今後の見通し

  • マーケットレター
  • 2017年11月

対米関係の悪化などをきっかけにトルコ・リラの下落が加速

9月以降、トルコ・リラ安と債券安が急速に進んでいます。この背景には米国の利上げ期待の高まりによる米ドル高やトルコと欧米諸国の関係悪化などが挙げられます。

10月にはトルコと米国の間のビザ(査証)発給業務停止による対米関係の悪化が懸念材料となり、トルコ・リラの下落が加速しました(マーケットレター「トルコと米国のビザ発給業務停止に関する報道を受けて(2017/10/10)」参照)。

また、エルドアン大統領への権力の集中やトルコ国内の人権問題を背景に、EU(欧州連合)からの支援金減額の可能性が報道されたことで、米国だけでなく欧州との関係の悪化も懸念されました。

さらに、トルコ・リラ安が進んだ要因としては、エルドアン大統領によるトルコ中央銀行への政治介入も挙げられます。外貨建ての対外債務が多い新興国において、通貨が大幅に下落するような場合、中央銀行は利上げや為替介入などにより、通貨の防衛をはかる傾向があります。しかし、エルドアン大統領は「高い金利が高いインフレを引き起こしている」との見解を強く主張し、これまで中央銀行による利上げをけん制してきました。11月17日(現地、以下同様)には、エルドアン大統領が上記の見解を再び主張したことで、中央銀行の独立性への懸念が高まり、通貨安がさらに進む形となりました。

トルコ中央銀行は実質的な利上げにより通貨防衛姿勢を強める

このような状況下、トルコ中央銀行は11月21日、「後期流動性貸出金利」以外での資金供給を停止することを発表しました。これまでは複数の資金供給手段を用いて、加重平均資金貸出金利(貸出金利の平均値)を12.0%程度に誘導してきましたが、今回の対応により、加重平均資金貸出金利は後期流動性貸出金利と同水準の12.25%に上昇しました。これは実質的に0.25%ポイントの利上げが行われたことに等しく、中央銀行は通貨防衛姿勢を強めたとみられます。

政策金利自体を積極的に引き上げなかったことは、利上げをけん制してきた政権に一定の配慮を示したもので、中央銀行の独立性への懸念は依然として残ります。ただし、市場参加者は今回の対応に一定の評価を与えたとみられ、政策発表後のトルコ・リラは落ち着きをみせています。

欧米諸国との政治的関係や中央銀行の動向を注視する必要

今後も欧米諸国との政治的関係や政府関係者の発言次第で、トルコ・リラおよび国債金利が大きく変動する可能性があり、状況を注視していく必要があると考えています。足元では、エルドアン大統領とトランプ米大統領の電話会議を受けて、対米関係悪化の懸念が後退する兆しが見えてきています。

トルコの国内経済については、政府による財政刺激策や欧州向けの輸出により堅調に推移している反面、急速に進んだトルコ・リラ安によるインフレ圧力の顕在化が懸念されます。このため、通貨安とインフレ圧力に対処するための中央銀行の次の一手も注視する必要があると考えています。また、トルコの政府高官から「インフレが悪化した場合、中央銀行はいつでも利上げができる」との発言が出たことは、トルコ・リラにとってプラスの材料だと考えられます。

トルコ・リラは高金利通貨であることから、中央銀行の通貨防衛姿勢により、通貨の安定性が維持できれば、トルコへの資金流入が再び強まってくると考えられます。

以上

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