米中首脳会談に対する両国の評価と、日本への影響

  • マーケットレター
  • 2017年04月

首脳会談での主な合意事項

4月6~7日(現地)に米国で行われた、トランプ米国大統領と習近平中国国家主席の首脳会談においては、主に以下のような点が合意されました。

・外交と安全保障、経済全般、法執行とサイバーセキュリティー、社会と文化の4分野における対話の枠組みを設置
・北朝鮮問題に関する認識共有と、国連安保理決議の完全な履行
・米中間の貿易不均衡解決に向けた「100日計画」の策定
・米中投資協定交渉の推進
・トランプ大統領の年内訪中

米国側の評価

会談後、トランプ大統領は記者団に対し、「大きな進展が得られた」と明言し、協力強化を強調しました。特に米国側としては、貿易不均衡解決に向けた「100日計画」が成果として評価されているようです。また、会談初日の夕食時に実行された、米国によるシリア攻撃に関し、習主席が理解を示したとされる点も、トランプ大統領としてはポイントを稼いだとみられます。さらに、シリア攻撃が米国による北朝鮮単独攻撃の可能性を暗示している点も、中国に対し圧力をかけたとみなせそうです。

中国側の評価

中国国内の報道によると、両国・両首脳の友好ムードが強調されており、トランプ大統領が衝突を回避し、ウィン・ウィンの原則を確認したことが、会談の成果とされているようです。具体的な部分では、オバマ政権時に完了できなかった二国間の投資協定交渉の継続が決まった点などが評価されているようです。また、米国財務省が4月中にも発表予定の為替報告書において、中国を為替操作国に指定するとの観測が後退している点も、会談の成果といえそうです。

総合的な評価と日本への影響

今回の会談を総括すると、共同声明なし、共同会見なしに示されているように、双方がともに誇るべき合意はなされなかったと考えられます。合意された内容も、多くは今後の交渉にゆだねられており、具体的決定は先送りされたといえます。但し、同盟国でもない両大国の指導者が、初対面で多くの具体的成果を上げると期待する方が、非現実的でしょう。まずは衝突を回避し、友好的に今後への一歩を示した点を評価すべきでしょう。

トランプ政権では、親ロシア・反中国姿勢の強かったフリン大統領補佐官がすでに辞任しており、同様の姿勢とされるバノン首席戦略官にも更迭観測が出ています。権力闘争との見方もある政権内の人事動静が、今後の米中関係に影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要でしょう。

日本にとっては、米国の中国に対する様々な圧力は痛しかゆしの面があります。安全保障面での圧力は、日米安保体制の枠組みを持つ日本にとってプラス材料といえます。しかし、貿易面に関しては、中国の貿易障壁に対する見方は米国側と見解を一にする一方、対中貿易赤字に対する米国の批判は、すぐに日本に対する批判に転化しかねません。当面は「100日計画」において、米国がどのような要求を行うのか、そして中国がどこまで妥協するのかを見極めることになりそうです。日米間では、来週、日米経済対話の初会合を東京で開く予定になっており、今回の米中首脳会談を踏まえた上で、今後の日米の経済関係のあり方に関して、議論が本格化する見込みです。

以上

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