南アフリカの格下げ

  • マーケットレター
  • 2017年06月
~ムーディーズは格下げも、投資適格級を維持~

格下げながら、投資適格を付与

6月9日(現地、以下同じ)にムーディーズは、南アフリカの自国通貨建長期債務格付けおよび外貨建長期債務格付けを「Baa2」から「Baa3」へそれぞれ1段階引き下げることを発表しました。格付け見通しについては、「ネガティブ」としています。発表文では、南アフリカの制度的枠組みが弱まりつつあることや政治的不透明感、構造改革が進まないことを背景に成長見通しが弱まっていること、また財政の悪化懸念などが格下げの背景にあるとしました。

ムーディーズは、ズマ大統領が内閣改造を断行し、財務大臣を務めていたゴーダン氏を更迭し、後任にズマ大統領に近い人物とみられているギガバ氏を任命したことを受けて4月3日に南アフリカの格付けを格下げ方向で見直すことを発表していました。そのため格下げ自体は広く予見されていたことや投資適格級が維持されたことを背景に南アフリカ金融市場への影響は限定的となりました。

与党内での権力闘争が激化

内閣改造でゴーダン氏を更迭し同国の格付け引き下げを引き起こしたことから、ズマ大統領には退陣を求める声が強まっています。5月にも与党アフリカ民族会議(ANC)の全国執行委員会で否決されたものの、ズマ大統領に対する不信任動議が議論されるなど、ANC内での対立が激化しています。ズマ大統領の任期は2019年までとなっていますが、2017年12月には次期ANC党首を決める選挙が予定されています。次期ANC党首が次期南アフリカ大統領となることが見込まれており、事実上の大統領選として注目を集めています。ズマ大統領は後任に、元妻であるドラミニ・ズマ氏を推している一方、南アフリカ最大級の労働組合であり、ANCの主要支持母体である南アフリカ労働組合会議(COSATU)はラマポーザ副大統領への支持を表明しており、選挙まで激しい権力闘争が繰り広げられるとみられています。

当面は「政治の時間」が続くとみられ、慎重な見方が必要

既に南アフリカの自国通貨建ておよび外貨建て債務格付けを投機的水準としている格付会社のフィッチ・レーティングスは見通しを「安定的」としていますが、ムーディーズおよび格付会社のスタンダード・アンド・プアーズは、格付け見通しを「ネガティブ」としており、今後の格付け動向をめぐり、政治動向に注目が集まりやすい環境が続くと想定されます。また政治闘争が南アフリカの経済成長に与える悪影響も懸念されます。一方で、南アフリカは新興国市場の中では市場へのアクセスが最も容易な国の一つと認識されており、市場のリスクセンチメントが改善した際には海外からの資金が流入しやすい特徴があります。政治闘争に決着がみられ、政権の目が構造改革に向くことや豊富な鉱物資源を有していることが再注目されることなどが、南アフリカが再評価されるきっかけになると考えます。

以上

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