日銀金融政策決定会合を控えた国内債券市場の見通し

  • マーケットレター
  • 2016年09月

マイナス金利導入後の国内債券投資環境について

①2016年1月から7月末まで~長期金利の大幅低下と、国内債券投資の収益力低下局面

2016年1月29日に日銀がマイナス金利政策を導入して以来、国内債券市場では幅広い年限の金利水準が低下基調となりました。

日銀のマイナス金利導入によって、残存年限の短い債券の利回りがマイナスとなると、より高いプラスの利回りを求めて、さらに残存年限の長い国債を買う投資家の動きが強まりました。さらに、6月下旬に英国の国民投票でEU(欧州連合)離脱が多数となると、国内債券市場における金利の低下の動きは一段と強まり、7月上旬には20年国債の利回りも一時マイナス※となりました(※終値ベースではプラスの水準を維持)。このような金利変化の結果、残存年限の長い国債ほど金利低下幅が大きくなり、次のグラフのように利回り曲線(イールドカーブ)は大きく平たん化(フラット化)しました。

国内債券に投資するファンドにおいては、金利の低下に伴う債券の値上がり益を獲得することで、この期間のパフォーマンスは良好なものとなりました。しかし、金利水準全般が大きく低下したことや、イールドカーブのフラット化によるロールダウン効果の減少などによって、ファンド本来の収益力は弱まってしまいました。

②2016年8月以降~長期金利の反転上昇と、国内債券投資の収益力改善局面

2016年7月29日の金融政策決定会合において、日銀は国債買い入れの増額やマイナス金利幅の引き下げといった大規模な追加金融緩和を見送り、ETFの買い入れ増額などの小規模な追加金融緩和策のみを行いました。こうした措置は市場参加者の期待を大きく下回るものであったため、各年限の金利は急上昇しました。8月中旬以降は5年国債利回りや10年国債利回りは横ばいに転じたものの、政府が策定した28兆円の事業規模の経済対策の財源として40年国債が増発される方針となったことなどが懸念されて、20年国債など超長期国債の利回りは、8月下旬にかけて再び上昇基調となりました。

7月までの動きとは異なり、残存年限の長い国債ほど金利上昇幅が大きくなって、イールドカーブの傾斜が一段と右肩上がり(スティープ化)になりました。この結果、それまでのイールドカーブの極端なフラット化により弱まっていたファンドの収益力は、全般的な金利水準の上昇やロールダウン効果の回復などによって持ち直しつつあり、国内債券の投資環境は一時期に比べて改善傾向となっています。

今後の見通し~日銀による政策パッケージ導入と国内債券投資の更なる環境改善期待

現在の国内債券市場では、日銀が9月20-21日の金融政策決定会合で公表する、金融政策の効果などについての「総括的な検証」の内容と、それに基づく金融政策変更の有無に大きな注目が集まっています。

「総括的な検証」については、下表のように肯定的な評価と否定的な評価を併記した上で、強力な金融緩和手段に伴う副作用はあるものの、政策全体としてはプラスの効果が大きいといった自己評価を日銀が行うと、当社は想定しています。

黒田日銀総裁がこれまでの講演や会見で述べているように、今回の「総括的な検証」はあくまでも2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する観点から行うものであるため、検証の結果が現行の金融緩和の後退につながる可能性は低いと考えています。むしろ、金融緩和の各政策ツールが抱える問題点を洗い出した上で、その改善策を含めた追加金融緩和を行う可能性が高いと当社は見込んでいます。なお、追加金融緩和の時期については、9月21日の検証結果発表と同時か、11月1日の「展望レポート」発表に合わせて行うか、2通りの可能性があると考えています。

具体的な追加金融緩和の手段として、「マイナス金利のさらなる引き下げ」が最も有力であると当社は考えています。国債の大量購入による量的金融緩和については、現段階で日本国債の発行残高の3分の1以上を日銀が保有しており、現行の買い入れペースを維持しても早い段階で日銀の国債保有シェアが50%以上に達するとされています。日銀は「量的金融緩和に限界は無い」との立場を崩していませんが、国債買い入れペースの拡大余地は限られています。また、質的金融緩和については拡大余地が残されてはいるものの、マネタリーベース拡大への寄与が小さく、大規模な追加金融緩和としてはインパクトに欠けるといえます。したがって、金利の引き下げ余地も十分にあり、政策効果も相対的に大きいとみられる「マイナス金利のさらなる引き下げ」が日銀として最も取り組みやすいと考えられます。

マイナス金利については、金融庁が「金融機関の巨額な減益要因となる」との懸念を日銀に伝えたとの報道があるように、主な副作用は金融機関の収益基盤に対する悪影響です。日銀としては、「マイナス金利のさらなる引き下げ」を行うにあたって、この悪影響に対して一定の配慮をせざるを得ないとみられ、イールドカーブの過度なフラット化を抑制するような補完的な政策を併せて導入するものと想定しています。

このような政策パッケージが導入された場合、短中期の国債利回りは低下する一方、超長期の国債利回りは上昇する可能性が高く、イールドカーブは一段とスティープ化が進むとみられます。十分な長短金利差を確保するとともに、超長期債を中心に国債の利回りが過度に低下しないようにすることで、金融機関の収益に対するマイナス金利の悪影響はある程度軽減される見込みです。

国内債券ファンドは、金融機関と同様に国債からの収益が重要なリターンの源泉となっており、日銀が金融機関の収益に配慮した政策を導入することは、国内債券ファンドにおける投資環境の改善にもつながることとなります。国内債券ファンドへの投資を再検討するという観点からも、日銀の次の一手は注目されます。

以上

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