米ドル円のヘッジコストの状況について

  • マーケットレター
  • 2016年07月

足元の状況について

足元、英国のEU(欧州連合)離脱が決まったことによる不透明感と、世界経済への先行きに対する懸念により、基軸通貨である米ドルの需要が強まっています。これに伴って米ドルを調達するためには上乗せ金利が求められる状態となっており、米ドル資産を為替ヘッジする場合の為替ヘッジコストが大きく上昇しました。期間1カ月の取引による米ドル円の為替ヘッジコストは、英国のEU離脱決定直後は2%台まで上昇しましたが、足元では1%台半ばで推移しています。

英国のEU離脱の影響を受ける英国など欧州の金融機関が英ポンドやユーロから米ドルへと資金を逃がし、安全資産の米国債などに逃避することなどによる市場の需給の偏りが流動性を低下させ、米ドルの需要を高めていることが背景にあります。

為替ヘッジコストについて

一般に、為替ヘッジに掛かるコストは「外貨建て短期金利と自国通貨建て短期金利の差」として計算されますが、当該通貨の金利見通しや需給などの状況によってはこの短期金利に上乗せ金利が加算されることがあります。

金利要因(金利差)

日米の次の金融政策において、利上げが見込まれる米国に対し、日本では追加緩和観測が出ており、日米両国の金融政策の方向性の違いから、将来の金利差拡大を織り込む動きがヘッジコスト上昇につながっています。

需給要因

リスク通貨からの逃避需要

今回のように英国がEUから離脱することが決定するなど、先行きへの不透明感が著しく高まると、リスク回避の動きから基軸通貨である米ドルの需要が高まります。昨年8月の中国人民元切り下げショックや、2011年の欧州債務問題により、同様に米ドルの需要が高まり、ヘッジコストが上昇した局面がありました。

邦銀などの外貨投資需要の増加

今年に入って継続的にヘッジコストが上昇している背景には、今年1月より導入された日銀のマイナス金利政策が影響しています。邦銀をはじめとして外貨建て資産(主に米ドル建て)への投資需要が増えていますが、米ドル建て資産に投資する際、為替変動リスクを回避するため、円を担保に米ドルの短期資金の調達を行うことが一般的であるため、米ドルの上乗せ金利が拡大しています。

金融規制による米ドルの供給減少

米ドルの供給面では、リーマン危機後に各国で導入・強化されたレバレッジ規制やボルカールールなどの金融規制が米ドル供給量を減少させる遠因となっています。規制の下では、バランスシート拡大が抑制されるため、国際的な取引を行う金融機関はリスク許容量を大幅に低下させており、その影響により米ドルの供給量は減少しています。

四半期末の決済資金需要

企業の輸出入代金などの決済資金として米ドルの需要が高まる場合があります。基軸通貨である米ドルは決済に広く利用されており、四半期末になると代金決済のため米ドルの需要が高まり上乗せ金利上昇を通して、一時的にヘッジコストが上昇する傾向があります。

今後の見通し

金融市場では、国民投票における英国のEU離脱をそもそも想定していなかったことや、今後の離脱プロセスへの不透明感が強いことから、条件反射的に英ポンドを売る動きと、安全資産として円や米ドルを買う動きが強まりました。

しかしこうした初期の反応は、離脱プロセスが不透明な状況下でまずは最悪の事態を織り込もうとする動きが顕著に現れたものだと考えています。市場は悲観を織り込みすぎた可能性があるとみられ、徐々に冷静さを取り戻すことでリスク回避に動きすぎた部分を巻き戻す展開が予想され、それに伴い行き過ぎた米ドル需要がはく落することが見込まれます。

28日に、日銀は米ドル資金供給オペ(公開市場操作)を実施し、邦銀に対して外貨資金の供給を行っています。四半期末ということもあり、決済資金需要が高まったこともヘッジコスト上昇の要因になったとみられますが、今後は中央銀行の米ドル供給や季節要因のはく落で過度なヘッジコストの上昇は一服するとみられます。仮に欧州株式などリスク資産の調整が拡大し、米ドルの資金調達環境がひっ迫する恐れがある場合、日銀やFRB(米国連邦準備制度理事会)など主要六カ国・地域の中央銀行は金融機関に米ドルを供給する枠組みを利用し、流動性を潤沢に維持することで市場を安定させるとみられます。

また、世界経済に対する見通しが悪化したことは、FRBの利上げが遠のくとの観測にもつながりやすく、一段の金利差拡大は先送りになった可能性があります。一方で、日銀のマイナス金利政策が継続する限り、構造的に米ドル資産への需要が高まるため、今後も金利差以上のヘッジコストが掛かる状況が継続することが見込まれます。

以上

当資料のお取扱いにおけるご注意
  • 当資料は、ファンドの状況や関連する情報等をお知らせするために大和アセットマネジメントにより作成されたものであり、勧誘を目的としたものではありません。
  • 当資料は、各種の信頼できると考えられる情報源から作成していますが、その正確性・完全性が保証されているものではありません。
  • 当資料の中で記載されている内容、数値、図表、意見等は当資料作成時点のものであり、将来の成果を示唆・保証するものではなく、また今後予告なく変更されることがあります。また、記載する指数・統計資料等の知的所有権、その他の一切の権利はその発行者および許諾者に帰属します。
  • 当資料中における運用実績等は、過去の実績および結果を示したものであり、将来の成果を示唆・保証するものではありません。
  • 当資料の中で個別企業名が記載されている場合、それらはあくまでも参考のために掲載したものであり、各企業の推奨を目的とするものではありません。また、ファンドに今後組み入れることを、示唆・保証するものではありません。