長短金利の逆転だけでは景気後退を予測できない

  • Market Eyes
  • No.235

米国の長短金利差が縮小

米国の長短金利差(10年国債利回りと2年国債利回りの差)が縮小している。【図表1】FRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げを織り込み2年国債利回りが上昇する一方、10年国債利回りは3%近辺で上昇の勢いが弱まっている。

FRBは今後も漸進的な利上げを続ける見込みである。【図表2】そのため、今年中もしくは来年の前半にも長短金利が逆転する可能性がある。

景気後退の前には長短金利の逆転がみられた

過去、景気後退の前には長短金利が逆転する現象がみられた。【図表3】8月24日時点で長短金利差は0.19%と今回の景気拡大局面では最小となっており、この現象を警戒する声が高まっている。

実体経済は違う

長短金利差が縮小すれば、短期金利で資金を調達して長期金利で貸し出しをする金融機関の収益が打撃を受けると言われる。しかし、2018年4-6月期の米金融最大手JPモルガン・チェース銀行の利ざやは2.46%と、前年同期の2.31%から拡大している。他の大手行も利ざやが拡大しており、銀行の業績不振が経済活動の停滞につながる状況とはほど遠い。

また、「潜在成長率」と「実質長期金利」の間にも景気後退を示唆する関係がみられた。【図表4】「潜在成長率」は住宅や生産設備など実物資産への投資リターンを表し、「実質長期金利」は投資資金の調達コストを表す(いずれもインフレ調整後)。過去、実質長期金利が潜在成長率を上回ってから約1~2年以上経過した後に景気後退を迎えているが、現状ではまだ1%超の差があり、金利の高さが経済活動を停滞させる状況にはないと考えられる。

まとめ

過去は「景気後退の前に長短金利が逆転する」という現象がみられたが、「長短金利が逆転したから景気後退が起こる」という意味ではない。実際、FRBが今年6月に出したレポート 「(Don’t Fear)The Yield Curve」では、長短金利の逆転による景気後退の予測力は低いと述べている。

もっとも、市場参加者の多くが長短金利の逆転は景気後退のシグナルであると認識しているため、実際に長短金利が逆転すれば一時的には金融市場が動揺することも考えられる。しかし、本当に景気後退に陥るかどうかを見極めるためには、上述の利ざやの動向や潜在成長率と実質長期金利との関係など実体経済を注視する必要があるだろう。

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