メキシコが政策金利を引き上げ

  • マーケットレター
  • 2016年09月

メキシコ利上げ

メキシコ中央銀行は9月29日(現地、以下同様)、金融政策委員会において、政策金利を0.50%ポイント引き上げて4.75%とすることを決定しました。2015年12月の会合で米国に追随する形で0.25%ポイントの利上げが開始され、今回の利上げは今年7月に続いて4回目となります。メキシコ・ペソ安が進展していることを背景に、中央銀行が通貨安のインフレへの波及に懸念を示していたため、市場では利上げ予想が優勢でした。そのため、足元でのメキシコ金融市場への影響は限定的となっているようです。

利上げの背景

中央銀行は、引き締め局面の開始ではないものの、メキシコ・ペソ安の進展によるインフレ圧力に対応するためと利上げの理由を述べています。また、米国の金融政策や大統領選挙、原油価格の動きに起因するリスクに警戒感を示しました。また、今後の米国大統領選挙の動向次第では、メキシコ国内および国際的な金融市場のボラティリティが強まる恐れが残ると述べています。

メキシコ・ペソ相場は、2015年から原油価格の下落や米国の利上げ観測を背景に軟化しており、2月には通貨防衛のための緊急利上げが実施されました。一時は反発しましたが、米国大統領選挙の共和党候補としてトランプ氏が指名されたことや米国向け輸出の減速を背景に、6月以降は軟調に推移しました。トランプ氏はメキシコ・カナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)を批判し、米国・メキシコ国境間の壁建設や不法移民の取り締まり強化を公約しています。その後も、世論調査でトランプ氏の支持率が上昇したことやトランプ氏がペニャ・ニエト大統領と会談を行ったことが悪材料視され、9月半ばには最安値を更新し、それに伴いインフレ率に上昇圧力がかかる恐れがありました。

通貨への影響

メキシコ・ペソ相場は年初来、新興国通貨の中で相対的に弱含んでいました。中央銀行がメキシコ・ペソ安に対して通貨防衛的な利上げで応じる姿勢を示したことで、今後のメキシコ・ペソ安に対する歯止めとなることが期待されます。一方で、米国との経済関係の強さを踏まえると、米国大統領選挙においてトランプ氏の当選確率が上昇する場合はメキシコ・ペソに悪影響を与える可能性もあるとみています。

メキシコ経済は、2016年1-3月期と4-6月期でともに実質GDP(国内総生産)成長率が前年同期比+2%台半ばと、他の中南米諸国と比べて相対的に堅調となっています。個人消費の拡大や輸出の回復を背景に、実質GDP成長率は2017年も2.5%と緩やかな成長が続くと予想されます。2016年8月の消費者物価上昇率は前年同月比2.7%台と、中央銀行インフレ目標範囲(2.0~4.0%)の中心値3.0%を依然として下回って推移しています。一連の利上げによる国内景気に対する影響については、足元において堅調な内需で支えられており、限定的にとどまると思われます。

国内外の政治動向や米国の金融政策の動向次第では、通貨が不安定な動きになる可能性には注意が必要ですが、中央銀行の予防的な対応が効果を発揮することが期待されます。

以上

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