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集団化する人工知能鈴木教授による解説シリーズE


〜ナイトメア★アノマリーを狙え〜


2018年6月1日

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<ニュースへの過剰反応(集合愚)はチャンス>

前回のMarket Letterでは、ラーメン屋の行列やSNSの炎上のように人間は他者と同調したがる習性があり、時にバブルなど非合理な事態を引き起こす「集合愚」を紹介しました。一方、AIが客観的に普段との差異を監視することで、異変を見つける仕組み(異常検知)も紹介しました。そこで今回は、集合愚を投資判断に活かす具体例をご紹介します。

図のように、ある企業に関係するニュースが発生したとします。その影響が小さいならば、株価の変動幅も小さいため、投資家らは冷静に行動できるでしょう。しかしニュースの影響が大きいほど株価は速く大きく変動するため、投資家らは冷静さを失い買いが買いを(または売りが売りを)連鎖させる雪崩現象が起こるでしょう。車は急に止まれないように、集合知であった株価は適正価格を超えてしまい、集合愚と化すでしょう。しかしやがて投資家らが冷静さを取り戻せば、株価は集合知によって適正価格へ修正されるでしょう。つまり過剰反応が起これば、直後に修正による反転が起こり易いと考えられます。

※第5回「愚かな人間心理・カモにするAI」
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180501_2.html

<集合愚を異常検知するコツ>

この反転を投資に利用するには、集合愚を見つける必要があります。そこで前回ご紹介した異常検知の「方法1: 確率分布からの乖離を利用」を株価変動に対して適用してみます。異常変動は頻繁に起こらないため、最近の株価変動をたくさん集めて通常状態の分布を作ります。もし新しく観測した株価変動がこの分布から大きく乖離するなら、普段と異なる異常な変動が起こったと解釈できます。ニュースの影響力を数値化することは一般的に困難ですが、この方法なら株価データのみで異常変動(集合愚)を検出できます。

<異常が起こりそうな状況を狙う>

しかし異常は頻繁には起らないため、なかなか投資チャンスがありません。ならば異常が起こりそうな状況を考えてみましょう。たとえば深夜に重要な事件が発生したら、投資家らはパニックになるのではないでしょうか。特に悪いニュースなら大損する危険性があるため、所持株をすぐにでも売却したいはずです。しかし株式市場は閉場しているため、売り注文は翌朝に殺到するでしょう。その結果、売りが売りを呼ぶ連鎖によって異常変動が起こり、その直後に反転による修正が起こると予想されます。
※日本企業のADR(米国預託証券)のように、米国市場で売買できる有価証券もあるが、足元で上場銘柄が13銘柄(BNY MELLON社の資料を元に、大和投信で算出)と少ないなど、投資対象としては必ずしも利用しやすいわけではない。

予想の是非について検証するために、2000年〜2007年の株価データ(日米合わせて約1000銘柄)を分析してみます。異常変動とみなす基準を1σ〜5σまで変えながら、その直後の反転割合を調べます。異常変動として、(A)昼間の上昇変動、(B)昼間の下落変動、(C)夜間の上昇変動、(D)夜間の下落変動の4タイプに分類してみます。

<これがナイトメアアノマリーだ!>

結果は予想通りです!

やはり「(D)夜間の下落変動」の直後が、最も反転する傾向にあります。反転確率は50%を超えており、特に日本市場において顕著です。夜間の下落に関する法則なので、2017年に「ナイトメア(悪夢)アノマリー」と名付けました

※T. Tsuruta and T. Suzuki: Nightmare Anomaly Hidden in Stock Markets,投稿準備中。
鶴田季丸:ボラティリティ指標による金融市場のジャンプ検出および直後の反応、2017年度茨城大学大学院理工学研究科修士論文、2018。
T. Tsuruta and T. Suzuki: Technical Trading Strategy Using Reactions to Stock Price Jumps, Proc. of NOLTA, pp.691-694, 2016.

反転傾向が明確な順番は、(D)夜間&下落→(C)夜間&上昇→(B)昼間&下落→(A)昼間&上昇となっています。やはり夜間(市場閉場中)であることが投資家らをパニックさせる主要因であり、さらに下落という恐怖がパニックを増幅すると考えられます。これは損失回避性の観点より行動経済学と整合的です。

<ナイトメアアノマリーによる投資収益>

冒頭で述べたように、アノマリーは投資チャンスです。異常変動後の反転を狙って逆張り投資を実践してみます。(D)ならば始値で買い、当日終値で手仕舞します。(C)ならば始値で空売り、当日終値で手仕舞します。どの銘柄も異常でなければ、その日は投資しません。逆に複数の銘柄で異常を検知すれば、手持ちの資産を等配分して投資します。なお単利運用かつ手数料は考慮しません。

前述の分析と同じ時期だと儲かるのは当然なので、直近10年(2008年〜2017年)に変更して投資シミュレーションを実施します。結果は以下のとおりです。いずれも良好なパフォーマンスを得ています!

異常性の判断には2〜3σが良い印象です。σを大きくすると判断が慎重になりますが、投資チャンスが減ってしまいます。逆にσを小さくすると投資チャンスは増えますが、信頼性が低下します。

このようにナイトメアアノマリーは投資チャンスとして魅力的ですが、徐々に収益力が低下している様子も確認できます。近年は株価データを入手し易くなり、Pythonなどの分析ツールも出回っています。このアノマリーに気が付いた投資家が徐々に増えているのだと考えられます。このように近年においては、アイデアの有効期限が短くなり、常に新しいアイデアを開拓する必要があるでしょう。囲碁の打ち手のように膨大な可能性の中に優れた投資戦術が隠れているならば、やがて人工知能によって発見できるかもしれませんね

※金融投資は囲碁と違ってランダム性を伴うため、第3回Market Letterで述べたように、まぐれによるデータスヌーピングバイアスに重々注意する必要があります。


【鈴木教授プロフィール】鈴木智也(すずきともや)新潟県新潟市生まれ.IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA).平成17年東京理科大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了.理学博士.同年東京電機大学工学部電子工学科助手,平成18年より同志社大学工学部情報システムデザイン学科専任講師,平成21年より茨城大学工学部知能システム工学科准教授を経て,平成28年より同大学教授,さらに平成29年より大和証券投資信託委託(株)クウォンツ運用部特任主席研究員を兼務.平成30年より茨城大学大学院理工学研究科機械システム工学専攻長および領域長.研究分野は,時系列解析,テキスト解析,機械学習,人工知能,金融工学など実践的なデータサイエンスに従事.電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会,日本テクニカルアナリスト協会,日本証券アナリスト協会各会員.


【Market Letter鈴木教授による解説シリーズバックナンバー】
第1回AI運用に挑むhttp://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20171207_1.html
第2回集団化する人工知能http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180125_1.html
第3回「2年目のジンクス」を集合知AIで緩和http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180301_1.html
第4回時系列データの見えない法則をつかむhttp://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180409_1.html
第5回愚かな人間心理・カモにするAIhttp://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180501_2.html

以上

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