ブラジルのテメル大統領の汚職疑惑

  • マーケットレター
  • 2017年06月
~政局の混乱を踏まえた財政再建の行方に注目~

収賄の容疑でテメル大統領を起訴するも、金融市場は落ち着いた動き

6月26日(現地、以下同様)、ブラジルの検察当局が収賄の容疑でテメル大統領を最高裁判所に起訴したと報道されました。報道によると、ブラジルの大手食肉加工会社から賄賂を受け取った嫌疑が大統領にかかっています。

これまでもテメル大統領は汚職隠ぺいへの関与等に対して疑惑が持たれていましたが、昨年同氏が大統領に就いて以来、初めて正式に起訴されました。

テメル大統領はこれらの疑惑を一貫して否定しており、大統領職を続投する意思を示しています。

今年5月にテメル大統領の汚職隠ぺい疑惑が報じられた際には、テメル政権への不信感からブラジル金融市場は全般的に大幅に下落しましたが、その後は、為替、株式、国債はおおむね横ばいで推移しています。

今回の報道後、27日の金融市場は、5月に比べると、落ち着いた動きをみせています。ブラジル・レアルは対円ではほぼ横ばいとなり、対米ドルでは約0.6%の下落となりました。また、株式市場の代表的な指数であるボベスパ指数は約0.8%の下落、債券市場では10年国債の金利は約0.10%ポイントの上昇(価格は下落)となっています。

最高裁による起訴の受理は回避される見込みも、政局の混乱は続く模様

検察による起訴は行われたものの、最高裁が起訴を受理し、裁判を開始するには、ブラジル議会下院で3分の2の賛成が必要となっています。

連立を組む政党の中には政権離脱を検討している政党もありますが、議会下院はテメル大統領を支える連立与党が多数を占めており、最高裁による起訴の受理は回避される見込みです。

しかし、テメル大統領には複数の汚職等の嫌疑がかけられていることから、今回の収賄罪での起訴の受理が回避されたとしても、別の嫌疑で再び起訴される可能性は高く、政局の混乱は続きそうです。混乱が続く中、低迷しているテメル大統領の支持率の回復は難しいと考えられます。

政局の混乱を踏まえた財政再建の行方に注目

ブラジルの今後を見る上で、テメル大統領の進退問題よりも、社会保障改革法が成立するかどうかが重要だと考えています。

ただし、今回のテメル大統領の起訴を受けて、連立政権内部の政党が政権を離脱する動きが強まる恐れや、社会保障改革法案の内容が後退する懸念などもあり、こうした政局の動きも含めて、今後の財政再建の行方を注視していく必要があると考えています。

政府や議会が社会保障改革などの構造改革を着々と進める場合は、ブラジル経済に対する信認改善が景気回復につながり、ブラジル・レアルの下支えになると期待されます。

以上

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