カナダ経済、金利、為替の見通し

  • マーケットレター
  • 2016年10月

政策金利~カナダ銀行は政策金利据え置きを維持

10月19日(現地、以下同様)、カナダ銀行(中央銀行)は政策金利(翌日物金利の誘導目標)を市場予想通り0.50%に据え置くことを発表しました。カナダ銀行は声明文で、経済成長の見通しを下方修正するもののインフレに関するリスクはおおむね均衡しており、現状の金融政策スタンスは適切であると判断したと、据え置きの理由を説明しています。

2014年後半からの原油価格下落により、カナダの経済成長はやや低調な状況が続いていました。他地域との比較では北米圏経済は堅調でしたが、世界的な金融緩和圧力の強まりに連れてカナダの政策金利も据え置かれ、長期金利も徐々に低下して金融緩和的な環境が続きました。

しかし、カナダでは2015年に自由党政権が発足して以来、金融緩和路線に加えて財政刺激策により景気浮揚を図る姿勢が強まりました。カナダ銀行は財政刺激策が実体経済に及ぼす影響を見極める姿勢を強めています。

今回の金融政策報告書では、米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも、金融業などサービス関連の好調さを示す分析や、商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など、カナダ景気に前向きな材料も散見されます。

当面は、政策金利の据え置きを続けると見通します。今後のスケジュールとしては、次回の政策金利の発表が12月7日に予定されています。

カナダ経済~財政による景気下支えの中、エネルギー産業の苦境もあく抜けへ

グラフからは、カナダの経済成長に占める政府支出の割合が長らくマイナスにとどまってきたものの、昨年からの政策転換に伴い政府支出の景気下支え効果が徐々に出てきていることわかります。

IMF(国際通貨基金)は財政刺激による需要喚起策の有効性を主張しており、カナダのほかにも中国などですでに財政刺激への取り組みが強まっています。また、米国にあっても、インフラ(社会基盤)の老朽化や更新投資の不足が続いてきたこともあり米国大統領候補の両名ともインフラ投資の拡大などに前向きな姿勢を見せています。

カナダで今年行われる減税策としては7月から実施された子供手当ての割合が大きく、下半期のカナダの消費にプラス効果を及ぼすものと期待されます。

民間セクターに目を転じてみると(下記、グラフ「民間製造業企業の設備投資意欲」参照)、カナダ銀行の調査データからも民間企業の設備投資意欲の高まりが確認できます。今年9月にはカナダのエネルギー・パイプライン企業が米国の企業を買収し北米全土に広がる天然ガス供給ネットワークを構築するなど、エネルギー産業においては戦略的買収などの攻めの動きも出てきています。米国におけるリグ稼働数も下げ止まっており、原油価格が下げ止まる中、企業活動への逆風は、今後は弱まるとみられます。

下のグラフは、カナダの品目別輸出の伸び率の推移を示しています。カナダ銀行は製造業関連の輸出の伸びの鈍化を警戒していますが、一方でエネルギー・鉱物関連輸出の減速は悪化が止まっています。カナダ国内における資源産業から製造業への雇用や投資のリバランスの動きが落ち着きに向かい、今後は企業設備投資や雇用の拡大に目が向きやすくなるとみています。

カナダ・ドル~円高、山火事、「トランプ・リスク」による出遅れを取り戻す

今年2月から5月にかけては原油価格に連れてカナダ・ドルは対米ドルで反発してきましたが、円の対米ドルでの上昇が対円でのカナダ・ドルの動きを鈍くしました。加えて、5月にはアルバータ州で山火事が発生し景気の足を引っ張ったほか、8月以降は北米自由貿易協定(NAFTA)脱退に言及するトランプ米国大統領候補に対する警戒も、対円でカナダ・ドルの頭を抑えてきました。

前述のカナダ・ドルへの悪材料は、今後は解消に向かうと考えています。

まず日本の経常収支の黒字拡大や日銀の政策手詰まり感を背景にした円高の流れですが、今後は経常黒字幅が原油価格上昇による輸入拡大で頭打ちになると予想しています。

一方、カナダ経済については、4-6月期のマイナス材料だったアルバータ州について、7-9月期には操業回復や復興需要により3%後半の高い成長が見込まれています。米国大統領選挙についても、もしトランプ候補が勝った場合はエネルギー産業に前向きな政策環境が期待され、関連投資が大きく加速する可能性があります。従って、いわゆる「トランプ・リスク」によるカナダ・ドルへの打撃があっても、影響は一時的なものと考えています。

今後の見通し

2017年の経済成長については、IMF(国際通貨基金)など主要シンクタンクから今年度からの緩やかな加速の見通しが示されています。新興国経済の成長回復が本格化しない一方で、2017年はカナダに続き米国でも財政刺激策が検討される可能性があることから、カナダを巡る環境は良好とみています。景気の回復が進むとともに金利は緩やかな上昇が続くとみています。

また、世界的なエネルギーの需給は供給過剰から均衡へ調整する過程にあり、OPEC(石油輸出国機構)やロシアによる生産調整への動きが一時的にこの調整を早める可能性もあります。従って、資源国通貨の反発は継続を見込みます。「北米経済の優位性」を背景に、安定した経済ファンダメンタルズと資源価格への関連性を兼ね備えるカナダ・ドルは選好されやすいと考えています。

以上

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