最近の欧州(英国、イタリア、スペイン)情勢について

  • マーケットレター
  • 2016年07月

英国の国民投票直後のグローバルでの極端な市場変動こそ収まりましたが、一部の市場では不安定な展開が続いています。

英国

BOE(イングランド銀行)は7月5日(現地、以下同様)に上半期の金融安定報告書を公表し、国民投票に係るリスクとして3月に指摘していた、①海外からの証券・直接投資に依存する英国の多額の経常赤字のファイナンス、②海外からの資金流入をてこに活況を呈してきた商業用不動産市場、③失業率や借入コストの上昇に脆弱な家計の多額の債務、④不確実性によって悪化の度を増す可能性のある、ユーロ圏を含む世界経済の低成長、⑤市場のボラティリティが高まった際の金融市場機能の脆弱性、のうち幾つかが現実化しつつあるとして警戒を示しています。

折しも、英国の6月の建設業のPMI(購買担当者指数)は中立水準である50を割り込んで急低下し、7年ぶりの低水準に達しました。公表資料によれば、国民投票の結果が出る前に約80%の調査票が回収されているとのことで、既に国民投票を前にして、建設投資が顕著に手控えられていたことが判明しました。また、国民投票の結果を受けて、大幅な不動産価格の下落が予想される中、今週に入り、英国の不動産ファンドは相次いで解約停止に追い込まれています。

BOEは国民投票直後に、流動性供給に万全の体制を敷いている旨を強調しましたが、6月末には「必要なあらゆる行動を取る」と明言し、8月の金融政策委員会での金融緩和を示唆しました。7月5日には金融安定報告書の公表に合わせて、銀行の資本規制も緩和しました。また、オズボーン財務相は、財政再建を当面棚上げして、現在20%の法人税率を15%以下に引き下げる案も口にしています。この様な金融・財政政策での対応が、一定の景気下支えとして働くことが期待されますが、景気後退は避け難いとの見方が市場では支配的です。インフレが先鋭化する可能性が低ければ、当局が英ポンド安に歯止めをかける理由は乏しく、英ポンド安も継続すると思われます。

離脱派の急先鋒であったジョンソン前ロンドン市長が保守党の党首選への出馬を辞退し、英国独立党のファラージ党首が党首辞任を表明するなど、今後のEU(欧州連合)離脱の道筋の難しさを象徴するかのような予想外の展開に、英国の政治・経済の不透明感の大きさが窺えます。恐らくは、保守党の新党首が決まった後も、EU離脱の申請手続きは延々と先送りされるのではないでしょうか。事態の推移を一つ一つ注視する必要があります。

イタリア

英国の国民投票を受けた市場の動揺や、予想される欧州経済の減速への懸念で、イタリアの銀行の不良債権問題が一段と深刻化しています。低成長の長期化に伴うイタリアの銀行の不良債権問題は今に始まったことではありませんが、イタリアの政情とも絡んで、レンツィ首相は難しい対応を迫られています。EUのルールでは、公的資金の注入に際して、民間債権者の負担(ベイルイン)が前提とされるため、敢行すれば、金融危機が拡大しかねないとともに、多くの個人投資家が保有債券に損失を強いられます。この場合、政権への批判の高まりで、10月の議会制度改革のための憲法改正の是非を問う国民投票が反対多数となる可能性が高まります。レンツィ首相は政治生命を賭して国民投票に臨む所存であり、国民投票が反対多数となった場合、首相交代後に政権基盤が弱体化し、2018年5月までに実施される総選挙では、反EU、反緊縮の政治団体である五つ星運動の躍進も懸念されます。仮に国民投票が賛成多数となった場合でも、下院の第一党の権限が強化されることになるため、結果として反EU勢力の台頭が常に警戒される点には注意が必要です。

レンツィ首相はベイルインなしで公的資金を注入する方法として、例外規定の適用の可能性を探っていると報じられています。折しも、7月29日にEBA(欧州銀行監督局)による欧州銀行のストレステストの結果が公表される予定で、今後のEUとの協議の行方が注目されます。ただし、イタリア政府の多額の債務に鑑みれば、いかなるやり方であれ、公的資金の注入に際しては、イタリア政府の信用力が悪化する恐れがあります。

スペイン

スペインは高成長が続く中、依然高水準ながらも不良債権は減少基調にあります。6月25日に実施された下院の再選挙では、予想に反して反緊縮のポデモス党が議席を減らし、第一党の国民党が議席を増やしたことで、政権発足への期待から、政治的不透明感も後退しています。

以上

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