カナダをめぐる最近の三つの材料

  • マーケットレター
  • 2017年05月
~政策金利、信用状況、NAFTA再交渉~

政策金利は据え置かれたが、利上げへの意欲も垣間見える

5月24日(現地、以下同様)、カナダ銀行(中央銀行)は政策金利(翌日物金利の誘導目標)を市場予想通り0.50%に据え置くことを発表しました。

カナダ銀行は声明で、米国の政策などに関する不確実性がカナダの見通しを引き続き曇らせているとする一方で、最近の経済データは心強いものになってきていると述べています。

また、現在の金融刺激策は適切であるとする一文に「今のところは」という文言を付け加えたことで、カナダ銀行は今後の利上げの可能性をにじませています。こうした声明に対して、為替市場では今後の利上げの可能性が意識され、カナダ・ドルが買われるという反応がみられました。

当社は、カナダは当面は政策金利を据え置きつつも、次の政策金利の変更は利上げ方向とみています。世界的にも金融緩和の拡大から後退する流れとなっており、カナダにあっても金利上昇圧力が優勢になるとみています。

次回の政策金利の発表は7月12日に予定されています。

カナダの信用状況(1)~カナダの銀行の信用力は依然として高い

5月10日、格付会社のムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)は、カナダの大手銀行6行の格付けを1段階引き下げました。

この背景には、カナダでは銀行の貸し出しの増加などによってカナダの消費者の債務が増えていることや、住宅価格が上昇を続けていることなどの環境の変化があります。

また、ムーディーズは銀行破たん制度の導入が予定されていることを反映して、これら6行の格付けの見通しを「ネガティブ」としています。

ただし、カナダの大手銀行は相対的には高い信用力を維持しています。

図表は「G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)」と呼ばれる世界の大手銀行とカナダの大手銀行の格付け水準を表したものになります。これをみると、カナダの大手銀行の格付けが国際的にみて、相対的に高い水準にあることがわかります。

当社は、今回の格下げはカナダの銀行の事業環境のリスクが緩やかに上昇していることを反映した予防的な意味合いが強いものだとみています。カナダの大手銀行の収益性やカナダ国内での強固な地位からは、これらの銀行の信用力を懸念するにはあたらないと判断しています。

カナダの信用状況(2)~住宅ローン市場は健全な状態を保つと見込む

カナダでは4月中旬より、住宅ローンを手がけるホーム・キャピタル社の経営不安が話題となっています。

しかし、当社はカナダの住宅ローン市場は健全な状態を保つと見込んでいます。

カナダの住宅ローンは、大部分が銀行や信用金庫などを通じて貸し出されており、それ以外の貸し手による住宅ローンの割合は限定的です(下図表) 。

さらに、カナダでは当局が住宅市場への貸し出しに関する規制を強化していることもあり、保守的な基準にのっとり住宅ローンの貸し出しが行われています。そのため、その安全性は高く、米国と比べても、ローンの延滞率は低い水準を維持しています(下図表)。

こうした背景もあり、カナダ銀行のポロズ総裁は、今回の件はホーム・キャピタル社に固有の問題であり、カナダの金融システムに問題が伝染する兆しはない旨の発言をしています。

カナダの銀行の信用力は十分に高いとの見方や上記のような住宅ローン市場の構造から、当社は今回の一部の業者の信用問題がカナダの金融システム全体に波及するリスクは低いとみています。

NAFTA再交渉の本格化はかく乱要因だが、原油需給の均衡化がカナダ・ドルの買い材料

5月18日、トランプ政権はTPA(大統領貿易促進権限)法にのっとり、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を開始する意向を議会に正式に通知しました。

TPA法では交渉開始の90日前までに交渉開始の意向を議会に通知するよう定められており、この通知が行われたことで、早ければ8月中旬にもNAFTAの再交渉が始まる可能性があります。

議会への通知書では再交渉の目的を25年前に交渉されたNAFTAの「現代化」としており、保護主義的な政策については明記されていません。また、これを受けて、カナダのフリーランド外相もNAFTAの現代化に向けて再交渉を行う準備はできている旨の発言をしており、前向きな姿勢を示しています。

カナダに対する関税の導入はカナダ企業と国境を越えてビジネス関係を結んでいる米国企業の活動に混乱を生じさせます。また、関税の導入は原材料調達コストの増加につながることから、結局は米国の消費者に負担が転嫁されることにもなりかねません。

事実、4月24日に米商務省が仮決定を下したカナダ産針葉樹材への相殺関税の適用に対して、全米住宅建設業者協会からは、今回の措置が住宅の建設コストの上昇を通じて米国の住宅購入者の損失となることなどへの懸念が表明されています。

このため、米国側は関税導入の弊害への認識を深めているとみています。当社は、NAFTA再交渉にあたり、トランプ政権が保護主義的な姿勢を強めることの現実性は政権誕生当初より低下していると考えています。

NAFTA再交渉に関しては、交渉が本格化するにつれて、為替相場をかく乱する場面も出てきそうですが、そうした場面は一時的にとどまる可能性が高いとみています。

一方、産油国による生産調整の延長の合意などを背景に、原油価格は当面は安定的な推移になるとみており、カナダ・ドルをはじめとした資源国通貨は買い戻されやすい環境にあるとみています。

以上

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