EU離脱に関する英国国民投票後の米国優先リート市場について

  • マーケットレター
  • 2016年07月

足元のマーケット環境

リートを含む世界の金融市場は、6月23日(現地)の英国のEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票を控える中で、直前の世論調査などから残留濃厚との楽観的な見方を背景に堅調な値動きが続いていましたが、実際の投票では、僅差であるもののEU離脱派の勝利となったことから、急速に調整色を強めました。

特にこれまで欧州の不動産市場の中核とみなされていた英国から、首都ロンドンを中心に主要金融機関や多国籍企業がオフィスの移転を進める動きが加速するとの見方を背景に、同国を中心とした欧州のリートや不動産株の下げが大きくなりました。

一方で、米国のリート市場については落ち着いた値動きが続いており、英国の国民投票実施後、米国株式市場がマイナスとなっているのにもかかわらず、足元でプラスのリターンを確保しています。背景としては、米国リートの保有物件の大半が同国内にあることから、今回のイベントが米国リート市場に与える影響は僅少であるとの見方があるものと思われます。また、追加利上げ観測の後退などによる長期金利の低下を背景に、同国の不動産市場のさらなる好転を期待する向きが優勢となったことから、利回り資産としてのリートの相対的な魅力の高まりを反映した展開となっているものとみられます。

過去の相場変調時のマーケット環境

短期的には、優先リートのリターンは普通リートと比べて劣後する場合がありますが、過去10年程度で見ると、優先リートのリターンは普通リートに遜色なく、また安定した値動きとなっていることが分かります。

普通リートは米国商業用不動産のファンダメンタルズ、金利動向、米国の景気動向などの影響を相対的に強く受けるため、配当収益よりもリート価格変動の影響が大きく、リターンはより株式に近い変動を示す傾向があります。一方、優先リートは配当が普通リートに優先して支払われることや、配当額が固定されていることから、むしろ債券的な、安定した値動きを示す傾向があります。

上記のチャートからは、米国優先リートの長期的なリターンの大半を配当収益が占めていることが分かります。また、普通リートの値動きが大きくなるような時期でも、優先リートは比較的安定した推移となっていることが見てとれます。

また、2009年10月から始まった欧州債務危機は、相場のトレンドに著しい影響を与えませんでした。これは前述の通り、米国リートの保有物件の大半が同国内にあることから、欧州のイベントが米国リート市場に与える影響は僅少であるという投資家の冷静な判断を反映した相場展開となったものと考えられます。

今後の見通し

米国経済は、海外景気の減速が同国産業全体の雇用情勢に影を落としていることなどを背景に、今後も過熱感のない緩やかな成長が続くものとみられます。

一方で米国の金利については、英国のEU離脱の動きが他のEU加盟国に広がる可能性など、世界経済への先行き不透明感が残っているほか、米国内では雇用改善基調の減速や米ドル高による経済への悪影響から、早急な利上げは見込みづらく、低金利環境が続くと見込んでいます。

米国リート市場については、テナントからの需要が堅調である一方で新規物件の供給水準は低い環境にあり、リート各社の保有する物件の空室率低下や賃料上昇が続くものとみられます。そういった状況の中で優先リート市場は引き続き、相対的に高い配当利回りやクレジットの改善期待から選好される展開を予想しています。

以上

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