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集団化する人工知能 鈴木教授による解説シリーズ⑤


〜愚かな人間心理・カモにするAI〜


2018年5月1日

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<民主主義や金融市場は究極の集合知>

第1回や第2回のMarket Letterでは、たくさんのAIが集結すると全体が賢くなるという集合知現象を紹介しました。蟻のような生物もこの集合知を利用することで、できるだけ近距離(ローリスク)かつ魅力的な餌(ハイリターン)を巧みに見つけることができます。もしかしたら蟻は資産運用が上手かもしれませんね。実は必ずしも冗談ではなく、蟻のメカニズムを模擬したAIも存在します。たとえば最適な資産ポートフォリオを見つけるのが上手く、FinTechでおなじみのロボアドバイザーに通じるものもあります。

さて、「3人寄れば文殊の知恵」というように、我々人間にも集合知現象を実感できることがあります。特に民主主義による選挙は参加者が膨大ですから、究極の集合知といっても過言ではありません。たとえば米国の大統領選のように候補者2名から適切なリーダーを選ぶ場合、投票人数が及ぼす影響を調べてみましょう。


第1回マーケットレター「AI運用に挑む」
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20171207_1.html
  第2回マーケットレター「集団化する人工知能」
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180125_1.html



上の図は有権者の判断力と選挙としての判断力との関係です。有権者個人の判断力が50%よりも高ければ、選挙(多数決)によって判断力を高められます。さらに投票人数が増えるほど、選挙による判断力はどんどん高まります。個人の判断力が精々55%であっても、999人による多数決はほぼ100%正しい判断になります。

では、なぜ汚職などで任期を全うできない政治家が選ばれてしまうのでしょうか。投票人数は億単位です。実は上記の計算において、それぞれの有権者は「互いに独立」に候補者を選んでいることを仮定しました。この仮定を置かないと計算が複雑で解けないのです。しかし我々は共通のメディア(新聞・テレビ・雑誌など)から情報を得ており、互いに独立であるとは言えません。

このように独立性が成り立たない状態は、金融市場においても起こります。株式など金融商品の売り/買いも2択の選択であり、多数の投資家(有権者)による売買(投票)によって株価が形成されます。つまり投資家らが互いに独立ならば、彼らの総意である株価は適正な範囲にあると考えられます。しかし現実にはバブル現象のように、理論と現実には少なからず乖離があります。

<理屈どおりにいかない愚かな人間心理>

たとえばラーメン屋の行列を見ると、なぜか並んでみたくなりませんか?この人間心理を行動経済学では(ラーメン屋では縦に並びますが)横並び行動といいます。行列が行列を呼び、ラーメン本来の味とは関係なく、どんどん行列が長くなります。バブルです。バブルは個人の独立性が失われることで発生します。集合知の反対であるため「集合愚」と言うことにしましょう

AIはロジカルであるため、人間心理のような愚かさは持ちません。アルゴリズム運用というように、常に決まったルールに基づいて客観的に売買判断を行います。これはAIを運用に用いる強みです。少しSFチックですが、愚かな人間心理はAIに見透かされてしまい、AIのカモにされてしまう可能性が考えられます。本当は不味いラーメンなのに、喜んで高く買ってくれますので※※


※ 蟻が他者のフェロモンを追従するのも横並び行動ですが、フェロモンは蒸発するため遠方にある餌よりも近距離にある餌に対して横並び行動が起こります。つまり蟻の横並び行動は合理的なので集合知と言えるでしょう。
※※株取引の場合、不当に高い価格で売りつけて、適正価格で安く買い戻すことで利益を得ます。



<異常検知(AI技術)による投資判断>

このような状態を見つけるために「異常検知」というAI技術が考えられます。バブルは規模を問わず、適正価格から外れた異常現象です。そもそも投資判断は、自分が思う適正価格と現在価格の乖離を利用した異常検知とみなせます。そこで、実際にAI技術として用いられている異常検知の方法をご紹介します。

[方法1] 確率分布からの乖離を利用

もっとも簡単な方法です。正常状態のデータを集め、平均値と標準偏差を計算することで正規分布を作ります。この分布から外れるほど異常とみなします。 しかしデータが正規分布に従わない場合はうまく機能しません。

[方法2] 近傍関係の不一致性を利用

確率分布を仮定しない柔軟な方法です。もし正常状態(図中のA)ならば、周辺には均等にデータが存在するため、第1近傍点同士の距離に差がありません。しかし異常状態(図中のB)ならば、第1近傍点同士の距離が異なるため、この不一致が大きい場合には異常とみなします。

[方法3] 異常事例のパターンを利用(機械学習による判別分析)

もしたくさんの異常事例を取得できれば、異常または正常を教師ラベルにすることで、それぞれのパターンを教師あり学習します。その後、学習したパターンに基づいて、新規データの異常を判別します。しかし一般的に異常現象は少数なので、学習が容易ではありません。

[方法4] 正常事例のパターンを利用(機械学習による予測)

一般的に異常よりも正常状態の方が多いため、正常状態の(時系列等の)パターンを機械学習します。そして次に起こりうる事象(値)を予測しておきます。この予測値は正常状態が続くことを前提に計算されるため、もし異常現象が起これば予測値から乖離します。つまり実測値が予測値から外れるほど異常とみなします。この方法は、データ内にパターンが存在しなければ予測値は過去の平均値になりますので、方法1と同じになります。しかしデータ内にパターンが存在すればより正確に予測できるため、異常状態を検知しやすくなります。

そこでデータ内に隠れたパターンを利用するために、前回のMarket Letterで述べた「統計解析・線形モデル・非線形モデル」を駆使して予測モデルを構築します。今後のMarket Letterでは、それぞれの方法論についてAIの観点から解説します。


※第4回「時系列データの見えない法則をつかむ」
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180409_1.html



【鈴木教授プロフィール】
鈴木智也(すずきともや)
新潟県新潟市生まれ.IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA).平成17年東京理科大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了.理学博士.同年東京電機大学工学部電子工学科助手,平成18年より同志社大学工学部情報システムデザイン学科専任講師,平成21年より茨城大学工学部知能システム工学科准教授を経て,平成28年より同大学教授,さらに平成29年より大和証券投資信託委託(株)クウォンツ運用部特任主席研究員を兼務.平成30年より茨城大学大学院理工学研究科機械システム工学専攻長および領域長.研究分野は,時系列解析,テキスト解析,機械学習,人工知能,金融工学など実践的なデータサイエンスに従事.電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会,日本テクニカルアナリスト協会,日本証券アナリスト協会各会員.


【Market Letter 鈴木教授による解説シリーズバックナンバー】
第1回AI運用に挑む
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20171207_1.html

第2回集団化する人工知能
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180125_1.html

第3回「2年目のジンクス」を集合知AIで緩和
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180301_1.html

第4回時系列データの見えない法則をつかむ
http://www.daiwa-am.co.jp/market/html_ml/ML20180409_1.html

以上

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