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集団化する人工知能 鈴木教授による解説シリーズ F

〜ブルーオーシャンAI戦略〜


2018年7月3日

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<AI流「人の行く裏に道あり花の山」>

集合知の教えでは独立な考え方が集まると全体として賢くなりますが、人間心理は人真似したがる癖があるため独立よりも同調を好み、バブルのような「集合愚」になりがちです。そこで有名な投資格言「人の行く裏に道あり花の山」のように、大衆の裏を突く戦略を前回のMarket Letter ※でご紹介しました。その際に用いたAI技術は「異常検知」でした。

しかし前回の異常検知は、直近の株価変動からの外れを観るだけなので非常に簡単です。ナイトメアアノマリーの概念さえ把握すれば、われわれ人間の直感でもある程度は異常を検知できるでしょう。例えるなら、部屋の隅にお金が落ちている状態です。誰が拾うかはスピード勝負です。この勝負に参加できるプレーヤーが多いほど、いわばレッドオーシャンな熾烈な競争となります。

そこで今回は、人間よりも複雑なパターンを学習できるAI技術を用いることで、人間には気がつきにくい異常を検知する方法をご紹介します。これもまた「人の行く裏に道あり花の山」であり、人心を持たないAIを用いて競争が少ないブルーオーシャン(花の山)を目指します。題して「ブルーオーシャンAI戦略」と命名します。


※第6回「ナイトメア★アノマリーを狙え」
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180601_1.html

<オートエンコーダによる異常検知>

AIが人間に勝る長所の1つとして大量処理が可能な点が挙げられます。そこで大量の株式銘柄の関係性を同時に学習する方法論として「ニューラルネットワーク」を導入します。その詳細は割愛しますが、左 (入力層) から過去の株価を入れると、今の株価が右 (出力層) から出るようにコネクションの太さを調節します。つまり一期先予測を行います。予測値は過去の変動パターンを模擬したものなので、今の株価が予測値から外れるほど過去の変動パターンと異なる、つまり異常とみなします。しかし金融市場においては、そもそも一期先予測が困難という致命的な問題があります。

そこで予測は諦め、今の株価を理論値に修正することを考えます。大きな修正を要すならば異常であると判断します。この理論値を導くために「オートエンコーダ」を導入します。学習メカニズムは先のニューラルネットワークと全く同じなのですが、入力した株価情報をそのまま再現するようにコネクションの太さを調整します。特に中間層で株価情報を圧縮し、出力層で復元するプロセスが重要です。情報圧縮によって複数の株価銘柄に含まれる本質的な変動を抽出し、それだけを用いて元の株価を復元することで理論値を得ます。この情報圧縮および復元プロセスがノイズフィルターのように機能し、株価変動の本質と関係ない異常性を除去します。よって理論値と実測値を比較することで、異常の有無を確認できます。このアルゴリズムは人間の発想と異なるため、裏道を通ってブルーオーシャン(花の山)にたどりつけると期待します。

<ナイトメアアノマリー再び>

前回のMarket Letterでは、特に夜間に異常な下落が起これば翌日の株価は反転しやすい傾向(ナイトメア・アノマリー)をご紹介しました。今回は異常検知の方法をオートエンコーダに切り替えて、前回と同様に2000年〜2007年の株価データ(日米合わせて約1000銘柄)を分析しました。異常変動として、(A)昼間※の上昇変動、(B)昼間の下落変動、(C)夜間※の上昇変動、(D)夜間の下落変動の4タイプに分類し、オートエンコーダ学習時における復元誤差の規模σを基準に異常変動を判定しました。

結果は次のとおりです。やはり「(D)夜間の下落変動 (ナイトメア)」の直後が、最も反転する傾向にあります。反転確率は50%を超えており、特に日本市場において顕著です。反転傾向が明確な順番は、(D)夜間&下落→(C)夜間&上昇→(B)昼間&下落→(A)昼間&上昇となっています。前回の考察のように、夜間(市場閉場中)であることが投資家らをパニックさせる主要因であり、さらに下落という恐怖がパニックを増幅すると考えられます。例えばビジネスマンは勤務中に株を売買できませんので、恐怖で勤務が疎かにならぬよう適正価格より不利な価格であっても手仕舞い売りを優先する場合もあるでしょう。


※昼間の価格変化:始値から終値の価格変化
   ※夜間の価格変化:終値から始値の価格変化

<ナイトメアアノマリーによる投資収益>

このように適正価格を超えて株価が変動するのなら、その修正を狙った逆張り投資が機能するでしょう。そこで投資シミュレーションを実施します。(D)ならば始値で買い、当日終値で手仕舞します。(C)ならば始値で空売り、当日終値で手仕舞します。どの銘柄も異常でなければ、その日は投資しません。逆に複数の銘柄で異常を検知すれば、手持ちの資産を等配分して投資します。なお単利運用かつ手数料は考慮しません。

前述の分析と同じ時期だと一種のカンニングになってしまうので、直近10年 (2008年〜2017年) に変更して投資シミュレーションを実施します。結果は以下のとおりです。いずれも良好のパフォーマンスを得ています!

異常性の判断には3σが良い印象です。σに対する倍率を大きくすると判断が慎重になりますが、投資チャンスが減ってしまいます。逆に倍率を小さくすると投資チャンスは増えますが、信頼性が低下します。

<ブルーオーシャンに浮かぶ花の山>

さて今回の本題は、ブルーオーシャン戦略です。本当にオートエンコーダを用いると意外な異常に気づけるのでしょうか?先の投資期間 (2008年〜2017年) において、前回と今回の方法で異常検知されたタイミングを比較してみましょう。

前回の方法が有利になるように、異常検知の基準を甘くして1σにしました※1 。一方、今回の方法は基準を厳しくして3σとします。そして今回の方法によって新しく検知できた異常を赤色で示しました。

上段と下段の模様がほぼ同一であることから、今回のオートエンコーダで検知した異常は新しいものばかりであることが分かります※2 。このようにオートエンコーダのようなAI技術を駆使することで、人間には気付きにくい裏道を見つけ、花の山を独り占めできるかもしれませんね。


※1: 1σについては前回のMarket Letterをご覧ください。
   ※2: 比較結果は日本市場の事例ですが、米国市場も同様の結果が得られました。



【鈴木教授 プロフィール】
鈴木智也(すずきともや)
新潟県新潟市生まれ.IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA).平成17年東京理科大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了.理学博士.同年東京電機大学工学部電子工学科助手,平成18年より同志社大学工学部情報システムデザイン学科専任講師,平成21年より茨城大学工学部知能システム工学科准教授を経て,平成28年より同大学教授,さらに平成29年より大和証券投資信託委託(株)クウォンツ運用部特任主席研究員を兼務.平成30年より茨城大学大学院理工学研究科機械システム工学専攻長および領域長.研究分野は,時系列解析,テキスト解析,機械学習,人工知能,金融工学など実践的なデータサイエンスに従事.電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会,日本テクニカルアナリスト協会,日本証券アナリスト協会各会員.



【Market Letter 鈴木教授による解説シリーズ バックナンバー】

第1回 AI運用に挑む
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20171207_1.html

第2回 集団化する人工知能
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180125_1.html

第3回「2年目のジンクス」を集合知AIで緩和
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180301_1.html

第4回 時系列データの見えない法則をつかむ
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180409_1.html

第5回 愚かな人間心理・カモにするAI
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180501_2.html

第6回 ナイトメア★アノマリーを狙え
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180601_1.html

以上

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