日米株の下落について

  • マーケットレター
  • 2018年12月
~米国政治・経済の不確実性を嫌気し日米共に急落~
ポイント
  • 昨日は、政府機関閉鎖や大統領のFRB 批判で米国株が大幅下落
  • 米国株は悲観心理が落ち着けば経済ファンダメンタルズを再評価へ
  • 日本株は米国株安につられての下落で、米株同様に落ち着き後の反発余地は残る

昨日は、政府機関閉鎖や大統領のFRB 批判で米国株が大幅下落

2018 年12 月21、24 日(現地、以下同様)の米国株式市場は、両日合計でダウ工業株30 種平均が4.67%安、S&P500 指数が4.71%安、ナスダック総合指数が5.14%安と、大きく下落しました。

株価下落の主たる要因は、米国の暫定予算が21 日に期限切れとなり、政府機関の一部閉鎖が現実化したことと、トランプ大統領がFRB(米国連邦準備制度理事会)を強く批判したことです。

また、ムニューシン財務長官が大手銀行のCEO(最高経営責任者)と電話会議を実施し、米銀は融資のための十分な資金を有しており市場は適切に機能し続けていることを確認した旨の声明文を財務省があえて公表したことが、むしろ市場の疑心暗鬼を誘いました。さらに、原油価格が一段と下落したことも、関連セクターの株価下落に追い打ちをかけました。

米国の暫定予算については、トランプ大統領がメキシコ国境との壁建設予算を盛り込まないならば署名しないとの方針を覆さず、民主党との歩み寄りがみられないまま期限切れとなり、2 月までのつなぎ予算を成立させることができませんでした。政府機関の閉鎖は一部に限られ、直ちに甚大な影響を招くわけではありませんが、長期化すれば公的サービスの停滞が懸念されます。

FRB は先週の18 日~19 日に開催されたFOMC(米国連邦公開市場委員会)で、利上げを決定したばかりです。その直後にも株価は急落しましたが、FOMC に先立って、トランプ大統領は利上げをけん制する発言をしていました。トランプ大統領の意向に反して利上げを実施し、その結果、株価が急落したこともあり、トランプ大統領はFRB への批判を一段と強め、「米国経済の唯一の問題点」とまで表現しました。

米国株は悲観心理が落ち着けば経済ファンダメンタルズを再評価へ

今後の米国株の見通しですが、最近の急落を受けて、チャート的には売られ過ぎ感が強まっており、目先、自律反発が期待されますが、悲観的な市場は好材料よりも悪材料に敏感と思われ、追加的な悪材料が発生すれば、一段の下落の可能性も否めません。

もっとも、つなぎ予算に関しては、トランプ大統領と民主党との政治的駆け引きの意味合いも大きく、政府機関の一部閉鎖で目に見えて実害が生じる様になれば、非難の矛先が両者に向かう可能性もあり、早晩、妥協の機運が生じてくると予想されます。当座、27 日には審議が再開される予定です。FRB に関しても、FOMC 後にウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁が利上げに慎重な姿勢を示すなど、市場に配慮した姿勢への変化も期待されます。実際、FRB の責務の一つである物価の安定については、最近の原油価格の急落で、当面の物価上振れリスクが後退していることも、FRB が利上げ休止を考慮する余地を与えます。銀行の流動性に関しては、リーマン・ショック後に金融規制が強化されたことから、特に大手銀行については、財務省の声明文通りに十分な資金を有していると考えられます。

中国では、今月19 日~21 日に開催された中央経済工作会議で緩和的な金融・財政姿勢が改めて確認されました。中央銀行である中国人民銀行が一般の銀行向けの貸出金利を引き下げるなど、景気減速への政策対応はすでに取られつつあります。米中貿易摩擦に関しても、中国が米国に対抗して引き上げていた米国からの輸入自動車などに対する関税の引き下げや、外国企業に技術移転を強要することを禁止する法律の制定に着手するなど、貿易摩擦の拡大抑制に向け妥協点を探る動きがみられます。

世界経済の減速は否めませんが、米国経済は企業、家計の良好な景況感が示す通り堅調を持続しています。特に12 月中の株価の急落は、米国の良好な経済ファンダメンタルズと整合性が取れず、米中の貿易摩擦などを材料とした投資家の悲観心理が過度に増幅された結果と考えられます。しかし、最近の株価下落でバリュエーション面での割高感は払拭されていることから、きっかけは何であれ、投資家の悲観心理が落ち着けば、株価は米国の良好な経済ファンダメンタルズを再度評価することになると予想されます。

日本株は米国株安につられての下落で、米株同様に落ち着き後の反発余地は残る

日本株も米国株に連動する形での下落となり、12 月25 日はTOPIX(東証株価指数)で前日比4.88%安、日経平均株価で同5.01%安と大きく下落しました。先週から今週にかけて、日本国内に目立った株価の下落材料は見当たらず、もっぱら米国株の下落が影響したと考えます。また、米国株が21 日(金)、24 日(月)と大幅続落となる中、日本は24日(月)が振替休日で休場であったことも、25 日の下落幅が大きくなった原因であるとみられます。

一方、TOPIX(東証株価指数)の各移動平均からの乖離率をみるとすでに下方乖離率が大きくなっています。現在の各移動平均からの下方乖離率はおおむね2016 年年初の中国株急落などが嫌気された下落局面以来の水準となっており、短期的な株価下落としては行き過ぎの側面が強くなっていると考えます。

なお、為替動向をみると足元は110 円/米ドル台まで円高が進行しており、この点は懸念要因です。直近の円/米ドルレートは株式市場の下落による市場のリスク回避的な動きの側面が大きいと考えられ、いわゆるリスクオフ時の円高の動きが今後起きやすくなるのか否かには注意が必要です。110 円/米ドル程度の水準を確保すれば国内企業業績の2019 年度の見方が大きく変わることはないと考えますが、例えば105 円/米ドルのようなさらなる円高の進行は国内企業の2019 年度の減益リスクを高めることになると考えられるためです。

直近の株価下落は日米欧揃っての株価下落であり、日本株の先進国内での相対的な割安感がさらに高まった訳ではないと考えます。しかし、PER(株価収益率)など株価指標の割安感は強いため、為替動向に注意は必要であるものの、相場の落ち着きと共にファンダメンタルズが評価される余地は大きいと考えます。

以上

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