ブラジル金融政策

  • マーケットレター
  • 2017年07月
~利下げを継続。ブラジルの景気回復と社会保障改革法案の動向に注目。~

中央銀行は利下げを継続

ブラジル中央銀行は7月26日(現地、以下同様)、政策金利を1.00%ポイント引き下げ、9.25%とすることを決定しました。利下げの決定は全会一致で行われました。2016年10月以来の実施分を合わせると合計5.00%ポイントの利下げ幅となります。

今回の決定は大方の市場予想通りの結果となりました。インフレ率(前年比)が中央銀行のインフレ目標の範囲(3%~6%)の下限近辺と、物価の伸び率が落ち着いてきていることが利下げの背景です。政治に不透明感はあるものの、景気回復を支援する金融緩和政策は継続となりました。

声明文は想定よりもハト派なため、株式市場や債券市場にとっては追い風か

今回のCopom(金融政策委員会)の声明文においては、直近政府から発表された燃料関連税引き上げによる物価上昇予想があるにも関わらず、そのことには言及しませんでした。また、当社マーケットレター「ブラジルの政策金利引き下げについて(2017/6/1)」でお伝えした中央銀行が政策金利の引き下げ幅を縮小させていく用意についての言及が今回は取り下げられました。今回の利下げ幅は市場予想通りでしたが、このように声明文の内容がよりハト派なため、今後の株式市場や債券市場にとって好感されやすい内容と考えられます。

ブラジルの景気回復と社会保障改革法案の動向に注目

今後の金融市場に影響を与えるテーマとしてブラジルの景気回復と財政健全化に向けた社会保障改革法案の動向に注目しています。

ブラジルの2017年1-3月期GDP(国内総生産)成長率は前期比で9四半期ぶりにプラスになるなどブラジル経済は不振から脱しようとしています。ブラジル経済はこれまで景気低迷と高インフレに苦しんできました。今後は、インフレ沈静化を受けて利下げを行うことで景気を刺激し、景気の安定を受けた通貨の安定がインフレ安定につながるかどうかが重要になってくると考えます。

財政健全化に向けた構造改革の動向に関してですが、ここもとのブラジルの政治情勢を振り返ると、7月11日には議会上院で労働規制改革法案が可決されています。テメル大統領の汚職隠ぺい疑惑等を受けて、ブラジルの構造改革が停滞することが懸念されていましたが、改革を進める議会の意志の強さが確認されたことは評価でき、社会保障改革法案の成立にも期待がもてます。

ただし、ブラジルの政局は依然として不透明な状況です。8月2日には議会下院において、大統領の汚職疑惑についての裁判を開始するかどうかの投票が予定されています。また、投票の結果、裁判の開始が回避されたとしても、大統領は他の容疑で再び起訴される可能性が高いとみられています。

こうした状況では、連立政権内部の政党が政権を離脱する動きが強まる恐れや、社会保障改革法案の審議・採決が先送りされる懸念が高まります。政府や議会が改革を進める意志は強いとみられるものの、政局の動きや、それを踏まえた今後の財政再建の行方を注視していく必要があると考えています。

政府や議会が社会保障改革などの構造改革を着実に進める場合は、ブラジル経済に対する信認改善や利下げによる景気回復と相まって、ブラジル・レアルの下支えになると期待されます。

以上

下記のリサーチでは、直近のブラジルに関するテーマやその背景などをお伝えしています。

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