米国が政策金利を0.25%ポイント引き上げ

  • マーケットレター
  • 2016年12月

全会一致で0.25%ポイントの利上げ

12月13・14日(現地)に開催されたFOMC(米国連邦公開市場委員会)では、全会一致でFF(フェデラル・ファンド)レートの誘導目標が0.25%~0.5%から0.5%~0.75%へ0.25%ポイント引き上げられました。昨年12月に続き、今次局面で2度目の利上げです。FOMCの二つの責務である最大雇用と物価安定へ一段と近づいていることが利上げの理由です。前回(11月)のFOMCで、12月の利上げが実質的に予告されていたこともあり、市場は今回の利上げをほぼ織り込んでいたことから、利上げ自体にサプライズは全くありません。

政策金利の見通しは0.25%ポイントの上方シフト

しかし、FOMC参加者(17名)の政策金利の見通しが上方シフトしたことに市場は敏感に反応しました。具体的には、2017、2018、2019年末値が中央値で全て0.25%ポイント上方シフトし、それぞれ1.25%~1.5%、2%~2.25%、2.75%~3%となりました。すなわち、2017年にスライドして2018、2019年も変化した格好です。各年とも年内0.75%ポイントの利上げの計算となります。ここ数年来一貫して下方修正されてきた「長期」の見通しも3.0%へ小幅に上方シフトしたのは目新しい変化です。

2017年については、9月時点で0.5%ポイントの利上げ見通しを示していた参加者7名のうち2名が見通しを引き上げれば、中央値では0.75%ポイントの利上げ見通しに変化する微妙な状況でした。実際、平均値では0.05%しか変化しておらず、中央値での変化が示す程に参加者の金利観が改まっているわけではなく、イエレン議長もこの変化を「ごくわずか」と表現しています。なお、新政権の政策を考慮している参加者もいると、議長は説明しました。

緩和的な金融政策姿勢も、今後は経済状況次第

声明文における「金融政策姿勢は緩和的なままで、それにより労働市場の一段の強まりとインフレ率の2%への上昇を下支える」との記述は利上げ後の今回も前回と変わっていません。それに続く当面の金融政策方針と、満期を迎えた保有証券の再投資継続について記した2つの段落については、前回と一言一句同じ表現でした。FRB(米国連邦準備制度理事会)としては、利上げをしつつも、基本的に緩和的な金融政策姿勢である点を強調したものと思われます。

しかし、今後の金融政策については、財政政策の展開を含め経済状況次第であると言えます。トランプ氏の主張する減税、インフラ(社会基盤)投資が早々に実施される運びとなれば、その刺激度合いに応じて利上げを急ぐ必要が生じるかも知れません。

イエレン議長も、新政権の個別の政策についてFRBがアドバイスする立場にはなく、不確実性はかなり大きいとの認識をあらわにしています。また、生産性向上など正当化し得る考慮すべき点が多々あるとしつつも、完全雇用に近づく中で、財政刺激が明らかに必要とは言えないとも指摘しました。

金融政策は後手に回らず

いずれにせよ、労働市場については金融危機前の2007年の状態にほぼ匹敵するまでに復しているとの認識で、企業、家計の信頼感も回復し、経済も弾力性を有していることから利上げを実施したとの説明です。2019年まで失業率は自然失業率をやや下回るとのFOMC参加者の見通しですが、インフレ率は目標値の2%を下回っており、賃金上昇を著しく加速させるほどに労働需給がひっ迫しているわけでもなく、金融政策が後手に回っていることはないと主張しています。

金利上昇とドル高の継続

イエレン議長が指摘する通り、当面の金融政策は新政権の政策対応を見守りつつ判断せざるを得ず、2017年の利上げが2回か3回か、あるいは4回かを見通すのは現時点では不可能に近いと思われます。しかし、すでに広義の失業率も大幅に低下してきており、雇用・所得環境の改善は明確なことや、インフレ率は基調として2%に近づく中、原油価格の反発も加わってなお強含む公算が大きいことから、少なくともFRBの金融政策の正常化が妨げられる可能性は低いと考えられます。長期金利は歴史的な転換を果たしたのではないでしょうか。金利上昇とドル高は当面継続すると思われます。

以上

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